第九話 八百長騎手追放ゲーム⑨

 俺たちはナゾナゾ博士に誘われ、八百長騎手追放ゲームと言う人狼をモチーフにしたゲームで遊ぶことになった。


 ゲームを開始後、俺は村人である騎手となり、人狼である八百長騎手は3人居るらしい。


 1ターン目は何故か一言も発言をしていない魚華ウオッカが追放され、夜のターンでは周滝音アグネスタキオンが追放された。


 2ターン目は兜城カブトシローを追放することになった。しかし兜城カブトシローは1ターン目で裁決委員を名乗っている。


 彼の他にも貴婦人ジェンティルドンナ生徒会長とルドルフさんが裁決委員を名乗っている。ルドルフさんは俺を白出してくれているので、今のところは白よりだと思っている。


 そして夜のターンとなったがこのターンは誰も追放されることがなかった。きっと騎乗依頼仲介者が守ってくれたのだろう。


 3ターン目は貴婦人ジェンティルドンナ生徒会長とルドルフさんがナゾナゾ博士は八百長騎手であることを告げたので、俺たちはナゾナゾ博士を追放する。


 その後夜のターンとなり、追放した人物がどっちサイドの人間だったのかを知ることができる能力を持つトラックマンの明日屯麻茶无アストンマーチャンが追放されていた。


 そして4ターン目、内巣自然ナイスネイチャ大和主流ダイワメジャーが白確である遅刻騎手騎手であることが分かった。4ターン目の結果は議論の最中にヘイトを集めてしまったルドルフさんが追放されることになった。


 しかし、彼はステルスに特化したパラメーターのようで、確率で追放を免れる土下座と言うスキルを発動し、見事に成功、彼は追放されずに済んだのだ。


 そして夜のターンになったが、夜のターンは誰も追放されるようなことにはならなかった。


 5ターン目、俺は貴婦人ジェンティルドンナ生徒会長に投票した。その結果、貴婦人ジェンティルドンナ生徒会長が追放されることになった。そして夜のターン、大和主流ダイワメジャーが消えていた。八百長騎手に追放されてしまったようだ。


 6ターン目、話し合いの結果、投票で1番人気となったのは俺とクロと言う結果となり、決勝投票が行われることになる。


 果たして俺は、彼女との勝負に生き残ることができるのだろうか?


「それでは、これより決勝投票を行う。対象は東海帝王トウカイテイオウとクロの2人だが、他の者も議論に参加することができる。2人の会話で判断するのもよし、議論に介入して判断するのもよしだ。では、始めようか」


 大気釈迦流エアシャカールが軽く説明を行うと議論が始まった。


 さぁ、どうしたものか。俺はプレイヤースキルの影響でクロが嘘を吐いていることを知っている。八百長騎手で間違いない。俺がこの議論で勝つには、俺が真実を言っていることをみんなに認めさせなければならない。


「クロは嘘を吐いていた。彼女は間違いなく八百長騎手だ」


「でも、あなたは白確ではないわ。あなたが嘘を言って私を八百長騎手だとみんなに誤認させ、陥れようとしている。みんな騙されないでね。帝王こそが、真の敵よ」


 お互いに議論の相手を疑うように告げる。この勝負は、どれだけ味方を増やせるかだ。


 俺とクロは、お互いに1票ずつ投票するだろう。残っているのは5名だ。少なくとも後3名を味方に付けなければならない。そして俺は不利な状況だ。


 八百長騎手は残り2人、つまり八百長騎手は俺に投票するはず。つまり2票は確定しているのだ。クロは後2人味方を増やせばこの勝負に勝つことができる。


東海帝王トウカイテイオウとクロはお互いに相手を投票しろと言っているが、別にどちらかを絶対に選ばないといけない訳ではない。俺からの提案だ。2人とも追放すれば良い。仮に東海帝王トウカイテイオウが言っていることが正しい場合、少なくとも八百長騎手1人は追放できる。そして帝王が嘘を言っていたとしても、八百長騎手かヤクザの可能性が高い。俺的には2人纏めて追放した方が助かる」


 大気釈迦流エアシャカールの発言後、俺の画面に『『対象者全てを追放しろ』のスキルが発動しました。これにより対象外の人の意見により、追放するべきかどうかが決まります』と表示がされる。


 大気釈迦流エアシャカールがカリスマのスキルを使ってきたか。こうなってしまっては、俺たちは結果を見守るしかない。


「発案者の俺はもちろん2人纏めて追放に賛成だ」


「あたしはやめていた方が良いと思う。さっきの説明を聞く限りだと、騎手サイドよりも八百長騎手やヤクザが特をするような気がするわ」


「俺もやめていた方が良いッス。ちゃんと話し合って、どちらか1人を追放した方が良いと思うッス」


『ワシは2人とも追放するのは賛成だ。少なくとも、1人は八百長騎手を追放することができるからな』


 大気釈迦流エアシャカールとルドルフさんは追放に賛成、そして大和鮮赤ダイワスカーレット内巣自然ナイスネイチャは反対だと良い、後は袖無衣装ロープデコルデの判断に委ねられる。


「私は……止めていた方が良いと思うわ。このゲームに勝つには、もっと冷静になって見極めた上で投票したい」


「賛成2人、反対3人か。だが、俺的には今の発言である程度誰がどの役職なのかを判断することができた。そう考えたら一応収穫はあったか」


 自身の意見を拒否されたのにも関わらず、彼は前向きに捉えている。もし、本当にそれぞれの役職を把握したのであれば脅威だ。


 彼が騎手サイドであっても、八百長騎手サイドであっても、スキルを使って俺たちをゲームオーバーにさせようとしてきたのだから。


「お祭り娘に一つ聞きたいのだけど、クロはどうして帝王が嘘を言っていると思うの?」


「当たりまえよ! だって私は騎手だもの。それなのに帝王は私が嘘だと言っているのよ。なら、彼が八百長騎手であるのは間違いないわ」


 大和鮮赤ダイワスカーレットがクロに訊ね、彼女は俺が嘘吐きだと言う。その瞬間に俺の画面は1秒程白黒画面になり、クロが嘘を言っていることを知らせる。


 俺からしたらクロは確実に八百長騎手だ。でも、俺にはそれを伝える手段がない。どうにかしてクロが八百長騎手であることをみんなに知らせなければ、俺が負ける可能性が高くなる。


「私は、東海帝王トウカイテイオウは騎手で、お祭り娘は八百長騎手だと思っている。今から言うことは確実性に欠けることだから、最終的にはそれぞれの判断に任せるけれど、現在裁決委員と名乗って生き残っているルドルフさんは帝王もお祭り娘も白だと言っている。仮に彼が真の裁決委員だと仮定した場合、白出しをしている帝王がお祭り娘は嘘を言っていることになるわ。つまり疑うべきは彼女よ」


「なんでそうなるのよ! ルドルフさんは偽物じゃない! だって、白出しをしておきながら私と帝王、2人の追放に賛成しているのよ。だったらルドルフさんが八百長騎手ってことになるわ」


「確かにそうね。でも、そしたらどうして東海帝王トウカイテイオウがあなたに対して嘘を言っていると言うのかしら? 協力関係である以上、仮に彼が八百長騎手であった場合、裏切らないでそのまま仲間の状態を維持していた方がリターンは大きい。なのに、あの曲面で協力関係を打ち切ったと言う観点からしたら、帝王は真実を言っていると思えるわ」


「…………」


 大和鮮赤ダイワスカーレットの説明、クロは反論できないでいる。


 そんな中、議論の終了を知らせるファンファーレが鳴り出した。


「どうやら論破成立だな。それでは、これより決勝投票を行う」


 大気釈迦流エアシャカールが投票をするように促すと、俺はクロに投票した。


 その結果、殆どが彼女に投票していた。2票だけ俺に入っていたのは、八百長騎手の投票だろう。


「あーあ、これでゲームオーバーか。まぁ、楽しかったから別に良いか。さっき私が言ったセリフは忘れないでよ。このゲームで勝つための鍵だから」


 事実なのか、それとも撹乱させるためのフェイクなのか、クロは気になる発言だけ残すと彼女の画面がゲームオーバーの文字が表示された。


 夜のターンへと移行されるな。さて、このターンで追放される者が現れるのだろうか?


そんなことを考えていると夜のターンが終わる。


追放されたのは遅刻騎手の内巣自然ナイスネイチャだったようで、彼の画面はゲームオーバーの文字が表示されていた。


残りは俺も含めて5人、果たして俺は最後まで生き残ることができるだろうか。

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