第十五話 皐月賞のジンクス
「それじゃ、皐月賞の説明を始めるね。皐月賞は、弥生賞と同じで、中山競馬場を走るの。しかも、コースは全く同じよ。同じコースを走るから、弥生賞は皐月賞の前哨戦とも言われているわ」
皐月賞の前振りをしながら、クロはタブレットを操作する。すると、空中ディスプレイが表示され、中山競馬場のコースが移り出す。
「前回中山競馬場の説明はしているから、軽くおさらいをするわね。弥生賞と同じで、皐月賞のスタート位置は、
指差し棒を使い、クロがコース全体の説明をする。
『今回はきっと楽勝だよね! だって、帝王は一度このコースを経験しているんだよ! 同じコースで負ける訳がないもん!』
自身満々にハルウララは答える。だが、彼女の言葉を聞き、クロと
「ハルウララのように、単純に考えられたら良いのだけどね。でも、弥生賞は皐月賞と同じようで、ちょっと違うのよ」
「
『ええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇ! それじゃ! トウカイテイオーは負けるじゃない! 帝王の無敗伝説もここまでか!』
クロの言う隠されたジンクスを聞いた瞬間、ハルウララは驚愕した。前足を口の端に持って行っているところを見るに、頬を押さえているのを表現しているのだろう。
『なんで、なんで! どうして帝王が負けるの! 私の騎手に負けるのは許さないんだから!』
「安心して、一応アグネスタキオンとか、ジンクスを打ち破っている名馬も存在しているから」
「アグネスタキオンの話はやめてよ。あの男を思い出すじゃない」
アグネスタキオンの名前が出たことで、
「どうして、同じコースなのに勝てないのか、それにはちゃんとした理由が存在しているのよ。いくつかあるのだけど、そのひとつが疲労ね。弥生賞は皐月賞の前哨戦とも言われているため、有力馬が集まりやすいのよ。だから勝つために全力を出し過ぎて、本番の皐月賞で疲労が取れずに、力を発揮できず、最終的に負けてしまうの」
『でも、霊馬となった今は、関係ないじゃない!』
「確かにそうだけど、一応知識として知っておいた方が良いかと思って」
ハルウララのツッコミに苦笑いを浮かべながら、クロは答える。
「次は、論理的な話をしましょうか。さっき、皐月賞は有力馬が集まりやすいって言ったけれど、小頭数で行われるケースが多いの。そのため、ゆったりとした走りになりやすく、差し馬が目立ちやすいのよ。そして、皐月賞の場合、中山競馬場が2開催使用の最終日と言うこともあって、馬場状態が悪く、内側の仮柵が取り外されているの。だから先行馬が圧倒的に有利な条件となってしまい、差し馬が不発に終わるケースが多いのよ。これが弥生賞で勝った馬が、皐月賞には勝てないと言うジンクスの理論ね。VR競馬場は、その辺りも再現されてあるから、ジンクスの効果も出ているはずだわ」
『なんだ。それならなんとかなりそうだね。トウカイテイオーは先行馬だし、力もあるだろうし』
ハルウララが安堵の言葉を漏らす。だが、現実はそうは甘くないはずだ。前回の弥生賞はランダムで選ばれた。そのため、クロが言った有力馬の出走は当てはまらない。
そして今回のレースは、俺が知っているだけでも、クラシック二冠を達成したエアシャカールとゴールドシップと言う名馬が出走している。いくら先行馬が有利だとしても、簡単には勝たせてくれないはずだ。
「後は、共同通信杯からの直行は3着になるとか。1枠1番は勝てないとか、色々なジンクスが存在しているわね」
『へー、そんなジンクスもあるんだ。運が悪いと抽選での枠番から負けが決まっているなんて、残酷だね』
「1枠1番は勝てないと言うジンクスを正確に言うと、3枠よりも内側の馬からは、優勝馬で出ていないのよ。ハプニングが続いていた年だったのだけど、1999年の第59回では、ワンダーファングが出走前にゲート内で外傷を負って競走除外に、そして2000年の第60回では、ラガーレクルスがゲートが開いたと同時に尻餅を付いて、ゲートから出られなくなると言うエピソードから、1枠1番の馬は勝てないと言われているわ」
いつの間にか、クロとハルウララの雑談になりつつあるが、今回のレースはジンクスが大きく影響しそうだな。
中山競馬場の2000メートルは、走っている。後は自分を信じるしかない。
さて、コースのことも復習したし、俺は今回のレース用にアビリティでも買うかな?
レースに向けてのアビリティを購入しようとタブレットを開いた瞬間、タブレットにプレゼントが届きましたと表示がされた。
いったい誰からだ?
そう思ってプレゼント画面を開くと、送り主は
なんだ? このアビリティは?
アビリティの種類、絆アビリティ。
これって、ダイワスカーレットの
驚いた俺は、
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