第152話




 やってきたギルド職員に事情を話し、三体の分身を預けた。

 あとはこの三体の分身が現地に到着次第、分身たちを派遣するだけだ。

 一度部屋に戻ると、生放送を切り上げた澪奈とカトレアがこちらを見てきた。


「悪いな二人とも……。急に生放送を打ち切るようなことさせちゃって」


 本当に申し訳がない。

 せっかく今日は新情報を出して盛り上がっていたのに、中途半端な形で終わらせることになってしまった。

 しかし、二人は気にした様子はない。


「ううん、大丈夫。でも、私は少し心配」

「心配? 何がだ?」

「今後も、マネージャーを頼ってこういう依頼が増えていきそう」


 ……それは、まあそうだな。

 俺の分身たちなら対応は簡単だし、俺を頼ろうとする人は増えてくるだろう。


「国からの依頼なら、報酬もみあってるからいいんだけどな……さすがに人助けのすべてをしろと言われたら勘弁したいな」

「さっきメールボックス確認した。確かに報酬は大金」

「そんなに多いのですか?」


 カトレアが首を傾げたので、澪奈がメール画面を見せる。

 途端、カトレアの目が大きく見開かれた。


「2500万円ですか。……どんなお菓子でも買えますね」

「大量なんて話じゃない。地方なら家も立つくらい」

「つまり、私とケースケ様の愛の巣が……?」

「私とマネージャーの家」


 そこで二人が視線をかわしていて、俺はスマホで現地の情報を集めていく。

 この二人の冗談にまともに付き合っていては疲れるからな。

 ……場所はどこも車で数時間ほどかかるようだ。

 現地まではどのように移動するのが早いんだろうな。ヘリが下りられるなら、ヘリとかが一番早く行きそうだけど。

 そんなことを考えていると再び秋雨会長から着信があった。


『茅野さん。話は聞いたのですが……仮に現地近くまでヘリで向かって、直接分身に着地させるというのは大丈夫でしょうか?』


 ……着地か。どの程度まで行けるか分からないが、やってみてもいいとは思う。


「大丈夫かは分かりませんので、飛び降りるときに念のため、分身を作ってやらせてみせます」

『分かりました。では、到着したところで連絡差し上げたほうがよろしいですかね?』

「到着したタイミングは分身から伝わりますので、大丈夫です。問題なければ三人とも飛び降りさせて、それから魔物の対応に当たってもらいますで、市民や作戦に参加する冒険者にだけ、事情を説明しておいてください」

『分かりました。よろしくお願いします』


 問題があるとすれば、恐らく現在も魔物を押さえ込むために動いている冒険者たちくらいか。

 ……見た目は影を人型にしたようなものだからな。

 魔物と見間違えられる可能性は十分にあるよな。


「とりあえず、二人は家に戻るか?」

「そうする。手が必要になったら言って」

「私もいつでも参戦します。夜のお供でも構いませんからね」

「そっちも任せて」

「アホなこと言ってないで、二人とも。家に帰りなさい」


 分身を使って二人を送り返したところで、俺は分身の量産を行っていった。



―――――――――――

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