第136話
「カトレアさん。その穴は小さくしたまま、俺たちの近くで維持できますよね?」
「はい。任せてください」
カトレアが言われたとおりに穴を作る。……これで迷宮内とほぼ同じような回線で配信が続けられるんだよな。
……さて、これが異世界だ。地球との時間差はほぼ半日くらいなので、今の時刻は午前八時くらいだろうか?
空には太陽が浮かんでいて、先ほどまで夜だった体には眩しく感じる。太陽とは別にもう一つ惑星が浮かんでいるのは、この前みた二つの月の一つだろうか?
そちらは光を放っていないので、分身に指示を出して映してもらう。
「ちょっと、皆さんが見えるかわかりませんが、この異世界にはあの謎の惑星と太陽、月があります」
〈太陽と月があるのか? もしかして、宇宙のどこかにあるのか?〉
〈重力とかはどうなんですか?〉
「ひとまず、地球と同じように動けますね。カトレアさん、あの惑星や太陽や月とかって何か知っていますか?」
「私もあくまで聞いた知識になりますけど、あのすべての星にはそれぞれの神が暮らしているそうです。夜に地上を照らす星は、魔物の惑星。昼に大地を照らす星はすべての人族の神が暮らしていると。あの昼夜問わずある惑星はそれぞれに中立的な神が暮らしている……くらいですね」
〈やっぱり異世界だけあって神様とか本当にいるのかな?〉
〈一応、地球にだって神様はいるし〉
〈この辺り、難しい問題だよなぁ。調べるにしても、異世界人に協力してもらわない限りどうしようもないだろうし〉
……まあ、そうだよな。
「まあ、難しい話は私たちはできないから。ひとまず、私たちにできる魔物との戦闘をしよう。マネージャー、魔物たちを探しに行こう」
科学者のような人たちからすれば気になることだろうけど、澪奈のいう通り俺たちにできることはこれくらいだ。
「そうですね。ひとまず、自分の分身に異世界の魔物を見てきてもらいます」
「あっ、それなら私の精霊をつけます。魔物の位置はだいたい把握できますから」
〈精霊!? いるの!?〉
〈やっぱりエルフだけあって精霊とか使うのか!?〉
〈どんな戦い方するんだ!?〉
「戦闘方法については、実際に戦ってみてもらったほうが早いと思いますよ。マネージャー様。私のほうは準備できましたよ」
「分かりました」
カトレアが盛り上がるコメントにそう返しつつ、俺は【軍勢】を使用し、分身を六体作る。
すぐにカトレアが俺の分身の一体に片手を当てると、俺の肩に小さく光る何かが生まれた。
それが精霊だろう。
「それじゃあ、皆。相手の戦闘能力の調査を頼むぞ」
「……」
分身たちが頷いて、森のほうへと走り出す。
……あとは、彼らがどれだけ通用するかだな。
「とりあえず、分身さんたちの返事があるまで、私の家でも案内しましょうか?」
「……そうですね。お願いします」
「はい。任せてください」
カトレアがとんと胸を叩くと、ぽよよんと揺れる。
……コメント欄がそれで大きく盛り上がったのは、見なかったことにしよう。
「ここが、私の暮らしていた家ですね」
カトレアはカメラへと顔を向けながら、慣れた様子で大きな家を指さした。
森の中、家を建てるためにとばかりに開かれたここには、大きな木造の一軒家があった。
カトレアの案内する動きはアナウンサーのようにも似ていて、カトレアが目覚めてからの知識の獲得が伺える。
俺と澪奈はどちらかというとカトレアについていくほうを優先し、カトレアに案内を任せていく。
〈カトレアちゃんの家の周りに結界みたいなのあるけど?〉
〈異世界の家って皆こんな感じなの?〉
「カトレア、結界について質問がきてる」
「あっ、そうでした。私の家の周りには両親が残してくれた結界があるのですが……私、結界の管理が苦手でして結界は壊れる寸前なんですよね。それで一刻も早く森を出るためにとあれこれ試行錯誤している間に、異世界にたどり着いたというわけです」
〈あれこれ試行錯誤してた結果がここに繋がってるの草〉
〈まあでも移動魔法みたいなのを使うためと考えたら多少は納得できるか?〉
〈結界が壊れる寸前ってことは今かなり危険な状況なんですか?〉
〈今はどこで暮らしてるの?〉
「そうですね。もう結界はほとんど意味をなしていませんね。今はレーナ様の家に居候させてもらっています」
「最近夜遅くにお菓子食べながら話したりしてるせいで、カトレアの体重は微増中」
「わ、私の体重を勝手に公開しないでください」
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