第106話

 ……能力の検査ですでに大盛り上がりしてしまっていたが、先ほど職員が言ったようにこれからスキルの判定を行う。

 ギルド職員がタブレットを片手に、まずは澪奈へと質問を行う。


「えーと、澪奈さんは【氷魔法】のみ……ではありませんよね?」

「うん。あとは、剣と銃が得意」

「と、なると……恐らくは【剣術】と【銃術】ですかね?」

「なんとなく。それ以外は試していないから……たぶんないと思う」


 本来、ステータスを見ることはできないので澪奈の回答としてはこれが限界だ。

 さらに断言するような発言を増やしてしまうと、恐らく疑われてしまうだろう。

 澪奈が質問を受けている間、コメント欄を見ていると、


〈やっぱり【剣術】と【銃術】だよな〉

〈【氷魔法】はあまり見ないけど、たまに使うと結構慣れた感じだよな〉

〈澪奈ちゃんのようなスタイルってめちゃくちゃいいよなぁ〉

〈最近の若者に剣と銃を使う人が急上昇してるんだろ?〉

〈らしいよな。拳と蹴りで戦おうとする人もいるみたいだけど、みんなすぐ断念してたけどさ〉


 ……格闘での戦闘は本当に真似しないでもらいたい。

 これからは右下当たりに、※特殊な訓練を受けていますので真似しないでください、とか書いておいたほうがいいかもしれない。

 特殊な訓練なんて受けていないけど。


「それでは……次はマネージャーさんですね。マネージャーさんはどのようなスキルを所持しているのですか?」

「たぶん、格闘系のスキルだと思います。拳で戦っているときが、一番体が動かしやすいので」

「……ということは、【格闘術】とかでしょうか?」

「おそらくは」

「……そうなると、初めてのスキルですね」


〈おお! 新スキルか!〉

〈でも、確かにマネージャーさんの近接戦闘は【格闘術】とかのスキルがないとできないことだよなって思うもんな〉

〈武器なしであんだけ戦えるなら、【格闘術】ってめちゃくちゃあたりだよな……〉

〈俺も【格闘術】持ってないか試してみようかな〉


 スマホで自分たちの生放送を確認していると、コメント欄が再び賑わっていく。

 ……ああ、憂鬱だ。

 今見たのだが、視聴者は十五万人にまで増えていた。

 過去最高の生放送となっているのは間違いないのだが、次のスキルでどうなるかわからないんだよな。

 俺は次に所持しているスキルまでは、公開する予定だ。


「やっぱり、そうなんですね。他に何か所持していますか?」

「あとは……【アイテムボックス】ですかね」

「……え?」


 俺はそのスキルを見せるように、虚空から剣を取り出した。

 俺が発動したスキルを見て、澪奈以外のこの場にいた人たちが驚愕の声をあげる。


「【アイテムボックス】……! 超レアスキルじゃないですか!? よ、容量はどのくらいでしょうか!?」

「分かりません。今、この中に色々入れてますけど、容量で困ったことはありませんね」


 俺は次から次に荷物を取り出していく。

 俺のインベントリを見て、職員だけではなく秋雨会長も目を丸くして声をあげる。


「よ、容量無限の【アイテムボックス】なんて、聞いたことありません……っ」

〈ふぁああああああ!?〉

〈やばすぎぃ!〉

〈容量無限の【アイテムボックス】とあの戦闘能力が同居してるとかなんでも屋すぎんだろ!〉

〈ってことは生放送のときももしかして使ってたのか!?〉


 ……その通りである。

 俺がこれを公開したのは……ぶっちゃけ、生放送のたびに色々誤魔化すのが面倒だからである。

 今の俺くらい強くなれば、公開しても問題ないだろうという判断から、インベントリまでは公開しようと思っていた。


「……な、なるほど、分かりました。それでは、以上ですよね? もうありませんよね?」


 職員はいまだ驚いた様子ではあったが、再度問いかけてきて俺は首を縦に振る。


「はい。以上になります」


 ……本当は他者のステータスを見て、その成長をある程度制御できるのだが、それはまだ非公開だ。

 もしも公開すれば、俺のもとに冒険者が大挙してくる可能性がある。

 さすがにそうなると、今のような撮影はできなくなるからな。


 コメント欄を見ると、気づけば視聴者は二十万人を超えていた。

 ……なんでもTwotterのトレンドに色々なワードが入っている。

 ダブルSランク冒険者、無限アイテムボックス、最年少Sランク冒険者、世界最強Sランク冒険者などなど……。


 それらで気になった人がどんどん入ってきているわけで、それはもう凄まじいことになっている。

 ……とはいえ、ここでの撮影はこれで終わりだ。

 澪奈がちらとスマホを確認してから、声をかける。






―――――――――――

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