第71話
俺たちのほうを見て、何かに気づいたような顔をする人もいれば、首をかしげている人と反応は様々だ。
「……え? は、はいそうですけど」
ここで否定するというのも変なので、俺はひとまず頷いた。
……というか、俺は名前を公開していないのでマネージャーという呼ばれ方をするんだなぁ、とか思っていると、
「あ、す、すみません……MeiQubeでよく見ていまして……ファンだったのでつい。申し訳ございません、席に案内しますね」
「は、はい」
店員は赤くなった顔を俯かせながら店内へと案内していく。
澪奈とともに席へとつき、メニュー表を受け取る。
……周囲の目が気になる。
こちらを伺うような視線が多くあり、それは俺に向いてから澪奈にも向く。
澪奈が帽子をとると、周囲のざわつきもさらに増していく。
今朝にチャンネル登録者が六十万人を超えていたが、決して大人気チャンネルというわけではないと思う。
それでも、このお店が比較的若い子が多いのと、自分たちのチャンネルの視聴者が若い子が多いのが合致していたのだろう。
あとは、わりとテレビなどでも報道されているからだろうか。
『スピードフォーク』の問題発言に合わせ、澪奈や俺のことがちょこちょことテレビで話題になっている。
……それで注目を集めているのかもしれない。
「マネージャーも今後は変装したほうがいいかも」
「……そうなのかねぇ」
でも、スーツとかに帽子、サングラスを身に着けると怪しさが増すのではないだろうか。
そんなことを考えながら、俺は澪奈との昼食を頂いていった。
……会計をして店を出たところで、ファンたちに囲まれるようにして声をかけられてしまい、俺も変装の必要があるのではと思い始めていた。
ただ、土曜日に社長の暴走気味の発言があったが、あれの影響は特にないようなので、その点に関してはほっとしていた。
水曜日になり、俺はロケハン生放送を行っていた。
前回と同じように荒地エリアの先の調査だ。
生放送はすでに開始していて、視聴者は20000人を超えていた。
〈ロケハン久しぶりです。そういえば例の社長さん、警察のほうも動いているみたいですね〉
〈ほんと、迷惑な話ですよね。澪奈さんがすぐに生放送を実行してくれてよかったです……〉
〈ネットの恐ろしいところですよね。嘘でも言ったもんがちみたいな……〉
「それはそうですね。警察のほうでどのような決断を出すかはわかりませんが、我々も訴える予定ではありますが、そちらは澪奈さんの父親が弁護士に相談していて、主にそちらで対応していただくことになっていますね」
〈お父様か〉
〈そりゃあ家族もお怒りだろうな……マネージャーは大丈夫でしたか?〉
「ええ、まあ澪奈さんがこういった活動をするときに何度か挨拶はしていたので、誤解されることなく対応していただきましたよ」
……まだやはりこの前の社長の発言を気にするコメントもあるので、俺ができる限りフォローを入れていく。
これは澪奈ではなく俺の仕事だろう。
コメントと会話しながら歩いていく。荒地エリアの先は最初の草原エリアと似たような作りをしている。
出現する魔物は……見当たらない。
しばらく歩きながら、隅から隅まで歩いていく。
「魔物、いませんね」
〈まったく魔物いないな〉
〈魔物が出現する例の魔法陣もありませんね?〉
〈もしかして、これで迷宮終わりか?〉
「だとしたら、ボスモンスターがいないんですよね。……どうやって攻略完了になるんですかね」
〈魔物を一定数倒すとか?〉
〈魔法陣に何か仕掛けがあるとかですかね?〉
……うーんどうなんだろうな。
コメント欄に意見をもらいながら、俺は草原エリアを歩いていく。
本当に隅から隅まで歩いていったときだった。
俺の脳内に、無機質な声が響いた。
【――迷宮内の探索率が100%になりました。これより、ミッションが開始されます】
……ミッション、だと?
俺が眉間を寄せながら、周囲を眺めていると、
【ミッションが追加されます。ボスモンスター、キングワーウルフの討伐を行ってください】
……ボスモンスター?
俺が慌ててすぐに周囲へ視線を向けた瞬間、空から影が落ちてきた。
そして、目の前に現れた魔物は……これまでの二体のワーウルフたちよりも一回り大きなワーウルフだ。
見た目はパワーワーウルフに酷似している。
ただ、その迫力はパワーワーウルフを圧倒していた。
……何より、キングを示すかのように頭上には一つの王冠が被られており――。
キングワーウルフ レベル45 筋力:184 体力:183 速度:151 魔法力:81 器用:132 精神:140 運:70
ステータスポイント:0
スキル:【格闘術】【雷迅】
装備:なし
最悪なのは、そのステータス。
速度が、俺よりも速い……!
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