第二十話 呼び出し大作戦
〜
僕は正直困惑していた。何故か、あの
「『あなたに話したいことがあるの。だから屋上に来て』って言っていたけど、どう言う意図なんだろう?」
愛の告白なんてことは100パーセントありえない。でも、彼女がわざわざ僕を呼び出すと言うことは、僕を呼び出すことで彼女にとって何かメリットがあるのだろう。
さて、どんな登場シーンで現れようか? 僕は一応おバカで頭がイカれたキャラ設定で自身を偽っている。まずはいつも通りにおバカを演じて彼女に接しようかな?
「この先、僕の身にどんなことが起きようとも、僕は偽りの自分を演じようじゃないか」
屋上に辿り着き、扉を開ける。
「
両手を上げて笑みを浮かべ、いつも通りのおバカな発言をする。
さて、
「あ、来たわね。あなたに紹介したい人が居るのよ」
「僕に紹介したい人? って、まさか噂の
首を左右に振って辺りを見渡す。
娘が紹介したい人がいると言われれば、世間の父親は娘の彼氏だと思い込むだろう。そうなれば、父親は娘が離れる寂しさで彼氏に対して脅しのようなことを言うはず。
僕のこの反応は世間のお父さんたちと同じだよね?
「
どこからか聞き覚えのある声が耳に入ったかと思うと、
「君は
彼女の姿を見た瞬間、僕は彼女に駆け出す。
「誰が嫁よ! 気色悪いわよ!」
「グホッ!」
僕としたことが迂闊だった。
腹部を蹴られた衝撃で、僕の体は屋上の上を転がる。
これが
僕がこんなキャラを演じている以上、当然反撃を受けるようなことは想定してある。だからどんなに蹴られても耐えられるように、体を鍛えてはある。
ゆっくりと立ち上がり、
「あら? 狙いを外してしまったようね。あなたのキンタマーニを狙って蹴ったつもりだったのだけど」
キンタマーニとは競走馬の名前だけど、きっと僕のアレのことを指しているよね?
半目になりながら告げる彼女の言葉を聞いた瞬間、体に寒気を感じる。
いくら筋トレで体を鍛えても、キンタマーニだけは簡単には鍛えることができない。
「僕のキンタマーニがナニをしたって言うんだ! まだナニもしていないじゃないか!」
両手を股間に置いてガードをしつつ、声を上げる。
「まだってことは、これからしようとしていたの? やっぱり今の内に潰して去勢した方が良さそうだわ」
「言葉の揚げ足を取らないで!」
「確かにそっちの方が良さそうね。虚勢してセン馬のようになれば、あたしに抱き着こうとしてこなくなるかもしれないし、あたしも賛成!」
「アタイも賛成だ。抱き付かなくなれば学園の女子生徒は被害を受けないで済む」
「全員の意見が一致したと言うことで、早速
彼女たちは一歩、また一歩と近付き、距離を詰めて行く。その度に僕は股間を両手で隠しながら後に後退していった。
だが、屋上である以上、永遠と床が続いている訳ではなく、僕は転落防止の柵に背中をぶつけた。
まずい。もう逃げ道がなくなった。
「お願い! 僕のキンタマーニだけは許して! 何でも言うことを聞くから!」
切羽詰まっていた僕は、思わず声を上げた。だけどその瞬間に激しく後悔することになる。
あれ? これって意味がなくない? 何でも言うことを聞くから、キンタマーニを許してって言っても、その何でもの中に去勢をするって言うのも含まれていることになる。
あ、終わった。僕は生まれながらに共にいるキンタマーニとおさらばすることになるんだ。
さよなら、僕のキンタマーニ、そしてこれからよろしく、新たな第3の性。
「言質取ったわよ。何でもと言ったのだから、あなたには
え? そんなことで僕の去勢手術は許されるの?
状況が理解できずにいると、
どうやら
最初から、僕は彼女たちの手の平の上で踊らされていたようだ。
「あ、でも、あたしはあなたのキンタマーニを潰しても良いとは99パーセントは思っているから」
もう、このキャラで生きて行くのはやめた方が良いかもしれない。本当に去勢されてしまう。
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