第131話

「よりあえず、一度俺の家に戻ろうか」

「ケースケ様の家で何をするのでしょうか? 若い女の子を連れ込んで、というと子作りでしょうか?」

「ねえなんで名前で呼ぶことに恥じらいはあるのに、それは恥じらいないの?」

「……カトレア。マネージャーと先にするのは私だから」

「それは譲りましょう。ですが、二番手となれば一番手と比較されるということです。つまり、二番手のほうがうまい場合はその分より記憶に残り、ケースケ様の記憶に刻まれることになります。ケースケ様の記憶に、刻んで見せましょう」

「今後の打ち合わせだからな?」

「今後の、子作り計画、と」

「日本での生活のだっ」

「新婚――」

「ほら、二人とも行くぞ!」


 澪奈も悪乗りして「新婚――」と言い出したので、無理やり押し切って俺は先頭を歩いていく。

 部屋に分身体がいるので、インベントリワープで移動してもいいのだが、カトレアも街を見て回りたそうだったので、俺たちは歩いて自宅へと向かった。





「ここがケースケ様とレーナ様の愛の巣、ですか」

「うん」


 うんじゃない。


「これからは三人の愛の巣、ということですね」

「それは違う。私とマネージャーの二人の愛の巣だから」

「む。それはレーナ様。いくら正妻だからとはいえ、横暴です。私にも多少は分けてください」

「それは、できない」


 二人がじろりと視線をぶつけあっていたが、俺はもう何も言わない。疲れるからだ。

 部屋の中央にテーブルを置き、インベントリにしまってあった座布団を敷いたところで、俺たち三人はそこに座る。


「とりあえず、これからについて話していくぞ」

「まずはどこから話しましょうか?」

「婚姻届けについて?」

「婚姻届けとはなんでしょうか?」

「この国では結婚したという証として婚姻届けを提出できる」

「なるほど。それでは、無理やりにでも書かせて提出してしまえばいいのですか?」

「それも一つの手」

「普通に止められるからな? 最悪事件になるからな? カトレアは何とかして自宅の森の外に出たいんだよな?」

「はい。そうなりますね」

「ただ、それには一人では難しいから、俺たちに助力してもらえるなら、助力してもらいたい、ってことでいいな?」

「そうですね。私一人で難しい部分はありますが、数人でなら戦える可能性もありますからね」

「……分かった。俺は……それに協力してもいいと思ってる」

「本当ですか!? ありがとうございます。さすが、旦那様です」

「ただ……さっきも言ったけど、俺たちは今動画で活動しててな。その収入で生活しているわけで……できるのなら、異世界の森での戦闘とかを生放送したいんだ」


 さっきのカトレアの異世界との接続を見ている限り、問題なくできるだろう。

 だからこその俺の提案に……カトレアは目を輝かせていた。


「なるほど。新しい女、として私も参加してよろしいのでしょうか!?」

「……言い方はともかく動画に、出たいのか?」

「ええ、出てみたいです。楽しそうですし」


 ……まさかの乗り気か。

 予定では、カトレアに、異世界の扉を開けてもらう程度の協力をしてもらうつもりだったのだが……これはいいかもしれない。

 ただ、問題はある。


「出てもらうのはいいんだけど、しばらく常識というかマナーを学んでもらう必要があるんだ」

「常識、マナーですか? 確かに、今の私は日本のことについて知らないことが多くありますしね」

「特に、表現とかだな。例えば、さっきみたいにセック〇とかいきなり発言するのもダメなんだ」

「それはつまり……男性が女性にむふふなことをする、とかそういう濁した言葉を使え、ということでしょうか?」

「……いや、まあ……う、うーん……」


 確かに、そのくらいの表現ならば問題ない可能性はある。

 ……ただ、できればそもそもそういう発言自体を控えてほしいのだが、これはこれでカトレアの個性なんだよなぁ。


「カトレア、それは大丈夫。ぶっちゃけ、セッ〇スっていうときも、セッピークスとか言えば問題ない」

「いや、普通に問題あるからな?」

「分かりました。これからは何か口にするときはピーという言葉を使います……あっ、今精霊から教えてもらいました。ピー音というものですね」

「おい精霊さん? もうちょっとまともな常識を教えてあげてくれ」


 俺の部屋に来てから俺の分身体と一緒にパソコンを弄って何の勉強してるのかと思ったらそんなことかよ……。

 ただ、精霊を通じたカトレアの理解力はかなり高い。



―――――――――――

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