第113話
……最悪怪我をした場合は澪奈に預けている治療玉を使用してもらえばいいだろう。
同時に、澪奈へと向かったキングリザードマンへ、俺は思い切り固めた拳を振りぬいた。
「おまえの相手は俺だ……!」
俺からの攻撃は想定していなかったのか、キングリザードマンの体がよろめいた。
ギロリ、とキングリザードマンの目がこちらに向く。
……何とか、澪奈に攻撃が向くのは避けられたか。
こちらを冷静に観察するキングリザードマンを観察してから、俺は澪奈に向けて叫ぶ。
「澪奈さん! こいつは、澪奈さんよりも強いです! そちらの女性の保護、お願いします!」
……ステータス、と言わなくても分かるだろう。
俺の言葉で、すべてを理解した澪奈が唇をぐっと噛んで頷いた。
キングリザードマンが剣を構え、俺も拳を構える。
……はっきり言って、どうなるか分からない。
俺が唯一勝っているのは、速度のステータスだけだからな。
俺が思い切り息を吸ったのと、キングリザードマンが地面をけりつけたタイミングは、ほぼ同じ。
――俺たちの、戦いが始まった。
【雷迅】を発動した俺が、キングリザードマンへと距離を詰める。
速度で勝っている俺が即座にキングリザードマンの側面へと回るが、すぐに反応される。
拳を振りぬくのに合わせ、キングリザードマンが俺のほうへ剣を突き出してきた。
俺の拳を当てることはできても、キングリザードマンの剣をかわすことは難しいだろう。
……攻撃に手を回している暇はない。
振りぬいていた拳をそこで止め、俺の喉元を狙うように突き出された剣の腹を肘で殴る。
攻撃をわずかにそらしたところで、足を動かす。
キングリザードマンの背後をとるように動いた瞬間、【軍勢】が現れる。
……厄介だ。
その【軍勢】自体は、大した強さではない。蹴りを放つことで仕留められたが、それによって生み出された時間にキングリザードマンがこちらへ剣を振りぬく。
上体を屈めるようにかわし、追撃のように襲い掛かる剣を後退してかわす。
速度のステータスでは俺が勝っているのだが、その有利な点を【軍勢】によって潰されている。
この魔物、思っていたよりも賢いな。
さて、どう詰めるか。
キングリザードマンが、再び剣を構え、俺が先に動く。
地面を蹴りつけ、速度を乗せた蹴りを放つ。
0から100へと一気に跳ね上げるような加速に、キングリザードマンも反応が遅れ、俺の蹴りがまともに顔面を捉える。
……硬い。
全力で蹴りつけたというのに、俺に返ってきた感触に手ごたえはない。
キングリザードマンが持っていた剣を振り上げてきて、
「……くっ」
キングリザードマンの体を蹴りつけてかわしたのだが、足を軽く斬られる。
鋭い痛みではあったが、ダメージはさしてない。すぐに着地して後退し、キングリザードマンの剣の舞をかわす。
……同時に、キングリザードマンの周囲から生み出された【軍勢】たちを拳と蹴りで仕留め、大きく跳躍して後退する。
軽く息を吐いた俺は、再びキングリザードマンと向かい合う。
……動いたのは、キングリザードマンだ。【軍勢】を俺の周囲を囲むように出現させる。
【軍勢】たちは、出現から動作まで時間がある。完全に囲まれる前にそれらを回し蹴りで仕留めると、正面からキングリザードマンが突っ込んできた。
……筋力を使って、地面を蹴るように攻撃したのだろう。直線的な動きにしかならないが、それでもその速度は俺を超えるほどのものだ。
眼前に現れたキングリザードマンが剣を振りぬいてきて、俺は跳躍してかわす。
キングリザードマンの剣を前に転がるようにしてかわした俺は、
「ギィ!」
キングリザードマンの振りぬいてきた剣に回避が間に合わない。
だが、まともに食らうわけにはいかない。
俺はインベントリから取り出したロングソードで、その一閃を受け止める。
……剣で打ち合うわけではない。事実、俺の剣術ではキングリザードマンの攻撃を受けるのでさえ、まともにできない。
その一瞬の隙に、地面を蹴って後方へと飛んで衝撃を逃がす。
地面を転がるようにして跳ね上がった俺は、【石投げ】によって生み出した魔力の塊を投擲する。
キングリザードマンへと向かうその一撃は、まっすぐにキングリザードマンの顔面へと向かい、加速する。
「ギ!?」
剣で受け止めるのに遅れたキングリザードマンが直撃するが、大したダメージにはなっていないだろう。
「さすがに、強いよな」
【雷迅】が切れてしまったので、再度【雷迅】を使用してから、息を吐く。
キングリザードマンは……持っていた剣の一本を鞘へとしまい、右手にのみ剣を持つ。
……何が狙いだ?
格闘が得意、というわけではないだろう。
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