第73話
〈迷宮から出られないってやばくない!?〉
〈ていうか、迷宮から出られない可能性があるって……今後別の迷宮とかでもありえないか!?〉
〈前代未聞すぎる……迷宮って自由に出入りできるから安全って各国で言われているんだぞ?〉
「……そうですよね。ただ、状況的にキングワーウルフを討伐したら、どうにかなるかもしれませんが……」
さっきの声が視聴者には聞こえていないが、生放送開始前と今での違いはそのくらいなので、俺の言葉に納得のコメントもある。
〈確かに……〉
〈でも、じゃあ一人で攻略しないといけないってことか!?〉
〈食料とかどうするんですか?〉
〈睡眠含めて全部中でしないとだろ? 大変すぎないか!?〉
〈……中から外に出られないみたいだけど、外から中はどうなんだろう? 最悪澪奈ちゃんとかに食料だけでも入れてもらえば……〉
それは、どうなんだろうか?
食料に関してはそもそも問題ないんだよな。
スーパーなどで買い物した品物のほとんどを今はインベントリで管理している。
コンビニ弁当とかもいくつかあるので、まあ一週間くらいは問題なく生活できると思う。
問題はどちらかというと睡眠のほうか。
……ここが魔物が自由に行き来する迷宮なので、安全に寝られる場所がないんだよな。
〈マネージャーさんは誰か来てくれそうな人いるのか?〉
「……家族以外だと澪奈さんくらいですかね? 友人もいるにはいますが、仮に来てくれたとしても……って感じですね」
〈もうこれ依頼だしていい案件だと思うけど……キングワーウルフの討伐が必要になると大手クランとかに頼むしかないよな。Aランク、Bランク冒険者を用意しないとだから……どっちみち到着に時間かかるしな……〉
「そう、ですね」
……やはり、討伐するのが手っ取り早いだろう。
そう思っていると、澪奈から着信が入った。
「澪奈さん? どうしたんですか?」
『とりあえず、様子を見に向かう』
「……分かりました。お願いします」
通話を切ってから、生放送へと戻る。
〈澪奈ちゃん? どうしたの?〉
「生放送見ていてくれたみたいで、様子を見に来てくれるそうです」
〈それでどうにかなればいいですけど……大丈夫ですかね〉
「……そうですね。とりあえず、澪奈さんがくるまでは暇なので、ワーウルフたちと戦って時間潰してます」
経験値も稼げるし、とかそんなことを考えているとコメント欄にも少し笑いが生まれていた。
〈ワーウルフとの戦闘が休憩扱いで草〉
〈気楽ですねw〉
〈マネージャーさんが死んだら本当に悲しいので、どうかお気を付けください〉
澪奈がここに来るまで二十分くらいだろう。
俺は周囲にいるワーウルフたちを倒しながら、時間を潰す。
……キングワーウルフも、どうやら移動できるエリアが決まっているようだ。
さすがに、あいつがこっちまで来たら今ほどのんきにはできないからな。
最悪俺がキングワーウルフを討伐する必要があるのだが、手段を選ばなければなんとかできるとは思う。
今インベントリにある素材を売りまくり、装備をいくつか更新。
回復アイテムを大量に購入し、回復連打での特攻だ。
ただ、リスクがないわけではない。一撃で死ぬような攻撃を食らえばどうしようもないからな……。
もちろん、撮影したままでは無理なので、生放送も停止する必要がある。
しばらくワーウルフを倒していると、二時間くらい経ったころ、再び着信が入った。
『マネージャー。今黒い渦の前に来てるけど、こっちからは入れそう』
「……そうなんですか?」
『うん。試しに手を通してみたけど、入ることはできるみたい』
「……なるほど。それでしたら――」
最悪、食料などを送ってもらって迷宮攻略を出せばいいか?
そう思っていたのだが、澪奈が現れた。
「というわけで、入ってきた」
「澪奈さん!?」
澪奈はカバンを持ってこちらへと入ってきていた。
〈え? はいれるの!?〉
〈ていうか、なんで入ってきてるの!?〉
「私たちで討伐できそうなら、このまま討伐しちゃったほうが早いと思って。マネージャーも、さすがに寝ずに夜を過ごすのは大変」
「……まあ、それはそうですけど」
「大丈夫。鍵はお父さんに預けてきたから。最悪、二人で挑んで無理だったら討伐依頼を出してもらう予定。とりあえず、キングワーウルフの討伐作戦を立てるから、一度生放送は終了ってことで」
「……分かりました。それではすみません。いろいろバタバタしましたが、一度ここで中断して澪奈さんと今後について話し合おうと思います」
〈分かりました。心配なのですぐに再開してくださいね!〉
〈本当、気をつけてください……!〉
〈お二人が無事帰還することを祈ってます……〉
一応スパチャも読み上げてから、生放送は一度中断した。
―――――――――――
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!
『楽しかった!』 『続きが気になる!』という方は【☆☆☆】や【ブクマ】をしていただけると嬉しいです!
ランキングに影響があり、作者のモチベーションの一つになりますのでよろしくお願いします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます