第二話 新たに得た情報による進展
よく
待ち合わせをしている喫茶店は、トレイセント学園から徒歩10分程で辿り着く近場だった。
店の名前が
「それじゃ、今から入るわよ」
先頭に立った
「いらっしゃいませ……あら! ダスカちゃんじゃない! もしかして
「ええ、もう直ぐ休憩時間と聞いたので」
「そうなのね。なら、早めにあげようかしら。ちょっと言って来るから、7番席で待っていてね」
店員さんに親しく話す
席を指定した店員さんは、厨房と思われる場所へと向かって行く。
『ねぇ、帝王。このお店、おかしいよ』
「何がおかしいんだ?」
何かが可笑しいとハルウララが言い出し、俺は彼女に訊ねる。
何だかしょうもないことを言いそうな気がするが、今はちょっとした情報でも欲しいところだ。念のためにも聞いていた方が良いだろう。
『このお店、お帰りなさいませ、
「いや、メイド喫茶じゃないから。そもそも何だよ、牝馬様って」
ハルウララの通常運転に小さく息を吐きながらも、俺たちは店員さんの指示に従い、7番席に座った。
4人用の席だったので壁側が俺、その隣がクロ、そして俺の対面席に
ただ情報を得るだけでは申し訳ながったので、飲み物を注文することにした。
メニュー表を見て、全員が飲み物を決めると、俺たちの前に女の子がやって来た。
このお店の制服を着用しており、長いロングの髪はきめ細やかで、キチンと手入れがされている。顔立ちも整っていている綺麗系の女の子だ。
「ダスカちゃんとそのお友達だね。私の名前は
「ちょっと、
「え、だって。お店自体が真名を明かしているし、それにダスカちゃんのお友達なら、私の口から真名を明かしても安心できるかなって」
「いや、どれだけあたしのことを信頼しているのよ。あたしが連む人=良い人って訳でもないでしょうに」
「え、ダスカちゃんのお友達ってそんなに悪いの?」
どうして俺のみに視線を向けて来るんだよ。
「いや、彼らは良い人よ。あたしが言いたいのは、信頼しすぎるのも良くないって言っているのよ。それよりも、先に注文いいかしら?」
「あ、そうだった。何にするの?」
「あたしは紅茶のダージリンで、お祭り娘と
「私はカフェオレにしようかな?」
「俺はコーヒーをブラックで」
「ご注文を受けたまわりました。お母さん! 紅茶ダージリン、ワン! カフェオレ、ワン! コーヒー、ブラック、ワン! あと、ロイヤルミルクティ、ワンで!」
声を大きく上げ、注文の品を告げる。ちゃっかり、自分の飲み物も注文しているな。どうやらこのお店の娘さんみたいだし、彼女にとっては飲み放題なのだろう。
「それで、私に何を聞きたいのかな?」
ここは男として俺が話を切り出した方がいいだろうか。そのように思っていると、
「あたしたちは、兄さんの落馬事件に付いて調べているのよ。独自の調査で、あれは事故ではなく事件だと分かったわ。あたしたちは事故を起こした犯人を探しているのよ」
「あ、あれは私も驚いちゃった。いきなりの落馬だもの。自分の目が信じられなくって、一瞬頭の中が真っ白になっちゃった」
「それで、その犯人はダイワメジャーの
「確かに、顔は見たよ。でも、フードを深く被っていたし、マスクもしていたから、細かいところは見ていない。でも、雰囲気だけは覚えている。何か容疑者となる人物の写真とかってあるかな?」
容疑者の写真はないかと訊ねられ、俺は胸ポケットからタブレットを取り出す。
「お待たせしました。こちらがご注文の品になります」
「あ、お母さんありがとう。ロイヤルミルクティは私だから」
店内に入って直ぐに
それぞれが注文した飲み物が目の前に置かれ、俺はタブレットの画面を
画面には
「
彼女に訊ね、俺はコーヒーを一口飲む。口の中にコーヒーの苦味が広がる中、それと同時にコクも味わう。
彼女がなんて言うのか注視していると、
何だか嫌な予感がする。頼む、気のせいであってくれ。
「あ、やっぱり、この子だよ! この子がダスカちゃんのお兄さんが騎乗していた馬の誘導役をしていた」
嫌な予感が的中した。その瞬間、俺の頭の中が真っ白になる。
どうして、お前がそんなことをした。
ほとんどの思考が停止する中、勢い良くテーブルが叩かれる音が耳に入り、俺は我に返る。
「そんな訳ないわ! 彼女がそんなことをするはずがない!」
『
思考が停止して言葉が出なくなった俺に変わり、ハルウララが彼女を
「ごめんなさい。つい、感情的になってしまったわ」
着席し直すと、
紅茶を飲んで、冷静さを取り戻してくれると良いのだが。
「私も、彼女が犯人だとは思えない。良く似た別人ってことは考えられないかな? 例えば双子とか?」
「そんな話は
クロが双子の可能性を提示してくるも、実際に彼女の口から双子が居るとは聞いていない。だから、俺もその可能性は低いと思っている。
「その
その瞬間、
いくら何でも、彼女がそんなことをするはずがない。
仮に誰かの変装だとすると、犯人は別にいるはずだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます