第二十二話 序盤からの攻防
ゲートが開き、俺はトウカイテイオーに走る合図を送る。
『ゲートが開きました。おっと! 1番ゲートのラガーレグルスがバッドステータスを発動した模様。ゲートから出ることができません! 生前の再放送となりました』
『お知らせします。1番のラガーレグルスは競走中止となりました』
『それ以外はまずまずの揃ったスタートとなっています。
『ここで最初の坂を駆け登ります』
『3馬身程離されて、トウカイテイオー、その後ろをハクタイセイ、並んでイシノサンデーが続いており、ここでサクラスピードオーが追い上げてきた。今、トウカイテイオーと並ぶ!』
『サクラスピードオーは、生前2番人気であったものの、7着で終わると言う苦い経験がありますからね。今回こそは優勝してみせる意気込みを感じさせる走りです』
『1馬身程離されてアルアイン。ダイタクリーヴァとシンコウカリドが並走。その後ろをミスキャスト、そしてトップコマンダーとダンツフレーム、が追いかける形となっています。そしてその外側をペルシアンナイトが追走。2馬身差でエアシャカールとゴールドシップが殿と言う形での競馬となりました』
トウカイテイオーが最初の坂を駆け登り、第1コーナーに差し掛かる。
まだ序盤だけあって、誰もアビリティを使用してはいない。やっぱり、レースが荒れるのは中盤から終盤にかけてか。
「今回のレースは強豪揃いナゾ? 渋っていては、勝機を逃してしまうナゾ? ナゾ、やるナゾ?」
『
何!
前方からナゾが
そう思っていたが、ナゾが速度を上げることはない。
不発……な訳がないよな。でも、どうして何を起きない?
『なぁ、
「どうした? トウカイテイオー」
『どうして、お前は俺と同じ名前なんだ? 謎だ?』
はぁ?
トウカイテイオーはいったいどうしたんだ? 今はそんな会話をしている暇はないだろう?
「お前、何を言っているんだよ。今はそんなくだらない会話をしている場合ではないんだぞ!」
『すまない。どうしても気になってしまってだな。この謎を解明しないと、レースに集中できそうにない』
まずいな。レースに集中できないと負ける可能性が高まってしまう。仕方がない。ここは話してレースに集中してもらう。
「それはお前と契約するためだ。同じ馬名だと、召喚する際に縁が深まり、成功する可能性が高くなるからだ」
『なるほど、そうなのか。これで疑問が解消された』
どうやら納得してくれたようだな。これでレースに集中してくれる。
『なぁ、
「またかよ! 競馬が初めて誕生したのは、古代ギリシャの時代からだ。その頃は戦車競馬と呼ばれ、2頭の馬で
簡単に纏めてトウカイテイオーの疑問に答える。
これで、今度こそレースに集中してくれれば良いのだが。
『なぁ、
またかよ! しかも、今度は話題が重い!
いったいトウカイテイオーはどうしてしまったんだよ。
『なぁ、どうして俺は、生前2着だったんだ? 謎だ? この疑問が解消されないとレースに集中できない』
「知るかよ! お前の能力不足だったんじゃないのか!」
『なぁ、どうして中山競馬場は中山なんだ? 謎だ? この疑問が解消されないとレースに集中できない』
「はぁ? お前はいきなり何を言っているんだよ」
どうやら、他の馬たちも同じ状況のようだ。そうなってくると、トウカイテイオーが知りたがりの幼子のように色々と聞いてしまうのは、ナゾの
どんな効果なのかは想像することしかできないが、おそらく知力を低下させ、思ったことを疑問にして口に出させる。そして騎手と競走馬の判断力を鈍らせ、速度を低下させることもできる能力。
仮定での話だが、強力な能力となっていることは確かだ。
『ここでナゾが後続を突き放す! 2番手との差は5馬身程となりました。そしてナゾの独走状態のまま、第2コーナーを曲がっていきます』
ナゾが第2コーナーを曲がってしまったか。早くこの状態を解かないと、このままでは逃げ切られてしまう。
『『『『『謎だ? 謎だ? 謎だ? 謎だ? 謎だ? 謎だ? 謎だ? 謎だ? 謎だ? 謎だ? 謎だ?』』』』』
競走馬全員による『謎だ?』コールが至るところから聞こえてくる。
カオスだし、うるさい。本当に集中できないぞ。くそう。いつもだったらトウカイテイオーが打開策を考えてくれるのに、頼みの綱がこれでは彼に頼ることは困難だ。
早くこの解決策を見出さなければ、ナゾの独走のままゴールされてしまう。
何かあるはずだ。この状況を変える一手がどこかに。
思考を巡らせ、俺はこの状況を打開する方法を思案する。
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