第十話 八百長騎手追放ゲーム⑩

 俺たちはナゾナゾ博士に誘われ、八百長騎手追放ゲームと言う人狼をモチーフにしたゲームで遊ぶことになった。


 ゲームを開始後、俺は村人である騎手となり、人狼である八百長騎手は3人居るらしい。


 1ターン目は何故か一言も発言をしていない魚華ウオッカが追放され、夜のターンでは周滝音アグネスタキオンが追放された。


 2ターン目は兜城カブトシローを追放することになった。しかし兜城カブトシローは1ターン目で裁決委員を名乗っている。


 彼の他にも貴婦人ジェンティルドンナ生徒会長とルドルフさんが裁決委員を名乗っている。夜のターンとなったがこのターンは誰も追放されることがなかった。きっと騎乗依頼仲介者が守ってくれたのだろう。


 3ターン目は貴婦人ジェンティルドンナ生徒会長とルドルフさんがナゾナゾ博士は八百長騎手であることを告げたので、俺たちはナゾナゾ博士を追放する。


 そして夜のターンとなり、追放した人物がどっちサイドの人間だったのかを知ることができる能力を持つトラックマンの明日屯麻茶无アストンマーチャンが追放されていた。


 4ターン目、内巣自然ナイスネイチャ大和主流ダイワメジャーが白確である遅刻騎手であることが分かった。4ターン目の結果は議論の最中にヘイトを集めてしまったルドルフさんが追放されることになったが、彼は土下座を使用し、彼は追放されずに済んだ。


 5ターン目、貴婦人ジェンティルドンナ生徒会長と大和主流ダイワメジャーが消えていた。八百長騎手に追放されてしまったようだ。


 6ターン目、話し合いの結果、投票で1番人気となったのは俺とクロと言う結果となり、決勝投票が行われることになる。決戦投票の議論の結果、大和鮮赤ダイワスカーレットの指摘がきっかけとなり、クロが追放される。


 そして夜のターンとなり、内巣自然ナイスネイチャが八百長騎に追放されてしまった。


 残っているのは俺、大和鮮赤ダイワスカーレット大気釈迦流エアシャカール、ルドルフさん、袖無衣装ロープデコルデの計5名だ。


「残り5人まで減ってしまったな」


 残ったメンバーを見ながら、ポツリと言葉を吐く。俺の予想では、後1人八百長騎手を追放すればゲームクリアだと思っている。


 白確なのは袖無衣装ロープデコルデだけ。大和鮮赤ダイワスカーレット大気釈迦流エアシャカール、そしてルドルフさんの中に八百長騎手がいることになる。


『では、今回ワシの調査結果を発表しよう。大気釈迦流エアシャカールは黒だ。こいつを追放すれば、ワシたちの勝ちだ』


「そうか。まぁ、お前の虚言など信じてはいないから好きなだけ言うが良い。俺からもひとつ言わせてくれ。このターンが最も重要なターンだ。今回の議論の結果で、どの陣営が勝つのかが決まると言っても過言ではない」


 黒出しをされている中、乱れることなく、堂々とした振る舞いで大気釈迦流エアシャカールは語り出す。


 そんな彼の言葉に少し驚く。


 だって残っているメンバーは5名だ。仮に八百長騎手を追放できなかった場合、夜のターンも減ったと仮定して残り3名だ。八百長騎手の勝利条件は、騎手サイドと同数になれば勝ちとなる。


『どう言うことだ? このターンで勝敗が決まるとは思えないのだが?』


 俺の言葉を代弁するかのように、ルドルフさんが尋ねる。


「これまでの議論の中で何回か話題に上がっているヤクザだ。俺はヤクザはまだ追放されていないと考えている」


 ヤクザ、それは八百長騎手でも、騎手でもない第三陣営だ。騎手と八百長騎手との勝負に決着が付いた時、追放されずに生き残っていた場合、ヤクザの勝利となる。


「そうか。このターンでヤクザを追放できなければ、ヤクザの勝利となってしまう」


「さすが東海帝王トウカイテイオウ、気付いたか。そうだ。夜のターンも含めて騎手サイドの2名が追放されてしまった場合、残りは騎手サイド1名、八百長騎手1名、ヤクザ1名となる。八百長騎手の勝利条件は騎手サイドの人間と同数になること。だが、この時点でヤクザが残っているので勝利を奪われることになる」


 珍しく大気釈迦流エアシャカールが俺のことを褒めると、大和鮮赤ダイワスカーレットが納得したかのように言葉を漏らす。


「なるほどね。仮に騎手サイドが八百長騎手を追放できたとしても、ヤクザの勝利条件は決着が付いた段階で追放されずに生き残っていた場合はヤクザの勝利となる。確かに、ヤクザが生き残っていると仮定すれば、このターンでヤクザと思われる人物を追放した方が良さそうだわ」


「俺の中で一番ヤクザの可能性が高いのはルドルフだ。ヤクザが生き残るには重要な役職を名乗っていた方が狙われにくい。仮に夜のターンで襲われたとしても、夜のターンでヤクザは追放されないと言う特殊効果を持っている。役職を騙る、これほどヤクザに取って好条件な隠れ蓑はない」


 確かにルドルフさんはヤクザの可能性はある。でも、彼は俺のことを白出ししている。


『ほう、ワシを追放しようと言うのか? だがワシには伝家の宝刀『土下座』がある。追放しようとしても失敗するかもしれないぞ』


「吠えたければ吠えれば良いさ。どっちにしてもこのターンでお前を追放できなければ負けてしまう。なら、賭けに出るのがギャンブルに携わっている者の取るべき手段だ。可能性は低くとも、大穴を当てた時ほど快感はでかい」


 思考を巡らせて考えている中、大気釈迦流エアシャカールとルドルフさんは互いに言い合いをしている。


 本当にルドルフさんを追放してみても良いのか? 一度考えたほうが良さそうだ。


 彼はこれまで俺と袖無衣装ロープデコルデは白と言って言い当てている。その他に彼が調べた人物は貴婦人ジェンティルドンナ生徒会長を白と言い、クロも白と言っている。そしてナゾナゾ博士は黒出しして当ててはいるな。そして最後に大気釈迦流エアシャカールを黒だと言っている。


 あ、クロを白出ししている! クロは嘘を付いており、八百長騎手であることを俺は直感のスキルで見破っていた。そのクロを白出ししていると言うことは、ルドルフさんは真の裁決委員ではない!


 そうなると、ルドルフさんがヤクザで間違いないと見て良さそうだ。でも、彼には土下座がある。再び使用されればまた生き残られるリスクがあり、彼の勝利に一歩近づくことになる。


 でも、さっき大気釈迦流エアシャカールが言ったみたいに、ここで勝負に出なければ負けてしまうのも事実だ。


 ここは俺も勝負に出るしかない。ひよって他の人に入れても、それは負けに自ら近付くことと同じだ。


 議論終了のファンファーレが鳴り、俺はルドルフさんに投票をする。その結果、追放すべき人物として1番人気にルドルフさんがなった。


『そうか。ワシが追放されてしまうのか。だがな、ワシにはこれがある! スキル発動! 土下座!』


 ルドルフさんが土下座を発動、ここから先は俺たちの方の運が上か、ルドルフさんの運が上かの勝負だ。


 心臓の鼓動が早鐘を打つ中、俺は結果を見守る。その結果、ルドルフさんは追放されることになった。


 結果を知った俺は安堵の息を吐く。これでヤクザの危機は去った。後は八百長騎手を見つけ出してそいつを追放することができれば勝ちだ。


 夜のターンとなり、役職持ちが行動に移る。


 1分が経過して昼のターンになると、大和鮮赤ダイワスカーレットの姿はどこにもなかった。


 まじか。と言うことは、残りの八百長騎手は大気釈迦流エアシャカールと言うことになる。


 残っている袖無衣装ロープデコルデは白確。つまり、俺か大気釈迦流エアシャカールが、彼女を口説き落とせた方の勝利となってしまう。

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