第八話 八百長騎手追放ゲーム⑧

 俺たちはナゾナゾ博士に誘われ、八百長騎手追放ゲームと言う人狼をモチーフにしたゲームで遊ぶことになった。


 ゲームを開始後、俺は村人である騎手となり、人狼である八百長騎手は3人居るらしい。


 1ターン目は何故か一言も発言をしていない魚華ウオッカが追放され、夜のターンでは周滝音アグネスタキオンが追放された。


 2ターン目は兜城カブトシローを追放することになった。しかし兜城カブトシローは1ターン目で裁決委員を名乗っている。


 彼の他にも貴婦人ジェンティルドンナ生徒会長とルドルフさんが裁決委員を名乗っている。ルドルフさんは俺を白出してくれているので、今のところは白よりだと思っている。


 そして夜のターンとなったがこのターンは誰も追放されることがなかった。きっと騎乗依頼仲介者が守ってくれたのだろう。


 3ターン目は貴婦人ジェンティルドンナ生徒会長とルドルフさんがナゾナゾ博士は八百長騎手であることを告げたので、俺たちはナゾナゾ博士を追放する。


 その後夜のターンとなり、追放した人物がどっちサイドの人間だったのかを知ることができる能力を持つトラックマンの明日屯麻茶无アストンマーチャンが追放されていた。


 そして4ターン目、内巣自然ナイスネイチャ大和主流ダイワメジャーが白確である遅刻騎手であることが分かった。4ターン目の結果は議論の最中にヘイトを集めてしまったルドルフさんが追放されることになった。


 しかし、彼はステルスに特化したパラメーターのようで、確率で追放を免れる土下座と言うスキルを発動し、見事に成功、彼は追放されずに済んだのだ。


 そして夜のターンになったが、夜のターンは誰も追放されるようなことにはならなかった。


 5ターン目、ヤクザの存在が話題に上がりつつも話し合いでは誰を追放するべきか明確には決まらず、俺は白出しをしてくれているルドルフさんの対抗である貴婦人ジェンティルドンナ生徒会長に投票した。


 その結果、貴婦人ジェンティルドンナ生徒会長が追放されることになった。そして夜のターン、大和主流ダイワメジャーが消えていた。


 残っているのは俺、クロ、大和鮮赤ダイワスカーレット内巣自然ナイスネイチャ大気釈迦流エアシャカール、ルドルフさん、袖無衣装ロープデコルデの計7名だ。


 後2人、この中に八百長騎手が紛れている。


「場を仕切っていた貴婦人ジェンティルドンナが消えたか。なら、ここからは風紀委員長である俺が仕切らせてもらおう。まずは裁決委員の報告を頼む」


『ワシは袖無衣装ロープデコルデを調べた。彼女は白だ』


「と言うことは、袖無衣装ロープデコルデは白確だな。もう彼女に投票する必要はない」


「ほう、どんな理論で結論付けた? 言ってみろ」


 俺が袖無衣装ロープデコルデは八百長騎手ではないことを告げると、まるで試すかのように大気釈迦流エアシャカールが理論を説明するように要求してきた。


「彼女を白出ししていたのは追放された貴婦人ジェンティルドンナ生徒会長とルドルフさんだ。そしてナゾナゾ博士が黒だと言っていたのもこの2人、このことからどっちが本物でどっちが偽物であったとしても、確実性は高い」


「まぁ、お前レベルであればそれが限界か。俺も同じ意見だ。ナゾナゾ博士の時にも言ったが、裁決委員は3人いた。彼女は自身が黒だと言われ、追放した兜城カブトシローが本物だと言っていたが、そうなった場合は身内を切ったことになる。そして兜城カブトシローが偽物だった場合は貴婦人ジェンティルドンナかルドルフのどっちかが本物だ。ゲームに勝とうとすれば、なるべく仲間を減らしたくはない。そう考えるのが自然だ。そうなると、身内切りの可能性はなくなり、兜城が本物の裁決委員ではないとなる。確実にあいつは共犯だ」


 大気釈迦流エアシャカールお得意の論理的な説明をしてきたな。確かに彼の説明の信頼性は高い。


「よって、残った貴婦人ジェンティルドンナかルドルフが本物だ。貴婦人ジェンティルドンナは追放されたが、彼女は袖無衣装ロープデコルデを事前に調べ、白と言っていた。そして今回ルドルフも白と言っている。両方から白出しされている袖無衣装ロープデコルデを疑う余地はない。もし、彼女を陥れようとするのであれば、そいつが八百長騎手と言うことになる。さぁ、誰がボロを出すのか、炙り出しと行こうじゃないか」


「俺はルドルフさんに投票するッスよ! 前回は投票逃れをしたッスが、今回は絶対に吊るッス」


『おお、怖い怖い。なら、土下座の準備でもしておくとするか』


 大気釈迦流エアシャカールが八百長騎手の炙り出しを始めると言うと、内巣自然ナイスネイチャがルドルフさんを口撃し始める。


 俺の中で白確となっているのは袖無衣装ロープデコルデと遅刻騎手の内巣自然ナイスネイチャの2人。俺の中では白であって欲しいのはルドルフさん、そして協力関係を結んだクロだ。そうなると、怪しむのは大気釈迦流エアシャカール大和鮮赤ダイワスカーレットの2人、まずはこの2人のどちらかを疑うべきだな。


 2人の怪しい場所を考えていると、大気釈迦流エアシャカールが口を開いて怪しい人物の名を告げる。


「俺が怪しんでいるのは、大和鮮赤ダイワスカーレットだ」


「なんであたしなのよ!」


「そんなのは決まっている。1ターン目でお前は周滝音アグネスタキオンを追放しようと言ってきた。だが、追放されたのは何故か魚華ウオッカ、そして夜のターンで追放されたのは周滝音アグネスタキオンだ。お前は最初のターンであいつの追放に失敗したことで、夜のターンを活用して居なくなって欲しい周滝音アグネスタキオンを追放した。と仮説を立てている。疑うには充分だ」


 確かにメタ読みをすれば、そう考えるのが自然だ。だけど、彼女がそんな間抜けなことをするだろうか? 彼女はバカではない。そんなことをすれば、自身が疑われることになると分かりきっているはず。


 おそらく、八百長騎手はそれを見越して夜のターンに周滝音アグネスタキオンを追放したはず。そうなると、真っ先に疑うべきは|大気釈迦流(エアシャカール》と言うことになる。だけど、彼の言動は白よりのものばかり、疑うにしても判断材料がない。彼が確実に黒だと言う証拠がないと疑った段階で俺が反撃されることになるのは明白だ。


 思考を巡らせていると、俺の所有するスキルにこの場をどうにかできるかもしれないスキルがあることを思い出す。


 この盤面を変えるには、これしかない。


「ここで俺のスキルを発動させてもらう『全員白だと言え』!」


 このスキルを使用すると、プレイヤーは白だと言わなければならない。演技力が低ければ見抜くことができる。そして相手プレイヤーは中断させることも可能だが、中断すれば怪しまれてしまう。


 終盤に使うにしては適しているスキルだ。


「ほう、嘘を言っている人物を見抜こうと言うのか、面白う。もちろんこの俺は白だ。八百長騎手ではない」


「あたしも白よ。八百長騎手ではないわ」


「白確になっている私も言うべきなのかしら? 一応言うけど、白よ」


「もちろん、遅刻騎手である俺も白ッス!」


「私も白よ。八百長騎手ではないわ」


 クロが発言した瞬間、彼女の画面が1秒程カラーから白黒へと変わる。このエフェクトは相手が嘘を言っていることを見抜いた演出だ。


 マジかよ。クロが黒かよ。俺、八百長騎手と協力していたことになるの!


 まるでリアル狂人じゃないか。彼女に利用される前に手を切ったほうが良いな。


「クロ、悪いがお前との協力関係は解消だ。俺はお前が嘘を吐いたことを見抜いた」


「そう。でも、あなたは白確ではない。白確ではない以上、みんなあなたを信頼することはできないわ。それに、もっと怪しい人物がいるじゃない。発言していない人物が」


 え? 誰も言って居ない人物って居たか? 大気釈迦流エアシャカール大和鮮赤ダイワスカーレット袖無衣装ロープデコルデ内巣自然ナイスネイチャ、そしてクロ……あ、ルドルフさんが言っていない!


「ルドルフさんが自分は白だと発言していない」


『うん? ワシ? だって、白だと言えと言ったではないか。ワシはマイクが壊れていてキーボード入力になっているから『言う』と『入力』は別だろう?』


 入力されたルドルフさんの文字を読み、力が抜けてしまった。


 これはわざとか、それとも天然で言っているのか?


 そんなことを考える中、議論タイムの終了を告げるファンファーレが鳴り響く。


 俺は当然クロに投票する。


 その結果、俺とクロが同数で決戦投票となった。


 マジかよ。やばい。次の議論でクロを追放できなければ、俺が追放されることになる!

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