第13話
「いやな。前よりも笑顔が増えてるし、澪奈の魅力が引き出せてるんだよ」
「……そ、そう? つまり、マネージャーは私にメロメロってことでいい?」
「ああ。これなら一流のMeiQuberにも負けないと思うぞ」
「……」
花梨と麻美は、有名になりたいだけで事務所に来た子で俺がメンバーを集めているときに勝手に入れられてしまった。
……俺としては、元々澪奈一人でデビューのほうがいいのでは思っていたが、押し付けられるようにしてグループを結成したのだ。
まあグループのほうがいいことも多いので、俺は納得してはいたけど……澪奈はあまり周りに合わせるのは得意じゃないんだよな。
花梨と麻美も悪くはないのだが、二人が努力を嫌う部分もあり、澪奈とは色々と壁が生まれていた。
この動画、特に盛り上がりどころはないのだが、それでも飽きずに見ていられる。
迷宮での戦闘もしっかりとしていて、澪奈の動きがアクション映画のようで映えている。
相手がゴブリンとはいえ、今後澪奈が力をつけていけばさらに動画は良いものになっていくだろう。
……澪奈の成長を見られるよう、俺も頑張らないとな。
澪奈とともに編集作業を終えた俺は、それを澪奈の新しいアカウントにて動画投稿しておいた。
「よし……とりあえずこれで終わりだ。澪奈、色々ありがとな」
「……それは私のセリフ」
澪奈がぺこりと頭を下げてきた。
「私、頑張るから。絶対有名になって、マネージャーをバカにした人たちを見返すから」
何か異様なまでの気迫を見せる澪奈に、少し気圧される。
「……お、おう。まあ、そう気負わずにな。あくまで、楽しんでやっていこうぜ」
有名になる、とかお金稼ぎとか。
そういうのはあくまで二の次だ。
今は澪奈のやりたいようにやって、それをサポートすればいい。
……その間に俺も冒険者として活動できるくらい稼げれば、俺の生活もなんとかなるしな。
「マネージャー、明日はどうするの?」
「……どうするかぁ。いつもなら会社で打ち合わせとかあるけど、今は別にそういうのもないしな……動画撮影しておくか?」
「うん。それと、授業が早く終わる日とかなら平日でもここなら来れるから、撮影の必要があるときはいつでも言って」
「了解」
「あと、暇なときに迷宮も入りたい。近隣だとここが一番近くて気軽に来れるから……鍵とかあったら貸してほしい」
「ん? ああ、そうだな。ちょっと待っててくれ」
これからトレーニングする場所も必要だし、澪奈にはうちの迷宮へ気軽に入れるようにしておいたほうがいいだろう。
俺はインベントリに入れておいた棚を取り出し、中から鍵を出して澪奈に渡す。
澪奈はそれを大事そうに両手で握った後、笑顔とともにポケットにしまう。
「大事にする」
「ああ。なくしたらすぐに言ってくれよ……」
「絶対なくさない。マネージャーだと思って大事にする」
「お、おう」
澪奈が俺をどれだけ大事に思ってくれているか分からない。
万が一嫌われたらなくされる可能性があるので、今後はさらに言動、行動には気を付けたほうがいいかもしれない。
「それじゃあ澪奈。今日は一度家に戻るか? 親御さんにも今日のことで話をしておきたいし」
……まだ澪奈のご両親には、事務所を辞めたことについて一切話していないからな。
澪奈の活動も、事務所所属だからこそ許されている部分もあるだろう。
一度、何があったのかをきちんと伝える必要があると思っていたのだが、澪奈はしたり顔だ。
「今日はここに泊まっていくのもありかと思った」
「それは絶対ダメだろうが。……まあ、もう遅くなるし挨拶はまた別の日のほうがいいか? 家までは送っていくから、そろそろ行くか?」
「母さんと父さんには、事前に私から伝えておく。必要があれば、マネージャーからもってことで」
「……了解。今はいつでも対応できるって伝えておいてくれ」
「分かった」
こくりと頷いた澪奈とともに部屋を出た。
彼女は俺の家から駅一本いったところにあるのだが、俺の自宅からだと歩いて行っても大して距離が変わらないそうだ。
なので、お互い歩いてい移動していくと、隣に並ぶ澪奈は理由はわからないがずっと楽しそうにしていた。
……確かに、この近辺だとあんまりいい迷宮がないな。
澪奈の家近くにはAランク迷宮があったが、さすがに高ランクすぎるな。
撮影場所としてはやはり俺の家が無難だよなぁとか考えていると、澪奈の家に到着した。
「それじゃあな」
「うんまた明日」
「ああ、また明日。時間はいつでもいいからな」
「それじゃあこれから戻って泊まるのもあり?」
「明日、九時以降で。八時くらいのほうがいいか?」
澪奈の提案を否定するように時間を指定する。
「ううん、九時でいい。別に早く行って二人の時間作らなくてもいいし」
澪奈は真面目だからな……。
事務所の打ち合わせのときは、いつも一時間前に来ていた。
花梨と麻美がいるとなかなか打ち合わせが進まないのを見越して、先に俺と打ち合わせをしたがっていたのだ。
「そうか? まあ、それなら九時くらい集合で」
「うん、それじゃあ」
澪奈とはそこで別れ、俺も自宅へと戻った。
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