第八章

第一話 とある休日の帝王の競馬ゲーム①

「さて、今日はオンラインで勝負をするか」


 学生寮の俺の部屋で、俺はゲームを起動した。


 今日遊ぶゲームは、ウイニングホース10 2024と言う競馬ゲームだ。


 このゲームは2024年までに活躍した史実馬が登場し、それ以降は存在しない架空の馬たちが活躍するゲームだ。キャッチフレーズの100年遊べるゲームどおり、プレイヤーには世代交代がある。


 世代交代があると言うことは、プレイヤーは結婚し、子どもを作ることができるのだ。


 初見で初めてプレイした時は本当に驚いたよ。だって、いきなりお見合いをすることができ、お見合いをOKした相手といきなり結婚して夫婦になるのだから。


 このゲームはギャルゲーではなく、競馬がメインだと言うのは分かるよ。でも、もう少しプレイヤーに考える時間があっても良いと思わない?


 選択肢にある女性キャラとお見合いすることを決定した瞬間に、成功して即結婚って普通ありえないって。


 しかも、ゲームが進行して出会う女性キャラの中には結婚することが可能で、しかもお見合い結婚した嫁よりも魅力を感じてしまうキャラが殆ど。この事実を知った瞬間、お見合いなんてしなければ良かったと後悔した。


 ゲームあるあるの取り返しのつかない要素と言うやつだな。まぁ、初見プレイでは仕方がない。


 長々と愚痴的なことを心の中で呟いてしまったが、取り敢えずはゲームを始めよう。


 ゲームを起動すると、オンライン対戦を選択する。すると、画面には巻き髪ツインテールの童顔の女性と、メイド服を着たロングの黒髪の女性が表示される。彼女たちも条件をクリアすると結婚可能となるキャラだ。


「さぁ、リーヴハイツ。お前の力を全国のプレイヤーに見せつけてくれ」


 俺は今まで育ててきた馬の中で、最強の架空の馬をレースに出馬させることにした。


 オンライン対戦の場合、史実馬の使用は禁止されているので、全員が架空の馬のみを使用している。


 俺のリーヴハイツは、セーブ&ロードを繰り返し、出走したレースは全て優勝させた絶対王者だ。


 日本のクラシック三冠、春の古馬三冠、秋の古馬三冠を達成し、海外のレースにも出走させ、欧州のキングジョージ6世&クインエリザベスステークス、そして凱旋門賞を優勝させ2冠を勝ち取った実績を持ち、競馬ブームを引き起こした立役者だ。


 俺の育てた馬の中でも最強と言えるだろう。


 出馬させる馬を選んだ後、今度は騎乗する騎手を選択する。


 このゲームは実際に居た騎手が登場している。


 騎手によって、得意な脚質や距離、鞭を多様する騎手かどうかなどが決まっており、選択した馬との相性の良い騎手を選択しないと、馬の力を最大限に引き出せないので、それなりに戦略性もいる。


 馬との相性を考慮した上で、騎乗する騎手を選ばないといけないので意外と頭を使うのだ。


 いつもは川田騎手に乗ってもらっているが、今回は娘に騎乗してもらおう。


「頼んだぞゆい


 俺はゲーム内でお見合い結婚した嫁との間に生まれた娘に騎乗してもらうことにした。


 嫁との間には3人の子どもができ、男1人女2人の子宝となった。


 長男は高校卒業後にアメリカに渡り、騎手見習いから騎手へと昇格し、俺の牧場で牧場長をしている女性と結婚した。


 正直、この2人が密かに付き合っていると言う事実は驚かされた。ゲームだから登場キャラの見た目に変化が起きないと言うのは分かるよ。しかも一部のキャラには年齢が存在しない。でも、牧場長は、息子が生まれる前から牧場で働いているんだよ。リアルで考えたら、20歳以上歳が離れているはず。


 それなのに、息子と牧場長が実は付き合っていて、結婚をすると言う知らせを聞いた時は、正直に驚きを隠せなかった。


 まぁ、これはあくまでもゲームだから、リアルの思考は必要ないだろう。あくまでもゲームだ。常識に囚われてはいけない。牧場長に年齢が設定されていない以上、何もおかしなことはないのだ。


 そして長女は大学卒業後、牧場のスタッフとして働いてくれている。正直、長女の方が騎手になって欲しかった。これは教育方針を嫁に任せてしまったのが原因だろうな。


 このゲームには、子どもが生まれると、小学生になる年齢からプレイヤーが教育方針を決めることになる。


 運動、勉強、牧場の3つの選択肢があり、それぞれがEからSまでパラメーターを上げることができる。


 このパラメータを元に、子どもの就職先が決まるのだ。


 しかも、牧場のパラメータが低いと、競馬とは関係のない職業に付くことがある。


 普通に会社員をやっていたり、デザイナーになったり、野球選手になったりと、様々な職種に就くが、せっかく競馬ゲームをやっているのだから、子どもたちには競馬関連の職業に就いてもらいたいものだ。


 多分、長女は運動のパラメーターが低かったんだろうな。だから騎手にはなってくれなかった。


 親バカな意見かもしれないが、長女は嫁よりも可愛く描かれている。なので、彼女が騎手になってくれていれば、メイン騎手として使っていただろう。


 最後は次女の唯だ。正直、容姿は誉められるほど整っていると言う訳ではない。


 このゲームは主人公がプレイヤーの分身と言うこともあってか、グラフィックが用意されていない。なので、唯はプレイヤー似と言うことになるのだが、正直軽くショックを受ける。


 いや、子どもはランダムで決まる設定になっているし、長女と次女が本当に姉妹? と思ってしまう程の容姿に差があっても仕方がないよな。


 このゲームにはソシャゲーのキャラのように、複数のイラストレーターが関わっている。だからキャラのグラフィックに統一性がなく、可愛く描かれているキャラや、微妙な容姿のキャラなどが登場してしまうのは避けられない。


 しかし、唯は高校卒業後、競馬騎手養成学校に入学し、卒業後に騎手になってくれた。彼女が騎手になってからは、生産する馬の殆どを彼女に乗ってもらっている。


 俺の作った馬には個体差があるが、G Iにも通用する馬にも乗せたこともあり、彼女はデビュー1年目でG Iジョッキーに上り詰めることになった。


 このことを考えると、やっぱり馬の血統と言うのは重要であり、馬が強ければ、多少技量の少ない騎手でもG Iレースに勝つことができる。


 その証拠に、血統が微妙な馬に唯を乗せると、普通に騎手の技量不足でレースに負ける。


 この辺も、もしかしたらリアルの競馬を再現してあるのかもしれない。


「おっと、つい考え事をして全然ゲームを初めていなかったな。時間は有限だし、早速オンライン対戦をするか」


 俺はオンライン対戦を始める。まさか、あんなことが起きるなんて、この時の俺は予想できなかった。

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