第142話
それからも定期的に誘導されるゴブリンたちを相手し、生放送は終了した。
……結局最終的には七十万人の人が生放送に来ていた。
途中から伸びが鈍化したのは、異世界の魔物がゴブリンとゴブリンリーダーくらいのものだったからだろう。
ゴブリンとゴブリンリーダーというのも、いまいち相手に強さが伝わりにくいというのも問題だ。
もっと珍しい魔物とか、明らかに強そうならいいんだけどなぁ。
……それから、すべての人がステータスを見られれば、簡単に強さを証明できるんだけど。
生放送を終えた俺たちは部屋へと戻り、カトレアが部屋に座った。
「ふぅ……こうして話しながら戦闘したことはなかったので、とても疲れました」
「お疲れ様。カトレアのおかげでかなり盛り上がった」
「そうでしたか? それなら良かったです」
「ただ、ちょっと発言に気になるところもあった。私ももっとアピールしたほうがいいかも?」
「ほんと、勘弁してくれ……」
カトレアが口にするたび心臓がきゅっと締め付けられるような感覚があったんだからな……。
生放送が終わったあとにはいくつもの俺たちの記事が出るのだが、今回は異世界についての説明が多くあった。
切り抜きも、凄まじい量があるな。戦闘よりも異世界の風景を切り取ったものが多く、視聴回数は更新のたびに伸びていく。
それだけ皆が異世界に興味を持っているということなんだろう。
「マネージャー。次の生放送はどうする?」
澪奈がさっそく次の予定について聞いてきた。
彼女の意欲的な態度に、一呼吸つこうとしていた身が引き締められる。
あくまで注目されているのは異世界であって、俺たちではない。今回の視聴者が多かったのには、そういう意味もあるはずだ。
それにしても、次の生放送か……。
今回異世界で戦闘をしてみて分かったのは、今の俺たちだと正直言って力不足な部分があるということだ。
今回は問題なかったが、さらに先に進んでいくことを考えるともっと強くなる必要がある。
……とりあえずやることといえば、レベル上げだな。
「とりあえずはレベルを上げないとな……まだまだ余裕ってわけじゃないし。前みたいな感じだ」
「分かった。あと、できれば魔物の戦闘能力を測れるようにしたほうがいいかもしれないと思った」
「それは俺も思ったんだよなぁ……」
「いっそのこと、マネージャーがステータスを見られるようになったことを伝えるのもあり?」
「……そうだな」
……今回は映像を見て判断してもらえていたが、ゴブリン相手だと視聴者も分かりにくいだろう。
能力測定機は、確か魔物の能力も測れるはずだ。
仮にSランクまでしか検査できないとしても、それだけ分かれば十分だからな。
……問題があるとすれば、故障する可能性があることと借りるにしてもお金がかかることくらいか。
俺たちがそんな話をしていると、カトレアが驚いたような目を向けてくる。
「ケースケ様は他の人のステータスまで見られるんですか?」
「そういえば、話してなかったな。カトレアは見えないのか?」
先ほどの口ぶりから、答えは予想できていたが、確認のために問いかける。
カトレアはこくりと小さく頷いた。
「見えませんね。ただ、しっかりと鍛錬を積めばステータスは適切に伸びていくとは聞いていました」
「そうなんだな……」
「私の父と母は、見える、と話していましたが……」
「……そうなのか!?」
いつもよりも少し声が大きくなってしまう。
俺の反応にカトレアが少し驚いてしまっていたが、カトレアは肯定するように頷いた。
「ええ。ケースケ様の反応を見るに、地球の方々もステータスなどが見えるわけではないのですね」
「……なぜか、俺がたまたま見えるだけだな。ステータスポイントって分かるか?」
「ええ、分かりますよ。鍛錬やレベルアップなどで獲得できるポイントですね。正しい鍛錬を行うことで、ステータスに割り振られる、と聞いています」
「そうなんだな……俺はそのステータスポイントも割り振ることができるんだ。カトレアの両親はどうだった?」
「私の父と母も、できたと思います。私にステータスポイントのことを話してくれたときにそのようなことを話していたような気がします」
……もう昔のことなのだろう。
カトレアは思いだすような口調とともに、話していく。
「とりあえず、ステータスポイントの割り振りもできるから、あげたいいときは言ってくれ」
「今、私のポイントはどのくらいありますか?」
「今は……11ポイントだな」
カトレアも澪奈も、すでにかなりのステータスポイントを獲得していた。
異世界での戦闘ってもしかしてステータスポイントを得やすいのだろうか?
俺も生放送前に比べて、レベルも大きく上がってるし。
「では、今あるポイントを魔法力に割り振っていただけませんか?」
「分かった。割り振るために触れる必要があるんだけど……いいか?」
「はい、もちろんです」
そう言ったカトレアが、胸を強調するように背筋を伸ばす。
まるで胸を触ってくれとばかりの様子に、俺は頬を引きつらせながら答える。
「触れるのは体のどこでもいいんだからな?」
「つまり、ケースケ様の好きな場所をまさぐるということですね」
「……」
カトレアがなんとも触りにくくなるような発言をしてきたが、俺は無視して彼女の方に触れる。
「ケースケ様は肩がお好きだと」
「マネージャー、案外特殊な性癖をしてる」
「いや、無難に触れそうだったからな?」
「そうなの? とりあえず、次は私も願い」
「だから胸を強調するんじゃない」
二人は俺をなんだと思っているんだ。
ため息を着きながら澪奈のステータスポイントも割り振る。
澪奈は速度に、カトレアは魔法力だ。今のように三人で戦うのなら、このステータス振りがいいだろう。
「それじゃあ、そろそろ家に帰るか?」
「え? 今夜は一緒じゃない?」
「それは楽しそうですね。お泊り会をしましょうか」
「しません。ほら、帰れ帰れ」
俺は半ば強引に二人を追い払うようにインベントリに放り込み、澪奈の家へと送り込んだ。
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