第69話




 いつものように澪奈を家まで送っていくため、夜の街を歩いていく。

 ……こんなときではあるが、つけられているな。記者が俺たちが出てきたところを見守っているのだろう。


 とはいえ、俺の家で迷宮に入っていることなどは知っているからな。

 記者が求めているのは、より決定的な証拠だろう。

 結果的に、社長のおかげでさらに注目されることになったからな。

 ただ、澪奈も俺もそれに気づいているのでうかつな行動はしない。


 特に問題なく澪奈の家まで送っていくと、


「あら、茅野くん……。なんだか色々大変なことになっていたわね」


 母親が出迎えてくれた。

 ……とりあえず、怒ってはいないようだけど俺も謝罪をしないと。


「……申し訳ございません。こちらの問題でして。あのお父様のほうは……?」

「あら、結婚の挨拶かしら?」

「お母さん、気が早い。ね、ダーリン」

「気が早いのはお二人です。……今回の件で直接謝罪しようかと」

「気にしなくていいわ。お父さんは知り合いの警察と弁護士に話をしているわ。どんな対応ができるかについて、ね」

「……そ、そうなんですか?」

「ええ。だから裁判とかそっちに関してはお父さんのほうで行ってくれるそうよ。二人には今の活動に専念してほしいみたいだしね」

「……ありがとうございます。必要なことがあればいつでも言ってください」

「それなら、家族になってくれるとより諸々の申請がしやすいんだけど……」

「……それは、まだ無理です」

「「まだ?」」


 ……おいこら。

 ちょっと言い回しを間違えただけで即座に二人で反応するな。


「無理です。とりあえず、何かあれば言ってください」

「わかったわ。それより、澪奈。配信見てたけど、あなたまだ茅野くんと何もしていなかったの?」

「……残念なことに」

「何の話しているんですか! それでは失礼します!」


 俺は親御さんに挨拶をしてから家を出た。

 ……まあ、なんだかんだ澪奈の家族が味方になってくれるのなら、頼もしいことはない。




 次の日の朝。

 俺がスマホを確認すると、凄い数のメールが届いていた。


 すべて確認してみていくと、気遣うメールが大半を占めていた。

 一応批判メールもいくつかあったのだが、その割合はたぶん一割もない。


 ……よかった。

 澪奈のチャンネルもなんとかなりそうだな。


 ニュースを調べてみると、いくつも社長や『スピードフォーク』の記事が出てきた。

 ……普通に警察が動くんだな。


 まあ、うちの事務所って未成年の子もいるわけで、あんな発言したらそりゃあそうだよな……。

 たぶんだが、うち以外にも色々な理由で裁判起こす人がいるのではないだろうか?

 ネットを見ていくのだが、あんな波乱があったわりには落ち着いている。


「……とりあえず、問題なさそうだな」


 澪奈のTwotterを見てみるが、昨日の配信のおかげかアンチコメントが一切見られない。

 ネットの掲示板見て回っても、そんな様子はない。


 ……それどころかチャンネル登録者が増えまくっている。


 火消しに成功したどころか、さらに注目されることになるとはな……。


 ひとまず、あの澪奈の配信は正解だったようだ。

 とはいえ、ここまでほぼ無傷で返せたのは澪奈が日頃から情報を集めておいてくれたからだろう。

 ……まあ、色々あったが……とりあえず大火傷にならなくてよかったな。




―――――――――――

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