第141話
ゴブリンリーダー レベル92 筋力:621 体力:448 速度:621 魔法力:211 器用:422 精神:419 運:410
ステータスポイント:0
スキル:【鼓舞】
装備:なし
分身からの情報通り、ステータスでいえばオール100くらい上がっているな。
こちらに気づいたゴブリンたちが好戦的な声を上げる。
すぐにゴブリンリーダーが【鼓舞】を使用すると、ゴブリンたちが襲い掛かってくる。
……速いな。以前戦ったゴブリンたちならば、【鼓舞】を使用されたとしても大した変化はなかった。
だが、今相対するゴブリンたちは以前とは比べ物にならないほどのステータスだ。
確実に一体ずつ、処理していく必要がある。
【鼓舞】と【雷迅】を使用した俺が、迫ってきたゴブリンが棍棒を振りぬくより先に懐へと迫る。
一気に距離を詰めたことで、ゴブリンが棍棒を振るう余裕がなくなる。選択されたのは拳による攻撃だ。
同時に、近くにいたゴブリンが棍棒で殴りかかってくる。
お互いの隙を埋めるような攻撃だ。――それは俺たちも同じだ。
接近していたゴブリンへと銃弾が放たれる。決してダメージはなかっただろうが、それでも一瞬だけでも気を逸らすことには成功した。
その一瞬で、まずは正面のゴブリンを殴り飛ばす。そして、銃撃から俺へと注意を向けなおしたゴブリンが、改めて棍棒を振り下ろしてくるのをかわしながら腕を振りぬく。
棍棒をより強く地面に叩きつけるようにだ。俺が力を添えたことによって、ゴブリンは思い切り地面を叩きつけ、顔を顰める。
その顎を突き上げるように腕を振りぬいた。
ゴブリンが人間とほぼ同じような構造なのは理解している。
随分と脳が揺れたようで、ふらふらと体を揺らす。しばらくはまともに動けないだろう。
仕留めに行きたいのだが、背後から別のゴブリンが迫る。
残っていた三体だ。集団が相手だと一体に集中できないからやりにくい。
ただ、狙い通り俺への注目が十分に集まったようだ。
俺は思い切り後退すると、こちらを追いかけるようにゴブリンたちも地面を蹴る。
俺とゴブリンたちに生まれた距離を縮めるようにゴブリンが突っ込んできたが、その間に風の竜巻が生まれた。
カトレアの【精霊術】だ。彼女の放った【精霊術】に、ゴブリンたちはまったく気づかずに踏み込んだのだ。
ゴブリンリーダーは気づいていたようだが、指示を出すのが一手遅れた。
弱ったゴブリンへ澪奈がトドメを刺すために近づくと、ゴブリンリーダーが飛びかかってくる。
……その相手は俺だ。振り下ろされた棍棒を蹴りで逸らす。
そこから連撃を叩きこんできたが、すべての攻撃を足で捌く。
「ガアアア!」
ゴブリンリーダーが弾丸のような突進を放ってくる。肩からぶつかるように突っこんできた一撃をかわすと、すぐに棍棒が振りぬかれた。
うまい攻撃だ。だが、その動きは見えていた。
突進に込められた力が、少なかったからな。
振りぬかれた棍棒をかわしながら、俺はゴブリンリーダーの顔へ拳を振りぬく。
今回の一撃は目を狙った必殺は、ゴブリンリーダーの目を浅く傷つける。
「ガアア!?」
大きな悲鳴を上げたゴブリンリーダーは、しかしすぐに棍棒を振りぬいてきた。
大振りで隙だらけの攻撃だ。予想以上に復活が早く、俺は一度距離を取る。
澪奈とカトレアの様子を見ると、すでにゴブリンたちを仕留め切っていた。
数の有利は殺した。
それに気づいたゴブリンリーダーは――逃走した。
俺たちに背中を向け、生きるために逃げ出したのだ。……迷宮の魔物とは違い、生への執着が強い。
逃がすつもりはない。カトレアの【精霊術】が、ゴブリンリーダーの逃走ルートを潰す。
振り返ったゴブリンリーダーが俺に向けて棍棒を振りぬいてきたが、片目がうまく見えていないようで届かない。
振り終わりざまに距離を詰め、拳を振り上げる。顎を射抜き、脳を揺らすと、澪奈が接近する。
そして、澪奈が剣を振りぬいた。空気が揺れるほどの高速で振りぬかれた剣が、弱ったゴブリンリーダーの首を跳ね飛ばす。
……戦闘は終了だ。
何度も戦闘を重ねていたおかげで、俺たちの連携も練度が上がっているな。
戦闘を終えたところで生放送へと戻ると、コメントが伸びている。
〈相変わらず戦闘……凄いな〉
〈そこらのアクション映画が涙目になるくらいの迫力だよな〉
〈それにしても、この家の周囲はゴブリンくらいか?〉
〈さっきのはゴブリンリーダーだと、思う〉
〈確かに普通のとは違ったな……〉
〈でも、前にマネージャーたちが戦った奴よりも圧倒的に強かったな〉
〈やっぱ異世界怖いわ。こいつらが地球に万が一出現したら大変なことになるな……〉
〈もっと奥のほうにいけば別の魔物とかいるのかね? これより強い魔物とか恐ろしいな……〉
恐ろしい、か。
……普通ならそう考えるのかもしれないが、俺はやはり楽しい気持ちがあった。
強敵と戦える喜びと自分が強くなっていく感覚があるからな。
コメント欄の言う通り、この周囲にいる魔物はゴブリンとゴブリンリーダーくらいだ。
ただ、さらに先に進んだ場所にはまた別の魔物がいるのも、確認自体はできている。
下手にちょっかいをかけてこちらに来られても困るので、まだ手を出させないようにはしている。
……奴らは、さらに一回り強いからな。
まずは、ゴブリンたちでレベルをあげ、余裕ができてから先に進むほうがいいだろう。
冒険者は冒険をしない。昔の冒険者の言葉だが、その意味が今はよくわかるな。
―――――――――――
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!
『楽しかった!』 『続きが気になる!』という方は【☆☆☆】や【ブクマ】をしていただけると嬉しいです!
ランキングに影響があり、作者のモチベーションの一つになりますのでよろしくお願いします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます