第151話
「……お疲れ様です。茅野です」
『夜分遅くに失礼いたします。秋雨です』
「秋雨さん、何度か連絡頂いていたようですがどうしましたか?」
『それが、もしかしたらもうご存知かもしれませんが迷宮が暴走状態でして』
「はい。ちょうど今生放送中でして、コメントに教えてもらいました」
『そうでしたか。現在五か所で発生しているのでが、そのうち二つは近場のクランで対応して頂いているのですが、どうしても残り三か所の戦力がまだ確保できていないのです。そこで……茅野さんに受けていただけないかと連絡を差し上げました。どうでしょうか? 報酬に関しての具体的なものについてはメールで送らせていただきました。確認して折り返していただけませんか?』
「ちょっと待ってください。確認しますね」
その通話をしながら、俺はメールを確認する。
確かに秋雨会長からメールが届いていて、メールの添付ファイルに詳細の報酬が書かれている。
Bランク迷宮が一つと、Cランク迷宮が二つ。合計での金額は2500万円で、さらに攻略に当たって獲得した素材のすべては俺のものにしていいそうだ。
……まあ、これなら別に問題はないか。
Bランク、Cランク迷宮なら分身たちでどうにかなるだろうしな。
「分かりました。依頼は受けようと思いますので……俺の自宅まで、車の手配をお願いできますか?」
『ありがとうございます……! 助かります! すぐに車の用意をさせますね』
「お願いします」
そこで、通話を終え、息を吐く。
報酬の適正な相場はよく分かっていないが、別に多少ぼったくられても別にいい。
相場はあとで調べればいいし、こちらとしては恩を売るつもりで多少安く対応したっていい。
そのほうが、今後の長い人生で見たときに生活しやすいだろう。
……特に、今はカトレアのことで支援してもらっている立場だしな。
電話を終えて澪奈たちのほうへと戻ると、澪奈が首を傾げてくる。
「マネージャー、どうだった?」
「さっきの、迷宮暴走の件についての話でしたね」
そう返事をしながらコメント欄を確認すると、暴走した迷宮についての話題で持ち切りだ。
〈三人ともたすけてください! 私の知り合いの近くで迷宮が暴走しているみたいです!〉
〈助けてください! 私の家の近くなんです! 今は避難してますが〉
〈お願いします!〉
「今回に関しては、自分も手が空いていたので依頼を受ける予定です。今ギルド協会に車を手配してもらってますので、それが到着しだい対応します」
「依頼はマネージャーだけでうけるの?」
「はい。というよりも、自分の分身でどうにかしてもらうつもりです」
〈え? 分身ですか?〉
〈どういうことですか!?〉
〈え? 分身で大丈夫ですか?〉
〈いや、分身で余裕だろ。ニュースみたけど、Cランク迷宮とかだろ? マネージャーのステータスの半分としても、かなり強いぞ……〉
〈この前のAランク迷宮の暴走も分身たちで押さえこんでたからな〉
〈あとは、数の暴力もあるしな。問題は移動費くらいか……〉
「移動に関しても、問題ありませんね。現地に一体だけ行けば、あとは送り込めますから」
俺はまだ公開していなかったインベントリを活用した分身の移動方法について話していくことにする。
……そのほうが、視聴者たちも心配しなくて済むだろう。
〈どういうことですか?〉
コメント欄がそんな疑問を問いかけるようなもので溢れてきたので、俺は実際に分身をインベントリから移動させてみる。
口で説明するより見てもらったほうが早いだろう。
インベントリに分身を入れ、それから別の分身から分身を取り出させる、
「こんな感じで分身のインベントリから出してもらえるので、実質ワープみたいなことができるんですよね」
最後に簡単に説明してみせると、コメント欄の伸びが爆速になっていく。
正直、目で追えないほどの盛り上がりだ。
〈へ? なにそのワープ〉
〈チートすぎるwwww〉
〈もう日本全国にマネージャーさんの分身配置してくれたらいいのにな……〉
〈ほんとそれだわ〉
〈凄すぎワロタ〉
〈一瞬じゃん……〉
〈便利すぎだろ……〉
驚愕と羨望が入り混じるコメント欄に苦笑しつつ、俺は言葉を返す。
「なので、簡単に流れを説明すると、分身たちに対応してもらって、もしも難しい場合は自分が分身を使って現地に向かう予定ではあります。とにかく、今現地に近い方は焦らず、冒険者やギルド関係者の指示に従い、避難してください」
「そうですね。気をつけて、避難してください」
俺の言葉に合わせ、澪奈も同じように伝えるとコメント欄も次第に落ち着いていく。
……まあ、避難している途中の人たちがどれだけ生放送を見てくれているかは分からないが、それでも避難所から見てくれている人もいるようだ。
部屋へと戻ってきたところで、そんなコメントを見つけた。
〈避難所で見てます……マネージャーさんの分身が来てくれるのを待ってます……〉
〈マネージャーさんの分身が来てくれるまで、耐えようと思ってます……〉
〈地元の冒険者たちも対応してくれていますが、やっぱり暴走した迷宮の魔物相手だと苦戦していますね〉
〈もうあたしの家のマネージャーさんの分身を配置してほしいです……〉
「分身も、魔力が尽きると消えてしまうので……約半日しか持たないので、さすがにずっとは難しいんですよ」
まあ、魔力が尽きる前に新しいのを用意すればいいのだが、さすがにすべてを管理するのは大変だからな……。
〈俺も会社においてほしいわ……〉
〈このマネージャーの移動手段って物流とかもヤバイよな……そもそも、【アイテムボックス】で無限にアイテム入れられるんだし〉
〈マネージャー……将来飯に困ることなさそうだよな〉
〈ほんとなんでマネージャーしてるのか分からんくらいだよな……〉
それは澪奈が輝いている姿が見たいからに決まっているだろう。
……最近は俺も目立ってしまっているので申し訳ない気持ちはあるが。
そのとき、ちょうどドアチャイムが響いた。
もしかしたら、迎えの人が来たのかもしれない。
「ちょっと、行ってきますね」
俺はそう言って生放送から離れた。
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