第十二話 八百長騎手追放ゲーム(ネタバラシ&感想編)

 ナゾナゾ博士から誘われた八百長騎手追放ゲームは終わった。結果は村人サイドである騎手側の勝利となった。


「みんなお疲れナゾ? いやー、最後の議論は色々な意味で面白い展開となったナゾね」


「くそう。普通の人狼ゲームだったのなら、俺が人狼であると見抜かれない自信があったのに、特殊能力のせいであんな負け方をしてしまうなんて」


 大気釈迦流エアシャカールが納得のいかないと言いたげな表情をしながらポツリと呟く。


「でも、私はあなたを弄んで楽しかったわよ。撮れ高があったじゃない」


「そんなものはいらない! ゲーム実況じゃないんだぞ!」


 袖無衣装ロープデコルデの言葉に対して、大気釈迦流エアシャカールが反論する。


「でも、第三者からしたら面白かったナゾ? 録画をしていないのが惜しいくらいナゾ?」


 確かにゲームオーバーとなった人物からしたら面白かったかもしれない。だが、半分当事者である俺からしたら罰ゲームのような時間だった。


「そう言えば、みんなの役職って何だったんだ? 因みに俺は騎手だった。一応大気釈迦流エアシャカールとクロとナゾナゾ博士は八百長騎手で合っているんだよな?」


「ああ、そうだ。俺たち3人は八百長騎手で間違いない」


「他のみんなは?」


 訊ねると、それぞれが自身の役割を明かす。すると、このような役職だったことがわかった。


 東海帝王トウカイテイオウ(騎手)

 クロ(八百長騎手)

 大和鮮赤ダイワスカーレット(騎乗依頼仲介者)

 魚華ウオッカ(騎手)

 明日屯麻茶无アストンマーチャン(トラックマン)

 内巣自然ナイスネイチャ(遅刻騎手)

 大和主流ダイワメジャー(遅刻騎手)

 大気釈迦流エアシャカール(八百長騎手)

 周滝音アグネスタキオン(騎手)

 貴婦人ジェンティルドンナ(裁決委員)

 兜城カブトシロー(共犯)

 袖無衣装ロープデコルデ(騎手)

 ナゾナゾ博士(八百長騎手)


「あれ? ルドルフさんは?」


 みんながそれぞれの役職を明かす中、1人だけ無言だった人物がいる。彼のアイコンを見ると、ログアウトしましたと表示されていた。


 どうやら負けたことで俺たちのグループから抜けたみたいだな。でも、残っている役職はヤクザだけだ。きっと彼はヤクザだったのだろう。


「なぁ? 最初魚華ウオッカが追放されたのって何でだ? あれが納得いかなかったのだけど?」


「ああ、あれは俺の仕業だ。俺のプレイヤースキル『投票しろ』を使って数名の人物に対して彼女に投票を強制させた」


 俺の疑問に大気釈迦流エアシャカールが答える。蓋を開けてみれば、案外呆気ない内容だったな。


「ねぇ、僕を最初の夜のターンで追放したのは何でなの! もっと大和鮮赤ダイワスカーレットちゃんや袖無衣装ロープデコルデちゃんと遊びたかったよ」


「それは最初に追放した方が好都合だったからだ。お前を追放すれば、排除したがっていた2名に疑いの目を向けることができるからな。まぁ、現実は予定通りに行かなかったが」


 なるほど、確かに周滝音アグネスタキオンが追放されれば、追放したがっていた2人に疑いの目を向けることはできる。だけど、これがNPCであったのなら有効だったかもしれないが、多様な考えのできる人間だったからこそ、単純に疑えなかったと言うのもあった。


「2ターン目で兜城カブトシローが俺のことを白だと言ってくれたお陰で、俺たち八百長組の中では狂人かヤクザだと言う認識ができた。あんなトラブルが起きなければ、もう少し利用してやるつもりだったのだがな」


「まさか一発で八百長騎手を白出しできたとは正直に思わなかったぜ。母ちゃんが乱入してきてすまなかったな。さっさと飯を食べて後半からは見させてもらっていた」


「本当に早かったよな。あの時、アタイはびっくりしたぜ。ゲームオーバーになってから10分程でリタイア組の通話の中にひょこっと入って来たからな。どんだけみんなとゲームを楽しみたかったんだよって心の中で思ったもん」


「ば、バカ! それを言うな!」


 リタイアした兜城カブトシローが食事を済ませてゲームに戻ってきたことを魚華ウオッカが告げると彼は声音を強めて声を上げた。


 まぁ、そんなことをカミングアウトされたら恥ずかしいよな。


「それにしても、3ターン目は本当に焦ったナゾ? まさか大気釈迦流エアシャカールが裏切って身内斬りをしてくるとは思ってもいなかったナゾ?」


「いや、あれはどう考えたった助けるのは無理だろう。変に庇えば俺が怪しまれる。なら、さっさと身内斬りをして俺を白よりにした方が今後のゲームを有利に進めることができる。だからこそ、クロも庇わなかっただろう?」


「まぁ、大気釈迦流エアシャカールがあれだけ論理的に言われたら否定することができないからね。あそこでは何も言えなかったわ。ナゾナゾ博士は運がなかったわね」


「まさか真の敵は仲間にいたなんてショックナゾ? 頭の良い軍師を持っても油断できないナゾね」


 あれはナゾナゾ博士の運がなかったよな。真の裁決委員でもある貴婦人ジェンティルドンナ生徒会長とヤクザのルドルフさんから黒出しされたら言い訳が簡単には通らない。


「4ターン目は特に何もなかったナゾね」


「いやあったじゃないッスか! 俺と大和主流ダイワメジャーが遅刻騎手だとカミングアウトした瞬間にルドルフの野郎のせいで謝るムーブになって謝らないといけなくなったじゃないッスか! しかもあの野郎は土下座で追放を免れやがって!」


「自分から醜態を晒して行くなんて凄いナゾね。敢えて触れないであげようと思っていたナゾ?」


「しまったッス! ついナゾナゾ博士のボケに反応して自ら恥ずかしいことを思い出させてしまったッス」


「いや、別にボケた訳ではないナゾ? 私の優しさナゾ?」


 ナゾナゾ博士の優しさをボケと勘違いした内巣自然ナイスネイチャが自ら醜態を曝け出していく。


 うーん、この感じ懐かしいな。初めて彼と出会った時も、こんな感じのことがあった。確かあの時は、ハルウララがナイスネイチャの名前を言い間違えて彼が真名を明かしたんだよな。


「5ターン目は流石に面白い展開はなかったナゾ?」


「ええ、わたくしと大和主流ダイワメジャーが追放されたこと意外は得にありませんでしたわ」


 5ターン目は貴婦人ジェンティルドンナ生徒会長と大和主流ダイワメジャーが追放されたと言うこと意外はあまり大きなことはなかったはず。敢えて言うのであれば、俺が八百長騎手であるかを確認するためにスキルを使って、俺だけクロが八百長騎手だとわかった程度だ。だけどそれを知らない人物からしたら、あまり印象に残らないターンでもあった。


「6ターン目は帝王とクロの一騎打ちだったナゾね」


「ああ、俺は前のターンでクロが嘘を吐いていたことを見抜いていたからな。だからどうにかしてそれをみんなに伝えようとしたのだけど、逆に疑われてしまって苦戦した」


「あの時は私もどうやって切り抜けるべきかと悩んだわ。でも、最終的には負けてしまったけれどね」


 あの時は負けも覚悟していたけれど、どうにか勝てて良かった。運が悪ければ、追放されていたのは俺の方だったかもしれない。


「7ターン目は大気釈迦流エアシャカールがルドルフさんがヤクザと見破り、みんなで協力して彼を追放したナゾ?」


「あの男が土下座を使えたことで、本当に苦戦した。あのスキルがなければもっと早く追放できていた。だが、生き残ると言うことを優先させるのであれば、実用的なスキルではあったな」


「そして8ターン目は大気釈迦流エアシャカールの告白回と」


「あれのどこが告白だ! 強制的に言わされて告白も何もあるか!」


 ナゾナゾ博士はふざけ半分で言っているのだろうが、大気釈迦流エアシャカールは半ギレしているようで声音が高い。


 まぁ、最後のターンは俺もある意味地獄ではあったがな。運良く議論の終了時間が来たから良かったが、もし議論の終了が来なければ、俺も大和鮮赤ダイワスカーレットに対して、恥ずかしいことを強制的に言わされていたことになる。


「それじゃあ、第2ラウンドを始めるナゾ? みんな準備は良いナゾ?」


 こうして2回目の八百長騎手追放ゲームが始まった。さて、次は何の役職だ?

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