第54話



「というわけで、食べもの関係第二弾。嫌いな食べ物は……ナス。あのぶにょっとした触感と味が嫌い」

〈分かる〉

〈ナスうまいのになー〉

〈ナスの魅力が分かるのは大人になってからだな〉

「私もう十分大人なんだけど」

〈確かに〉

〈大人な部分がありますねぇ〉


 そういえば、ここ最近は澪奈に料理をしてもらうことが多いが、ナスは一度も見たことがなかった。

 意外と子どもらしい部分があるんだな。


 ちょうどワーウルフを見つけたので、澪奈はコメントを眺めながらハンドガンを乱射して仕留めた。

 もうハンドガンだけでも倒せるようになってきたな。

 視聴者は気づけば15000人を超えていて、さらに伸びていっている。


「っと、次は好きな動物はなんですか? です。私、熊が好き。ぬいぐるみとか色々持っているけど、そういうデフォルメされた熊。さすがに山とかで遭遇するタイプの熊は無理」

〈今だと熊のほうが出合いたくないのでは……?〉

〈たぶん、武器持ってたら澪奈ちゃんのほうが熊より強いな?〉


「私女子高生だから、熊と戦えない」


〈女子高生(剣と拳銃振り回す)〉

〈女子高生(Dランクのワーウルフを一方的に仕留める)〉


「何が言いたい? 私は普通の女子高生。というわけで女子高生つながりで平日、休日には何をしているのかの質問。平日は学校なんだけど、わりとこの質問多かったのってやっぱり私女子高生であることを疑われてる?」


〈そりゃあ疑う〉

〈こんな強い女子高生なんて数えるほどしかいないし……〉

〈確か、最年少Sランク冒険者が大学生じゃなかったっけ? それに並ぶレベルの成長っぷりだもんな……〉


 ……澪奈に関しては、年齢についてよく問いかけられるんだよな。

 それだけ成長したと、喜んでおけばいいだろう。


「平日は基本学校。放課後は時間があるときはマネージャーの家の迷宮で戦わせてもらってる」

〈マネージャーと家近いんだ?〉

「わりと。最近身体能力上がったからか、走ってくればわりとすぐ」


〈……身体能力あがったって、今の全力疾走どんくらいなんだろう?〉

〈そんだけ戦ってたら、そりゃあ成長するよな……〉

「まあ、そういうわけで平日はそんな感じ? あとは友達と遊びに行くときもあるけど、最近はあんまり一緒に行動できない。……変装しててもわりと町中で声をかけられるし」


 その理由は生まれ持っていた美しい銀髪だろう。

 澪奈がそれをアピールするように髪の先を指で弄っていると、コメントも流れていく。


〈確かに澪奈ちゃん目立つもんな〉

〈こういう仕事をしていると仕方ないよな〉

〈綺麗な髪だもんなぁ〉

「そう。髪を染めたらどうにかなるかもしれないけど、生まれ持ってのものだから。これも質問来てたけど、私はスキルの影響みたいで生まれたときからこの髪色」

〈羨ましい……〉

〈凄い綺麗な白髪? 銀髪? だもんな……〉


 澪奈はコメント欄に微笑のみを返してから、ワーウルフを倒した。

 ……余裕で、大丈夫そうだな。

 今の澪奈は俺の【鼓舞】ありではあるが、ステータスはかなり高い。なんなら、荒地エリアでも戦えるくらいだ。


「そうそう。友達と遊ぶで思い出したけど、次の質問。迷宮攻略以外の活動予定はありますか? ですね。私歌うの好きだからカラオケ配信とかもやりたいとは思ってる。ただ、今は迷宮攻略楽しみにしている人のほうが多いと思うし、早くマネージャーの部屋をどうにかしてあげないとだからそっちに集中してる」

〈カラオケ! それ楽しみ!〉

〈一応澪奈ちゃんアイドルっぽい活動もしてたもんな……今はもう完全に冒険者と思われてるけど〉

〈カラオケボックスから配信くらいだったら、すぐに準備できると思うしそれでいいのでは?〉


「カラオケボックスはいいかも。とりあえずは落ち着いたらまた考えていこうと思ってる。えーと次の質問は……今後の冒険者活動とか? 多かった質問にバンバン答えていく。まず、前にも答えたけどクランとかパーティーに関しては今は入ったり組んだりは考えてない、かな?」


 澪奈の言葉にコメント欄ではおそらくパーティーの誘いなどをしていた人たちの嘆くコメントが流れていた。

 ……まあ、一緒に活動したいという人に関しては悪い気はしないが、澪奈が「しばらくは二人でやりたい」と話しているしな。

 今後、どうしても人手が必要になったときに都度頼む可能性はあるけど。


「あと、コラボに関して。なんだか、コラボしてほしい人の名前がいっぱいあったけど、今は特に私から動く、ってことはない、かな?」

〈誘われたらやる?〉

〈コラボするにしても、男とは絶対やめてください〉


「私冒険者だから特に気にしてなかったけど、やっぱり男の人出さないほうがいい? マネージャー女装したほうがいいって」

「……しませんよ?」

〈マネージャーわりといけそう〉

〈今どきの化粧ってすごいからな。マネージャーはあの戦闘能力のわりに中性的な顔たちだからありかもな〉

〈期待して待ってます!〉


「だそうです、マネージャー。さて、それは冗談としてコラボに関しては誘われても……たぶんそっちまで手が回らない状況です。打ち合わせとかに割ける時間もあんまりないから、これから時間に余裕が出たらって感じ。それじゃあ次の質問だけど……付き合ったことありますか? ないです。好きな人いますか? え、これって視聴者の皆とか言っておけばいいの? 皆のことが大好き。はい、これでいい?」

〈投げやりで草〉

〈大好きの部分だけうまく切り抜こう〉

〈ありがとうございます!〉


 ……これでもコメント欄は盛り上がっているな。

 このくらいのファンサービスもしたほうがいいだろう。

 視聴者は30000人を超えている。目新しい迷宮の情報はないのだが、それでもこうしてファンが確実に増えているのは悪くないな。


「次の質問だけど、あっ、身バレ。身バレぶっちゃけしてますか? だって。さっきも言ったけど町中で声をかけられるし、学校の友人にもめっちゃ言われてる。でも、最近は能力が上がったから気配消すのうまくなってるから意図的に気配を消すとあんまり気づかれない」

〈忍のそれじゃん〉

〈どんどん人間離れしていて草〉

〈澪奈ちゃんもマネージャーももはや人間じゃないよな……〉

―――――――――――

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