第80話
まあでも、俺にあって喜んでくれる人がいるというのはいいことなのかもしれないな。
「あ! マネージャーさん!」
「マジじゃん! れ、澪奈さんのマネージャーさんですよね!? 俺昨日の生放送見てました!」
「ありがとうございます」
帰ろうかと思ったところで、ぞろぞろと高校生たちがやってきた。
男女含めて多くの高校生が、ちょうど昼休みに食事を買いに来ていたようだ。
「え? マネージャーさん? それって何?」
「おまえ、知らないのか!? 今注目集めてる迷宮攻略配信者の二人組の一人だよ!」
「あっ、そういえばテレビで見たことあるかも……え? マジで? 有名人じゃん!」
「そうそう! 昨日もキングワーウルフを二人でぼこぼこにしてたんだよ! おまけにこのマネージャーさんは武器使わないで身一つで戦うんだよ! 俺、すっげぇ尊敬してます! 俺も最近迷宮に入るようになったんですけど、拳一つで戦ってるんです! マネージャーさんみたいになりたくて! サインください!」
……ええ。
コンビニにやってくる生徒たちがぞろぞろと俺の前へとやってきては、サインを求めてくる。
……さっき書いちゃったので、断るというのは印象悪いよなぁ。
俺だけならいいが、これが巡り巡って澪奈のチャンネルにも影響が出てしまうし。
生徒手帳とペンを渡してきた彼から受け取り、俺はさっきと同じようにサインを行う。
「分かりました。……それと、格闘での戦闘は訓練が必要ですからあまりオススメできませんよ?」
「でも、マネージャーさんみたいな冒険者になりたいんです!」
「それでも、まずは冒険者として成長してから試したほうがいいですよ。あなたは槍とかのほうが合ってると思いますよ」
……さすがに拳で戦って大けが、最悪死亡したなんて言われたら大変だ。
下手したら俺のせいにされる可能性もあるので、彼のステータスを見て、槍をオススメした。
スキルで【槍術】を持っているのだから、そちらを活かしたほうがいいだろう。
「槍……ですか?」
「はい。俺、なんとなくその人の才能が分かるんですよ。澪奈さんに剣とハンドガンを持ってみるよう勧めたのも俺なんですよ。だから、キミも試してみてください」
「は、はい! マネージャーさんのアドバイスをもらえるなんて……ありがとうございます!」
「きちんと、槍を装備、することも忘れないでくださいね。装備品は、装備しないと意味ないですから」
「はは、ゲームみたいなアドバイスですね!」
わりと、真実なアドバイスなんだけどね……。
……ちゃんと装備できればステータス的にもいい補正になるだろう。
それにしても、やはりステータスポイントが余りまくっているんだな。
「あの、マネージャーさん……俺も冒険者として活躍したくて……大学進学しないで冒険者一本でやっていこうと思っているんですけど……」
「冒険者は……正直言って、厳しい仕事ですよ。うまくいけば確かに稼げると思いますけど、失敗したときにやり直したいのなら、大学に進学するべきだと思います。大学に通いながら冒険者活動をして、それから判断するのでも遅くないと思いますよ」
「……そう、ですかね?」
「はい。今使っている武器とかってありますか?」
「剣を使ってます……マネージャーさんにあこがれて、拳で戦おうかと思ってるんですけど……!」
「……それは、ちょっとやめたほうがいいと思いますよ。あなたは……剣じゃなくて短剣のほうがいいかもしれませんね」
「短剣、ですか!? わかりました、今度使ってみます!」
……なんか、お悩み相談みたいになってしまった。
サインを行いながらちょこちょこっと冒険者の話を行っていく。
……といっても、俺だって冒険者として本格的に戦っている時間は一か月ほどだ。
その短い間でここまで成長できているのは、あの迷宮が与えてくれたステータスを見る力がえぐいからだ。
高校生たちのステータスポイントに関してはさすがに割り振るようなことはしなかったが、それぞれの得意武器を使えるように指摘だけはしておいた。
あとはどれだけの人が装備をして実際にスキルを活かして戦えるか、ってところだよな。
……ていうか、さっきの高校生たちほとんど適正武器以外のものを使っていたな。
複数のスキル持ちが多かったが、やはり検査だと一つまでしか判定できないんだな。
だとすると、世の中には自分の才能に気付けていない人が随分といることになるよな……。
「……将来、落ち着いたら俺はそっちの仕事とか探してみようかね?」
ステータスポイントの割り振りとスキル判定を行う仕事。
これだけでもかなり稼げるのではないかとは思っているのだが、この特異性はかなりのものだ。
……俺が自分の身を守れるくらいになるまでは、公開しないほうがいいだろう。
それまではあくまで、ちょっと人の才能を見る目が鋭いくらいにしたほうがいいだろう。
それと、次からは澪奈からもらっていた変装道具を身に着けて街に出よう……。
俺もすでに注目されてしまうような人間なのだと、再認識させられた。
『マネージャー。あのスケジュールなんだけど……』
「ああ、見てくれたか? どれを断ろうかって話なんだけど……」
今は来ている仕事の話をすべて詰め込んだキツキツの状態だ。
澪奈と話し合おうとすると、
『学校が終わった後の放課後も入れそうな日があるから、全部引き受けて大丈夫』
「え? いやでも、忙しくないか?」
『大丈夫。インタビューと撮影なら放課後からでも問題ない日もあると思う。それで改めてスケジュールを組んで大丈夫』
「……了解。これから一か月でどうしても無理な日だけ教えてくれ」
『分かった。無理な日の画像を送る』
澪奈からバツ印がついたカレンダーの画像が送られてくる。
……マジでほとんど大丈夫だな。
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