第十四話 黄金の破天荒船現る
俺が尾行していたことに気付かなかったようで、
「どうしてこの子を助けないんだ!」
『そうだ! そうだ! それでも風紀委員か! 男としても情けないぞ!』
俺に続いてハルウララも彼に言葉を投げかける。
すると、俺たちの反応を見て、
「はぁー、お前は場に呑まれている。もっと観察眼を養え。この女はどこからどう見ても、ここに倒れている不良たちの仲間だ」
「なん……だと」
予想外の言葉に驚いた俺は、言葉が途切れ途切れになってしまった。
「この女を良く見ろ。男たちに捕まり、恐怖体験をしているはずなのに、涙を流していないし、発汗もしていない。手足の震えや顔色も悪くない。どう見たって可笑しいだろう?」
「そう言われればそうだけど、お前が助けたことで安心したのではないのか?」
「いや、そもそも、恐怖と言うのは視覚や聴覚から得た情報を、脳の大脳皮質よりも先に
「確かに、涙を流した跡や汗を掻いた匂いもしない。手足の震えや顔色は、直ぐには治らないな」
『そうだ! そうだ!
「お前はどっちの味方だよ」
自分勝手な彼女の発言に呆れつつも、どうしたものかと考える。彼の言う通りだった場合、彼女を助ける訳にはいかない。
「あーあ、作戦失敗ね。まぁ、こうなりそうな気がしていたわ。私もまだまだね。見た目の変装は得意でも、演技ができなければ一緒。良い勉強になったわ」
女の子が口調を変えた瞬間、彼女を縛っていたロープが切れた。そして立ち上がると、髪と顔に手を当てた。
髪はカツラだったようで、銀髪の髪が顕になる。そして顔は変装パックだったらしく、それも取り外された。
「お前は!
「久しぶりね。と言ってもあなたからしたら、桜花賞の私を見ているでしょうが」
「どうして、お前がここに……まさか!」
「察しが良いわね。そう、あなたの
彼女の言葉に、歯を食い縛る。あの
『それは可笑しいよ! だって、帝王と約束したじゃないか! 条件を呑めば、学園の生徒には手を出さないって!
そうだ。俺は親父と約束をした。だから、学園の生徒には手を出せないはずだ。それなのに、また約束を破ったと言うのか。
「確かに、あの時に約束をしていたわね。先ほどは私の言い方が悪かったわ。確かに、私は
「あーあ、そこまでバラさないでくれよ、
この騒動を計画した人物は他に居るとカミングアウトされた瞬間、聞き覚えのない男の声が聞こえ、そちらに顔を向ける。
金髪の髪に細身の男だ。そして耳には金色の馬のピアスをしてある。着ている服装も、どこかチャラそうなイメージがあった。
「やっぱり、お前か。黄金の破天荒船……いや、
「あーあ。俺様の舎弟たちをこんなにしちゃって。これ、警察を呼べば、お前逮捕されちゃうぜ」
「そんなこと計算済みだ。俺がやったのは最初の1発だけだ。いきなり攻撃をしてきたから反撃に出た。これは正当防衛に当たる。その後は自滅へと誘って勝手に倒れただけだ。警察が来たところで、捕まることはない」
『そうだ! そうだ! お前の舎弟たちは互いに殴り合って勝手に気を失ったんだぞ! 私も帝王も、それをちゃんと見ている!』
「ハルウララの言っていることは本当よ。私も彼の戦いぶりを観察していたから」
「いや、
「
「好みではない……ねぇ。まぁ、俺様も運良く
「禁句を言いやがって!」
「離してよ!」
「冷静になれよ。挑発されているのが分からないのか。このままあいつを殴れば、運が悪ければ退学に発展するかもしれないぞ」
「本当に、
「お前の悔しい気持ちは分かる。だけど、ここは俺に任せてくれ」
自分に任せろ。そう言うと、
「次の皐月賞で勝負だ! 俺が勝った場合、この女に謝ってもらおう」
「エアシャカールがゴールドシップに勝つ? 寝言は寝て言えよ。まぁ、お互いにクラシックで2冠は取っているから、ある意味互角かもしれないが、能力的にはゴールドシップの方が上だぜ」
「寝言は寝て言え? その言葉、そのまま返してやる。お前の自信は、俺の計算で打ち砕いてやる」
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