第121話




 テレビをつけてみると、新宿周辺の魔物たちはひとまず完全にいなくなり、安全も確保されたことが報道されている。

 ……俺の【軍勢】が魔物たちを一方的に仕留める映像も公開されまくっていた。

 どうやら、街中にある監視カメラなどにも映っていたようだ。


 それらの映像はすぐにMeiQubeにも違法転載されていて……まあ、澪奈のチャンネルの宣伝事態にはなるから俺は見て見ぬふりをさせてもらおう。


 俺自身も改めて【軍勢】の戦闘能力をそのカメラで確認するが……抜群の連携だな。

 三人一組で確実に魔物を仕留めていて、まるでそれぞれが意思疎通が取れているかのように動いている。


 ……それもそうか。全員俺の分身なんだから、きっと通話のようなものができるのだろう。


 こう考えると、【軍勢】は非常に便利だな。

 今後、遠出の迷宮攻略に【軍勢】だけを派遣させることもできるだろうし、何なら……カメラマンに使えるじゃないか。

 これでより澪奈を完璧に撮影することもできるはずだ。


 そんなことを考えているとちょうど澪奈から連絡がきた。


『マネージャー、学校終わったー』

「そうか。お疲れ様」

『……それと、テレビ、見た。【軍勢】のスキル凄すぎない?』

「あれ、便利だな……。ショップにあるし、澪奈も買うか?」

『いくら?』

「……1000万ゴールドだな」

『さすがに、まだ高い』

「でも、一応今回の新宿の魔物掃討と迷宮攻略の報酬は俺のところで2000万円だったぞ?」

『……え? そ、そんなに?』

「まあ、今回はギルド協会から和心クラン、そして俺たちにって感じだったから報酬は少なかったみたいだけどな」


 依頼の流れとしてはそんな感じだそうだ。

 魔物討伐にあたって得た素材などはすべて懐に入れていい、という契約になっている代わりに、その他経費はすべて自己負担という扱いだそうだ。


『下請けみたいな感じ?』

「そうそう。Bランク迷宮と暴走ってところで考慮すると和心クランには5000万円くらいで依頼が出されているんだと思うけど……全国から動ける高ランク冒険者集めて、ずっと警備させてたんだからそのくらいの金額でも物足りないかもしれないよな」


 下手をすれば、とんとんくらいになってしまうのではないだろうか?


 今回の和心クランの攻略に関してみてても思うが、結界を維持する人間、いざというときの戦闘要員、待機要員、交代要員と……あの場にいたクランメンバーは百人を超えていたしな。


『そういえば、以前冒険者の記事で見たことある。日本の迷宮攻略の報酬は少なすぎるって』

「あっ、それ俺も同じやつみたかも。確か、命をかけたのに五十万くらいの利益しかなかったみたいな」

『たぶん同じやつ。もしかして、私たちの愛ゆえに以心伝心?』

「いや、そもそもそれって澪奈が見せてきたんじゃなかったっけ?」

『愛の力って偉大。海外だと報酬金額も大きいから、日本の優秀な冒険者はだいたいみんな海外に出ていくって』

「らしいな」

『マネージャーは海外志向はある?』

「いやないな」

『それは愛国心ゆえ?』

「俺英語喋れない」

『私も』


 お互い笑いあってから、澪奈に問いかける。


「じゃあ澪奈も特に海外に行くつもりはないのか? 今、めちゃくちゃ海外クランとか、なんなら国からの契約の依頼が来てるんだけど……報酬も数十億とかだけど、受けるつもりあるか?」


 それこそ、どこの国からも日本円で億を超えるほどの報酬が提示されている。

 一流のサッカー選手か野球選手の金額を遥かに超えた額が提示されていて、正直現実味がまるでなかった。


『私は特にないかな……別にもう今くらいの稼ぎで十分だし。それより、自由にやれないほうが嫌』

「同意見だ」


 そもそも日本のほうが落ち着くからなぁ。

 海外だと日本食も自由に食べられないだろうしな。

 いやまあ、これだけの提示をしているのだから環境面も好待遇にしてくれるかもしれないが、それでもやはり日本のほうが俺は落ち着くな。

 なんといっても治安がいいし。


「そういえば、エルフの子――カトレアの調子はどうだ?」

『まだ目を覚まさないみたい』

「そうか。早く話をしたいんだけどな……」

『マネージャー、浮気はダメ』

「そもそも今付き合ってる人もいないんだけど……」

『記憶喪失?』

「どっちがだ?」

『マネージャーは、カトレアは何者だと思う?』

「超凝ったコスプレをした一般人か、異世界人か、迷宮の魔物かって話だよな?」

『うん。ネットでは、私たちのファンがコスプレして迷宮に忍び込んだ説もある』

「……だったら、いいんだけどな。でも――俺は異世界人か迷宮の魔物なんじゃないかって思ってるよ」

『耳、本物だったしね』

「そうだな」

『柔らかかった……』

「そうだな」

『むっ、やっぱり浮だ』


 じとっとした声が返ってくる。

 ……そういえば、カトレアの耳を触ったときの澪奈も鋭い目をしていたな。




―――――――――――

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