第七話 中京レース場
クロに引っ張られ、連れて来られた場所は、学園の空き教室だった。
「ここなら、私たち以外に話を聞かれないと思う」
「それは良いのだけど、どうして
なぜか付いて来た2人に顔を向け、彼女たちに問う。
「アタイに聞かないでくれ。こいつに連れて来られただけだから」
「学園のアイドルを倒す鍵は、
「アタイを尋問だと! 言っておくが、何をされてもあいつの真名は明かさないからな」
胸の前で腕を組み、
彼女の意思の硬さは数分前に聞かされた。だから無理だと諦めていたと言うのに、いったいどんな方法で彼女の口を割らせるのだろうか。
「学園のアイドルの使用する霊馬の考察も大事だけど、それには時間がかかるかもしれないよ? だから、先に今回走るコースのことに付いて教えた方が良いと思う」
「そうね、まだ時間があるとは言え、思った通りに
クロの提案に
「今回のレースは、中京競馬場、芝のコースは、1周1705.9メートル。直線距離は412.5メートルだね。因みに芝コースの1周の距離は、阪神や中山の内回りよりも長く、直線の長さは京都競馬場の外回りよりも長いと言う特徴を持っている。芝コースの高低差は3.5メートル、ゴール地点でかなりの勾配が続き、
最初に、クロが今回のレース会場である芝コースの全体を説明する。
確か中京競馬場の坂は、日本の競馬場の中で2番目の急勾配の坂だと言われている。確かに、馬にはタフさが要求されるだろうな。でも、ハルウララは生前、113戦する程のタフさを持っている。根性できっと乗り切ってくれるだろう。
「1200メートルのシルクロードステークスってことは、スタート位置は
教卓の上に置かれていた指し棒を取り、スタート地点を指し示す。
「ここから左回りで真っ直ぐに走り、第3コーナーから坂のあるカーブを曲がって、第4コーナーを曲がって、二メートルの坂を駆け登って、
コースの流れを聞く限り、やっぱり勝敗の分け目は坂だろうな。アビリティも、坂関連のものを使用する人が多いだろう。
今回はマイルではなく短距離、だからマイル適性を上げる
早速坂関連のアビリティを購入するか。
胸ポケットからデバイスを取り出し、起動して電子通販のアプリを起動する。
すると、数多くのアビリティが表示された。
前回のレースで優勝したので、その賞金ポイントが俺のデバイスに入金されている。だから、少しくらいなら値段の高いアビリティを買えるはずだ。
画面をスクロールさせながら、次々と表示されるアビリティを探す。
お、これなんか良さそうだな。
これを使えば、ハルウララの少ないスタミナを補えるはずだ。
必要ポイントは10万ポイント。普通ならなかなか手を出せないアビリティだが、今の俺なら買える。さすがに星3つになると、100万ポイントが必要になるが、さすがにそんな大金は今の俺は持ち合わせていない。
早速注文して支払いを済ませると、俺の所有するアビリティ一覧に、
直ぐに【マイル適性】星1つと入れ替え、準備を整える。
これで、準備は整った。
「クロ、説明サンキュ。後は学園のアイドルの使用する名馬の推理だな」
幼馴染に礼を言うと、俺は
「なんだよ。いくら脅されてもアタイは言わねぇからな」
まるで今にでも喧嘩を始めそうな勢いで構え、
「あなたに誘導尋問は無理よ。あたしに任せて」
自分に任せろと言うと、
「なんだよ。アンタの頼みでも言わねぇからな。例えレースをすると言う約束だったとしても、義理は通す」
「別に学園のアイドルの真名を教えろとは言わないわよ。あたしが欲しいのはヒント」
「ヒントだぁ?」
怪訝な表情をしながら、
「そう、ヒントよ。それなら、学園のアイドルの真名をあなた自身がバラしたことにはならないし、ちゃんと義理は通したことになる。そう、あなたはたまたま漏らした言葉をあたしたちが拾って考察し、推理の結果的中させてしまったってだけだから。それに、悔しくはないの? ウオッカを負かせた相手が踏ん反り返っている姿を見て」
「そんなに熱い眼差しを向けないでくれ。なんだか恥ずかしいじゃないか。まぁ、あいつに負けて悔しいのは確かだ。分かった。なら、ヒントは言ってやる。だけど、直接答えになるようなヒントだけは出さないからな」
さて、どんなヒントを出してくれるのやら。
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