第二十一話 袖無衣装の告白

 〜袖無衣装ローブデコルテ視点〜






 周滝音アグネスタキオンを嵌めることに成功した私たちは、彼に大気釈迦流エアシャカールを呼んでもらうことにした。


「おい、引っ張るな! 屋上に無理やり連れて行こうとして、いったい何を企んでいる」


「頼むから何も聞かないで僕に従って! じゃないと僕のキンタマーニがピンチになるんだ!」


「何を意味の分からないことを言っている!」


 しばらく待つと扉越しに2人の男性の声が聞こえてきた。


 どうやら周滝音アグネスタキオン大気釈迦流エアシャカールを連れて来てくれたみたいね。誘導の仕方は強引すぎるけれど、連れて来てくれたのだから良しとしますか。


 扉が開かれ、茶髪の一部がボサボサでアホ毛のように飛び出ている男と、黒髪の短髪に耳にはピアスを付けており、不良ぽい見た目をしている男が屋上に出てきた。


 大気釈迦流エアシャカールが私たちを見ると、彼と目が合う。すると、大気釈迦流エアシャカールは目を細目ながらこちらに歩いてきた。


「おい、どうして他校のお前がこんなところに居る? お前も学校があるだろうが? さっさと戻って学校生活を送れ」


 開口一番に言われた言葉に、呆気に取られてしまう。


 え? え? 私と再会して最初に言う言葉がそれなの?


 まぁ、彼らしいと言えば彼らしいのでしょうが、もっと違う言葉を期待してしまったわ。


 小さく息を吐くと、突如彼は私の手を握る。


 突然の行動に、なぜか心臓の鼓動が早鐘を打った。


 え? い、いきなり手を握るって、私たち、まだそんな関係じゃあ。


「他校の生徒が学園内に居ると分かれば、学園側に迷惑だ。さっさと出て行ってもらう。俺から逃げようなど思うなよ。絶対に追い込んで追い出してやる」


 あ、そう言いう意味ね。仕事熱心なところは良いけど。女の子の扱いが全然なっていないわよ。


 幸いにも彼の握る手は強くはなかった。なので直ぐに振り払い、キッと彼を睨む。


「言われなくとも自分の足で出て行くわよ」


「そうか。なら、さっさと出て行け。だけどなるべく他の人にはバレないようにして出ていけよ。お前の存在がこれ以上他人の目に触れると問題が大きくなる」


「そんなこと言われなくとも分かっているわよ! だからわざわざ変装して校内に忍び込んでいたのでしょうが!」


 彼の言葉に思わずカチンと来てしまい、思わず声音を強めてしまう。


「そもそも、私がわざわざ変装までしてこの学園に忍び込んだのは、あなたに言いたいことがあったからよ! それだけ言えば、さっさと霊馬学園に戻るわ」


 そう、私がこの学園に忍び込んだのは、優駿牝馬オークスの件で宣戦布告をするため、大和鮮赤ダイワスカーレット同様に、優駿牝馬オークスであなたを倒す。それだけ言えればそれで良いわ。


「そうか。なら、さっさと要件を言って出て行ってくれ」


 大気釈迦流エアシャカールは胸の前で腕を組み、要件を言うように促す。


 私はその場で息を吸い、肺に空気を取り入れると思い切って声を上げる。


「私が優駿牝馬オークスで優勝したら、付き合ってもらうわ!」


「「「えええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇ!」」」


 言葉を放った直後、大和鮮赤ダイワスカーレット魚華ウオッカそして周滝音アグネスタキオンが驚きの声を上げた。


 ちょ、ちょっと待って! 私、何を口走ってしまっているのよ!


 彼女等と同様に、私自身も驚いてしまう。


 元々はただ宣戦布告をするだけだったのに、なぜか勢いで告白もしてしまった。


 お、落ち着きなさい私。相手はあの大気釈迦流エアシャカールよ。きっと買い物か何かに付き合うと勘違いをするに決まっているわ。


「そうか。お前の気持ちは受け取った。気付いてやれなくって悪かったな。だが、悪いがレースの勝敗は関係なく、断らせてもらう」


 彼の言葉が耳に入った瞬間、一瞬だけ頭の中が真っ白になる。


 え? 私フラれたの? 勢いで言ってしまって冷静に断られるなんて。


「ちょっと、何でなのよ! 誰か好きな人が居るとか、既に付き合っている人が居るの?」


 フラれたのにも関わらず、納得のできなかった私はどうしてダメなのかを問う。


「いや、好きな女性も付き合っている女性もいない。悪いが、俺は恋愛と言うのがイマイチ分からない。相手を好きになるって感覚が分からないんだ。仮に勝負に負けて袖無衣装ローブデコルテと付き合ったとしよう。だが、相手のことが好きでもないのに付き合っても、お前を傷付けるだけだ。そんな思いをさせるくらいなら、最初から付き合わない方が良い」


 彼の付き合えない理由を知り、拳を強く握る。


 好きになると言うのがどんなことなのかが分からない? だから付き合えない? でも、付き合うことで何かが変化することだってあるじゃないのよ。


「良いわ。あなたがそこまで言うのであれば、私のことを好きにさせてみせるわよ。そしてあなたの方から告白させてみせるわ!」


「ほう、面白い。良いぜ。なら、どんな手を使ってでも、俺を好きにさせてみせろよ。俺を惚れさせられるのであれば、惚れさせてみせろ」


 自身の胸に親指を突き立て、堂々と宣告する彼に対して、闘志が燃え上がってくる。


 私のプライドにかけて、絶対に惚れさせてやるのだから!

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