第61話
「いました。魔物ですね。とりあえず、戦闘を行いますの、三脚に固定して……では行ってきます」
橋本さんからもらった三脚にスマホを設置し、カメラの位置を調整してからパワーワーウルフへと向かう。
……もう何度も戦っているからな。動きはだいたい分かっている。
俺が近距離でかわしながら攻撃をしていくと、途中で苛立った様子にタックルをしてくる。
背中か、あるいは肩をぶつけてくる攻撃をかわし、懐に入り上体を浮かせるように殴りつけ、回し蹴りで仕留める。
パワーワーウルフの腹に靴跡が残る程の威力が出せることに密かに満足しながら、素材を回収してポケットにしまう。
そして、戻ってきてスマホを手にした俺は、一度声を発する。
「ちょっとコメント遡って確認しますね」
俺がパワーワーウルフを発見したところから、コメントを遡ってみる。
〈おいこいつ!〉
〈パワーワーウルフじゃねぇか!?〉
〈あれって確かCランク迷宮以上で出る魔物だぞ!〉
〈マネージャー、危険ですよ!〉
〈……あっ、行っちゃった。大丈夫なのか?〉
〈大丈夫、だと思いたいが……それにしても、Dランク迷宮の判定を受けたのに、Cランクのエリアがあるって……これ詐欺にもほどがある迷宮だぞ〉
〈こういった形式の迷宮は、もしかしたら今後もこんな造りの可能性があるよな。気を付けないとな……〉
〈……パワーワーウルフとマネージャーが戦い始めたぞ〉
〈攻撃全然通じてない? 苦戦してるのか?〉
〈いや、これ、たぶん倒すための攻撃じゃないぞ〉
〈うん。マネージャーの攻撃力ってもっと高かったからな〉
〈ってタックル!? あぶな! あのがたいでタックルとか回避きついな……〉
〈……パワーワーウルフの倒し方は前衛のタンクに攻撃を集中させて、その間に魔法をぶつけまくるのが鉄板だ。物理攻撃はほとんど通らないからな〉
〈あのタックルをどうにかタンクが受ける必要があるんだよな。盾もなしにくらったら大怪我だな〉
〈マネージャー、普通に速度について行っているけど、これって普通じゃないの?〉
〈まったく普通じゃないぞ……Cランクの魔物を対面でいなしている時点でバケモン〉
〈って! 殴って浮かせやがったwww〉
〈うっそだろw〉
〈パワーワーウルフが何キロあると思ってんだよwww〉
〈そして蹴りまで鮮やかすぎんだろ……〉
〈……ええ。なにあの威力……〉
〈あの巨体吹き飛ばすって……バケモンすぎる〉
……という感じらしい。
なんか気づけばスパチャが物凄い飛んでいる。
……ていうか、視聴者に外国人がやたらと多いな。
切り抜きでもそうだったが、外国人のコメントが結構ついているんだよな。
俺の格闘での戦闘がかなり海外ではウケているみたいなんだよなぁ。
視聴者も30000人を超えている。
マジで? プレッシャーで潰されそうなんだけど……。
「ま、まあこんな感じですね。一応、荒地エリアの全体はまだ見ていませんが、ここにいる魔物なら戦えるのが分かっていたので、安心してください。っと、またこっちに来てますね」
〈分かるんですか!?〉
〈索敵系のスキル持ってるんですか!?〉
「索敵に関しては、長く迷宮にいたからか……何となくわかるんですよね。澪奈さんもなんとなくわかるっていっていましたよ」
〈ヤバwww〉
〈感知って後から習得できるのか!?〉
〈できん。この二人の場合参考にならん……〉
〈初心者冒険者ですけど、二人に憧れて冒険者始めました! 索敵ってどうやって習得すればいいんですか??〉
〈初心者は初心者向けの動画に行ったほうがいいぞ、マジで〉
なんか話している途中でコメントが流れていたので、澪奈をまきこむことにした。
〈天才たちの考えることは分からんがさっきの戦闘気持ち良かったな!〉
〈また戦闘画面、お願いします!〉
「……そうですね。そろそろこちらに来るみたいなので、準備しますね」
また同じように設置し、こちらに迫ってきているワーウルフとパワーワーウルフの二体を迎え撃つ。
二体いると、多少苦戦はするが、先にワーウルフを仕留め、それからパワーワーウルフを仕留めるだけだ。
……さくっと仕留めて戻ってくると、何か視聴者が50000人を超えていた。
「……は? 何どうなってるんですか?」
〈なんか海外の日本語が分かる冒険者がミラー配信で解説しているみたいですよ〉
〈その方がマネージャーのファンみたいでいかに凄いかを熱心に語ってますね〉
〈なんか海外のほうでバズってるみたいですよ。さすがに海外でも身一つで戦う冒険者いませんし……〉
「……ええ」
そんなに【格闘術】が理由で注目を集めるとは思っていなかった……。
驚きながらも、俺は本来の目的である荒地エリアの解説を行っていく。
規模は草原エリアと変わらない。
そして、荒地エリアにも一か所魔法陣があり、そこからワーウルフとパワーワーウルフが出現している、という具合だ。
「……エリアは、こんな感じになっていますね。これでロケハンはほぼ終了となりますね」
〈お疲れさまでした……〉
〈なんかめっちゃ濃い時間だったな……〉
〈ていうか、ほんとマネージャーつよすぎない?〉
〈普通に冒険者で生計立てていけるでしょ〉
〈マネージャーじゃなくてもいいよな? ぶっちゃけ〉
「澪奈さんをこの道にスカウトしたのは俺なので、そこは最後まで責任を持つつもりなんですよ。さて、最後にスパチャ読み上げていきますね」
これを俺がやったことはないので、結構恥ずかしい。
毎度頭を下げながら、読み上げていったのだが、読み上げている途中から送り込まれてくるから大変だった……。
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