第108話

〈いつもこうやって渡していたんだよな!?〉

〈マネージャーの【アイテムボックス】もずるいですよね……〉

〈ずるいなんてもんじゃないぞ……他国の一流パーティーがマネージャーをスカウトしたいってずっと言っていたぞ〉

〈そんなになのか?〉

〈普通の【アイテムボックス】だと、長い迷宮の攻略に向かないからな……無限に入れられて、本人があんだけ強いならそりゃあもう引く手あまただぞ?〉

〈あれ? じゃあなんでマネージャーなんかやってるの?〉

〈澪奈ちゃんに弱み握られてるとか?〉

「こらこら。マネージャーは私のマネージャーをやりたいからやっているわけです。脅してなんかないから、ねマネージャー?」

「……ノーコメントでいいですか?」

「それだと私が何かしたみたいじゃない?」

「……」

「皆。マネージャーが意地悪します」


 たまには俺もやり返すと、澪奈がしくしくとコメント欄に泣きついた。


〈おいマネージャー! 澪奈ちゃんを泣かすな!〉

〈草。いつもと逆パターンだな〉


 ま、コメント欄も冗談だとわかっている。

 ……それにしても、最初のころは俺が澪奈の弱みを握っているとかなんとか言われていたのに、今ではまさか立場が逆転するなんてな。

 当たり前のように会話をしながら、ウォーリアリザードマンを討伐して進んでいく。


〈マネージャーは【アイテムボックス】を公開してませんでしたけど、なんでなんですか?〉

「今まで公開しようかとは思ってましたけど、【アイテムボックス】ってわりとレアスキルですから、能力が低いときに見られると変な人に狙われるかもしれませんし」

〈確かに〉

〈実際、【アイテムボックス】狙いの誘拐とかもあったもんな〉

〈自分の身を守れるようにしないと〉

〈お二人も強くなったとはいえ、危険がまったくないわけではないですからお気をつけくださいね!〉

〈本当、気を付けてくださいね! この前、サムライクランの桜リーダーが戦いたいってTwotterで呟いてましたから!〉

〈草。あの人戦闘狂だもんな……〉

〈わー、またやべぇやつに目をつけられたな〉

桜〈誰がやべぇやつですって?〉

〈ふぁ!? 本人!?〉

〈ガチの本人のアカウントで草〉


 ……マジで?

 俺が驚きながら桜さんを見てみると……確かに本人のアカウントだ。

 本人はほとんど動画投稿などはしていないのだが、彼女のアカウントの登録者は五十万人もいる。


「え? 桜さんが来てるんですか?」

桜〈桜です。お二人とも、コラボお願いします。戦いたいです〉

〈相変わらずの戦闘狂じゃん〉

〈この人ほんと自由人だよな……〉

〈コラボじゃん! 戦ってるところぜひ見たい!〉


 ……またいきなり突っ込んできたな。

 いや、まあコラボ自体は別にいいんだけどな?

 澪奈が微笑とともに、こちらを見てくる。


「まあ、それに関してはまたあとで話しましょうか」


 澪奈がそのくらいでまとめる。

 桜さんもそれ以上は何も言ってこなかったが、桜さんの登場のおかげもあってか生放送の人も増えている。

 ……まあ、桜さんって表舞台に滅多に出てこないもんな。


 ……予想外のハプニングはあったが、再検査後の雑談配信は問題なく終了の時間となる。


「明日はSランク冒険者記念……ってわけじゃないけど、Aランク迷宮の攻略をしていきたいと思っています」

〈マジか!〉

〈いよいよか……!〉

〈Aランク迷宮二人で挑むんだよな? この二人だから問題ないけど、改めて考えるとやべぇよな……〉

〈楽しみです! 頑張ってください!〉


「そういうわけで、明日を楽しみにしていてください。それでは、また明日。お疲れ様ですー」


 澪奈がそう言って手を振り、生放送は終了した。







 澪奈の生放送が終わり……彼女を家に送ってから眠りについた俺は、異様に膨れ上がった魔力に、飛び跳ねるように体を起こした。


「な、なんだ……」


 肌を焼くようなピリピリとした感覚に周囲を見回す。

 すぐ、異変に気付いた。


「……迷宮が、暴走しているのか?」


 毎日のように入っていた迷宮の入口である黒い渦。

 そこが、バチバチと稲光に包まれていた。

 ……これはまさしく、迷宮の暴走状態に他ならない。


―――――――――――

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