第105話





〈ぬ!? 秋雨会長じゃないか!〉

〈マジで!? Sランク冒険者勢ぞろい!?〉

〈いや、許可とって放送してるのは知ってたけど、まさか会長までいるなんて……!〉

〈有名人なのか?〉

〈↑本当に日本人か? 冒険者協会のトップだぞ? 実質日本の冒険者をまとめてるリーダーだぞ?〉

〈やばすぎワロタw〉

〈豪華すぎるwww〉


「澪奈さん。おめでとうございます。日本で六人目の、Sランク冒険者……それに、最年少でのSランク冒険者となります」


〈そういえば、最年少か!〉

〈え? もしかしてこの瞬間ってめちゃくちゃ貴重な時間なのか!?〉

〈普通に教科書に載るレベルの偉業だぞ〉

〈他国と比べても、高校生でのSランク冒険者なんてたぶん初だぞ?〉

〈全国での最年少が二十歳だから、澪奈はそれを二年も上書きしてる〉


 ……二年どころか、実際のところ二ヵ月くらいなんだよな。

 コメント欄を眺めながらそんなことを考えていると、澪奈が嬉しそうにピースを作った。


「皆さん、やりました。Sランク冒険者みたいです」

〈おめでとう……!〉

〈動画見始めて一ヵ月くらいしか経ってないけど成長早すぎる……〉

〈これが高校生という若さなのか……?〉

〈澪奈ちゃんを基準にしたら全国の冒険者がハイハイみたいな成長速度だよな……〉

〈とにかく、おめでとう!〉


「皆、ありがとう。とりあえず、次はマネージャーの番だから、カメラマン交代しよう」

「一応、お二人のチャンネルでしょう? 私がカメラマンをやりますよ」


 そういって声をかけてきたのは秋雨会長だ。


〈秋雨会長www〉

〈マジか! カメラマンが豪華すぎだろ!〉

〈秋雨会長ありがとうございます! ¥10000〉


 ……ちょっと迷ってしまったが、俺は秋雨会長にカメラを渡した。

 秋雨会長は慣れた手つきで俺たちのほうへとカメラを向ける。


「これでも、冒険者として覚醒する前はカメラマンをしていましたからね。このくらいは慣れたものですよ」


 そうだったのか。知らなかった。

 というわけで秋雨会長にカメラをお願いし、俺と澪奈は二人並んでカメラを見る。


「それじゃあ、次はマネージャーの番だけど……意気込みはどう?」

「……せっかく見てくれている人もいっぱいいますし、なるべく良い評価ならいいなぁ、という感じですかね?」

「どうやらSランク取る気満々みたい。それじゃあ、次の検査、お願いします」


 相変わらずの強引さで話を進めると、職員がやってきてこちらに検査機を向ける。

 その瞬間だった。

 検査機がかたかたと震えだし、秋雨会長が慌てた様子で叫んだ。


「い、いけない! 君! その検査機を捨てなさい!」


 秋雨会長が激高した次の瞬間、職員はすぐに検査機を放り投げる。

 それとほぼ同時に、検査機が爆発した。


「……へ?」

「……どういうこと?」


 俺と澪奈が顔を見合わせ、首をかしげる。

 職員も含め、皆が驚いていたなか……秋雨会長がこほんと咳ばらいをする。


「検査機で検査できる能力には、限界があるんです。その限界を超えたものを検査してしまうと、検査機がエラーを起こして暴発するんです」

「……えーと、つまり?」

「マネージャーさんの能力は、検査機では検査しきれない域に到達している、ということです」


 秋雨会長はどこか感動したかのような表情でゆっくりとそう話していた。

 ……彼の宣言にあわせ、澪奈がスマホを見ていた。

 その表情は、撮影中であることを忘れたかのようにひきつっている。


「……マネージャー、コメントが凄いことになってる」

「……」


 恐る恐る見ると、もはやコメント欄はお祭り騒ぎのようになっていた。


〈さすがマネージャー!〉

〈世界最強ってことか!?〉

〈澪奈ちゃんの結果を超えてくるやつがいるとは思ってなかったぞ!〉

〈うおおおお! 最強! マネージャー! 最強!〉

〈マネージャー! 俺は信じてたぞぉぉぉ!〉

〈おめでとうおおおおお! ついに……日本の冒険者が世界に通用するときが来たぞぉぉぉ!〉


 ……おいおい。

 そんな祭り上げなくてもいいだろう。

 困り果ててしまっている中、秋雨会長がこちらに近づいてきた。


「……とりあえず、お二人とも第一の検査はこちらで終わりとなります。続いては、検査機で測りきれなかった把握しているスキルについての調査をお願いしたいのですが、よろしいでしょうか?」

「……ええ、まあ大丈夫です」


 秋雨会長が冷静な様子で、カメラを持ったままこちらに向けてくる。

 ……次のスキル検査に関しては、俺もどこまで公開するかはすでに決めていた。

 しかしまあ……今の俺を神格化するかのようなコメント欄を見ると、スキルは公開しないほうがいいのでは? と思う気持ちもなくはなかった。



―――――――――――

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