第72話
「ガアア!!」
咆哮をあげるとともに、キングワーウルフが突進してきた。
速いっ!?
俺はスマホを胸ポケットにしまいながら、拳を振りぬく。
キングワーウルフが即座にかわしたが、その動きは読めていた。回し蹴りを放ったが、キングワーウルフは俺の蹴りを無視するように肩で突進してきた。
「くそっ!」
すかさず足を引き、キングワーウルフの突進に合わせて後ろに跳躍する。
攻撃は、かわしきれない。
キングワーウルフの体にぶつかり、全身の骨が軋むような痛みに襲われたが、それでも直撃する前に自ら後ろに跳んだことですべてのダメージをもらうことは避けられた。
「……いってぇ」
それでも、鈍い痛みが体の内部から伝わる。
キングワーウルフは笑みを浮かべたあと、咆哮を上げた。
「ガアアア!」
……その瞬間、キングワーウルフの体に雷がまとわれ、ステータスが跳ねあがった。
キングワーウルフ レベル45 筋力:184 体力:183 速度:196 魔法力:81 器用:132 精神:140 運:70
ステータスポイント:0
スキル:【格闘術】【雷迅】
装備:なし
……スキルか!
恐らくは【雷迅】だ。……速度を一定数値あげる、って感じか?
どちらにせよ、最悪だ。
突っ込んできたキングワーウルフを見据え、俺はその攻撃を後方に跳んでかわす。
……【格闘術】のランクは俺のほうが上だと思う。
だが、それ以外の部分でキングワーウルフは俺を凌駕している。
数回攻撃をかわすことはできても、結局ステータスの差でスキルランクの力が覆される。
ここは、逃げるしかない……。
キングワーウルフが俺の顔を狙って両腕を振り回してきたその瞬間に合わせ、俺は両指で石を弾いた。
「があ!?」
俺の【石投げ】は、キングワーウルフの両目を捉えた。
怯んだキングワーウルフが顔を覆いながら周囲へ拳を振りぬく。
しかし、俺はその隙に荒地エリアへと向かい、そこもあっという間に通過して草原エリアへと戻った。
そこまで戻ったところで、俺はスマホを確認する。
見ると、視聴者が70000人まで伸びていて、コメント欄には心配する声がいくつも並んでいた。
……とりあえず、言葉を返そうか。
「皆さん、すみません。心配をかけてしまって。とりあえず、逃げ切れましたので報告します」
〈良かった……〉
〈戦闘見てました……! あれキングワーウルフですよ! C、Bランク迷宮とかのボスモンスターですから、普通に相手するとしたらBランク冒険者数名は必要な相手ですよ!〉
「そうなんですね……。すみません、ちょっと傷の治療を行いますのでスマホ置きますね」
……俺はそう前置きをしてから、1万ゴールドで購入できる回復アイテムを購入し、自分に使用する。
玉が砕けると俺の体を柔らかな光が包み、傷が一瞬で全快した。
……始めの頃は1万ゴールドだと高い気がしていたが、今はこのくらい問題ないな。
体が問題なく動くのを確認してから、もう一度スマホを手に取った。
「とにかく、澪奈さんと一緒のときに奥地行かなくて正解でした。……とりあえず今日はこのまま脱出しようと思います」
〈お疲れ様でした……!〉
〈ボスモンスターの討伐、難しいと思いますが期待しています!〉
〈あの咄嗟の判断でよく逃亡できましたね……普通に全滅レベルですよ〉
〈マジで逃げて正解。キングワーウルフの自己強化スキルを持っているやつはBランク迷宮のボスとかレベルだから……まずソロでの攻略はほぼ不可能〉
〈ていうか、ボスモンスターが突然空から湧いてくるって、ほんとこの迷宮例外が多いですね……お疲れ様でした!〉
〈こういった迷宮の場合、最奥に挑む際はよく準備してからのほうがいいですね……お疲れです!〉
俺もコメント欄を確認しながら、そろそろスパチャでも読み上げるかぁ……なんて思って黒い渦へと向かって歩き出すと――
「……いって!?」
ばちん! という音とともに黒い渦の入口に弾かれた。
思わず尻もちをついてしまい、俺がその体勢のまま黒い渦を見上げる。
……何か、見えない壁のようなものがあった。
そして、同時に脳内に響く音声。
【ミッション中。ミッションの攻略を終えるまではエリアから離れることはできません】
「……どうやら、出られなくなったようです」
俺は不思議な声が伝えてきた事実を伝えるように、スマホに向けてそういった。
―――――――――――
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