第九章
第一話 おかしい。俺のデータ競馬が外れ続けるなんて
〜
「おかしい。また俺の買った馬券が外れた」
様々なデータを組み合わせた結果、今回のレースは1番人気、2番人気、3番人気が馬券内に来ると判断し、普段のポイントよりも多めに賭けた。だが、結果は1着3番人気、2着10番人気、3着12番人気と荒れに荒れたレース結果となった。
「こんな結果になるなんて俺のデータではあり得ないぞ!」
俺は毎回自分の予想に自信を持って賭けている。もちろん外れることもあるが、今回の外れ方は異常だ。
「降格ローテの該当馬を見逃していたか? いや、今回の出馬表を見るに、3着以内に来た馬は人気馬よりも格下だ。芝であれば展開によって荒れるケースもあるので納得はできる。だが、今回は
「
レース結果に納得できないでいると、幼馴染で同じ風紀委員の
「ああ、そうだ。今回のレースも、俺の予想を悪い意味で裏切ってきやがった」
「馬券を外して悔しい気持ちになるのは分かるけれど、競馬と言うのは当たらないことが前提の公営ギャンブルだよ。プロの世界でも10回に2回的中できれば良い方と言われているくらい的中できないんだから」
そんなことは分かっている。これが通常通りの外し方であれば、俺もここまで心が騒つくことはない。だけど最近の外し方は俺の予想を大きく外しているのだ。絶対に来ないと確信している馬が、馬券内に来るレースが20回連続で来ている。これは異常だ。
「俺の知らないところで何かが起きている。きっと裏でレースを操っている者がいるはずだ」
「頭大丈夫? いくら馬券を外し続けているからと言って、不正をしているって言う発想は可笑しいよ? きっと疲れているんだよ。一旦賭けることから離れて熱くなった頭を冷やしたら?」
頭を冷やすように言われるが、俺は正常だ。別に熱くなりすぎている訳ではない。冷静に考えて可笑しいと思っている。
「とにかく調査が必要だ。この学園の風紀が乱れている」
「あ、ちょっと!
風紀委員室から出て行くと、俺に続いて
「僕は君が心配だよ。ねぇ、1回病院に行って頭を見てもらったら?」
「だから俺は! このハズレ馬券には裏があると正常に判断して言っているんだ! 頭の可笑しいやつのように言うな!」
つい声を荒げてしまった。くそう。頭では熱くならないようにするべきだと分かっているのに、外れたショックで感情的になってしまっている。でも、あのレースには何かしらの不正があったかのようにしか思えない。
一度熱くなった気持ちを落ち着かせるために深呼吸をする。深く息を吸い込み、そしてゆっくりと吐き出した。
すると、ある可能性が閃く。
「今から学園長室に行くぞ」
あの人なら、あいつの連絡先を知っているはずだ。
学園長室へと向かい、扉を数回ノックする。
「はーい、どうぞ」
扉越しに入室の許可をもらい、学園長室へと入って行く。
「
「
「知っているけど、どうしたの? あのおっさんの連絡先なんて知って?」
「少々聞きたいことがあるので、連絡先を知りたいのです」
「分かったわ。一応何の要件なのか教えてもらえる? あなたもわたくしの生徒であることには変わらないから、教師として守る義務があるわ」
「分かりました。以前、あの男から取引を持ち込まれたことがあるのです。『
「なるほどねぇ、確かにあの男は
確かにやつは最近のレースには出走していない。だが、俺の中で納得できないと先には進められない。
「それでもお願いします。俺の中で結論付ける必要があるので」
頭を下げ、彼女にお願いをする。
「あの
隣で
頭を下げ続けていると、
「分かったわ。でも、条件があります。わたくしが直接連絡しますので、あなたには連絡先は教えません。その条件でなら良いですよ。もしかしたら納得できないかもしれませんが、これもあなたを守るためです。勿論通話中は空中ディスプレイを表示させます」
「それで問題はありません。ご協力感謝致します」
礼を言い、下げた頭を上げる。すると、
しばらく待つと、どうやら応答してくれたようで、画面に強面の男が現れた。
ヤクザのような強面の男、間違いなく、俺に取引を持ちかけたあの男だ。
『なんだこんな時に連絡なんて寄越して、ワシは今とても機嫌が悪いんだ。お前に宣伝料を支払って以来、失った分の金を回収しようと馬券を買い続け、負け続けているのだからな。さっきのレースだって、堅いレースだと思っておったのに、大穴が馬券内に来やがった。これで20連敗だぞ』
通話に出るなり、男は不機嫌そうに言葉を連ねる。
この反応、もしかして今回の件にやつは関与していないのか? てっきり、こいつが裏で操って金を荒稼ぎしているものだと思っていた。
『それでなんだ? ワシはこれからやけ酒を飲もうと思っているところだ。今日の負けを酒で忘れたい』
新堀学園長が問うと、
俺は首を左右に振り、これ以上は必要ないことを伝える。
「いや、やっぱりなんでもないわ。悔しがっている顔も見られたから必要がなくなった。それじゃあね」
『あ、ちょっとま――』
どうやら通話を切ったようで、空中ディスプレイが消えた。
「どうやら彼は、関与していないみたいね」
「そうですね。ご協力していただき、ありがとうございます。それでは、俺は調査を続行するのでこれで失礼します」
「ちょっと、
俺の後を歩き、
なぜか不思議と確信してしまっている自分がいる。確かに彼の言う通り偶然が重なってだけなのかもしれない。
だけどその数が異常だ。偶然も重なり続ければ、それは必然となる。
俺は捜査を続行するために学園内の調査を続行した。
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