第四話 八百長騎手追放ゲーム④

 ナゾナゾ博士の誘いにより、騎手版の人狼ゲーム、八百長騎手追放ゲームで遊ぶことになった。


 プレイヤーにはカリスマ、直感、演技、ステルス、ロジック、ラブリーと言うステータスがあり、俺は相手の嘘を見抜きやすくなる直感と、追放されそうになった時に助けてもらえる可能性を高めるラブリーに特化したステータスにした。


 そしてゲームが始まり、八百長騎手が3人居る中ゲームが始まり、俺の役職は村人と同じ意味を持つ騎手になる。


 様々な議論の後、追放させるべきプレイヤーとして1番人気の周滝音アグネスタキオンや2番人気の兜城カブトシローが候補に上がる中、最終的に追放させるべきプレイヤーとして多くの人が選んだのは魚華ウオッカだった。


 しかし彼女は今回の議論には一言も言わずに怪しまれるようなことをしておらず、どうして彼女が追放されないといけないのかが理解できないでいる。


 謎が謎を呼ぶ中、こうして魚華ウオッカはゲームオーバーとなった。


「マジか。まさかアタイが選ばれるとは思ってもいなかったぜ。まぁ、選ばれたのならしょうがない。敗者側として最後まで見届けているから、アタイの陣営、負けるなよ」


 その一言を言うと、魚華ウオッカの顔が映っていた画面の枠にはゲームオーバーの文字が表示される。


「それでは、夜のターンに移るナゾ? 特殊な能力を持っている役職はそれぞれどうするのかを選択して欲しいナゾ? 八百長騎手は別の回線に映って誰を追放させるのか話し合うことは可能ナゾが、制限時間は1分間しかないので注意して欲しいナゾ」


 ナゾナゾ博士が説明を終えると、画面が夜のターンと表示される。村人と同じである騎手の俺には、このターンは何もすることがない。


 1分間の間、どうして魚華ウオッカが追放されないといけなかったのかを考えてみた。だが、今の段階では情報が少なくって解決の糸口を見つけることはできなかった。


 夜のターンが終わり、昼のターンになる。


 俺の空中ディスプレイには『周滝音アグネスタキオンが追放されました』と言うメッセージが表示され、その後に生き残ったメンバーたちが次々と映り出す。


「どうやら、八百長騎手は周滝音アグネスタキオンを追放したナゾね。では、第2ターンめのスタートだナゾ?」


 周滝音アグネスタキオンが追放されたか。つまり、彼は村人である騎手サイドの人間だった可能性がほぼ確定した。


 このままでは情報が少なすぎる。多くの情報を得るには、まずは裁決委員の調査報告が必要だな。


「裁決委員と名乗った3名には誰を調査したのかを説明してくれ」


「それじゃあ、俺から言おう。俺は大気釈迦流エアシャカールを調べたが、白だった。次は八百長騎手を見つけてやるぜ」


「わたくしは他の者を調べました。袖無衣装ロープデコルデは白です」


『ワシは東海帝王トウカイテイオウを調べた。彼は白だった』


 俺が調査報告をするように告げると、兜城カブトシロー貴婦人ジェンティルドンナ生徒会長、そしてルドルフさんがそれぞれ報告する。


 全員白出しして来たか。この中の2人は確実に嘘を吐いているが、俺の嘘を見抜くスキルは発動していないな。それなりに演技力が高めのパラメーターになっている可能性が高い。


 一応、俺を白出ししてくれたルドルフさんは信じてみても良さそうだ。となると、怪しむべきは兜城カブトシロー貴婦人ジェンティルドンナ生徒会長だな。


 警戒すべき対象を絞ると、クロが口を開いて会話を進める。


「3人の報告で推理がしやすくはなったけれど、やっぱり気になるのは魚華ウオッカの件よ。トラックマンは名乗り出てくれない? あなただけ情報を持っているよりも、情報を共有して欲しいわ」


 クロがトラックマンの役職持ちは名乗り出るように促す。


「分かったですぅ。八百長騎手から狙われるリスクは高まるですがぁ、教えるのですぅ。魚華ウオッカはぁ、八百長騎手ではぁ、なかったのですぅ」


 クロが発言して情報を共有するうように促すと、明日屯麻茶无アストンマーチャン魚華ウオッカは白だったことを告げた。


 どうやら彼女がトラックマンのようだ。


 しばらく様子を見てみるも、対抗が出る様子がない。つまり、彼女は白確と見て良さそうだな。


 そう確信した瞬間、大気釈迦流エアシャカールの言葉で一気に彼女を疑う要素が浮上してきた。


「彼女だけがトラックマンだと言って来たが、油断するな。既に1ターンが経過して2ターン目に入っているんだ。俺たちが追放した魚華ウオッカ、そして夜のターンに追放された周滝音アグネスタキオンが真のトラックマンだった可能性だって十分に考えられる」


 確かに、対抗が出ていない以上、居なくなった2名のどちらかが真のトラックマンだった可能性も十分にある。


 一応は白めとして考えつつも、警戒はしておくべきかもしれない。


 残り時間も迫って来ている。そろそろ誰を追放すべきかを考えていた方が良さそうだな。


『シローちゃん! ご飯よ!』


「分かった。もう少ししたら行くから……すまない気にしないでくれ」


 兜城カブトシローの画面から、母親と思われる人物の声が聞こえてきた。


 彼は八百長事件を起こして停学処分を受けている。なので今は実家で自宅待機の身だ。


「シローちゃん、ご飯だと言われているナゾ? 行かなくて良いのかナゾ?」


「シローちゃんって言うな! 良いんだよ! 別にメシなんか後で」


『シローちゃんご飯よ!』


 再び母親の声が聞こえて来た。


「うるせー! ババァ! もう少しで行くって言っているだろうが! 犬でも待てと言われたら待つことができるぞ!」


 再び母親からの呼び声をかけられた兜城カブトシローは、母親に対して暴言を吐く。その瞬間、扉が開かれて彼の母親らしき人物が部屋の中に入って来たのが画面に映った。


『誰がババァですって! 八百長なんかして停学になった分際で、良くそんな口が利けるわね!』


「げ! 母ちゃん! 部屋に入って来るなって!」


『もう、どれだけ心配したと思っているのよ! お母さんの気持ちも知らないで』


「わ、分かったから部屋から出て行ってくれって、今、みんなと遊んでいたところだから!」


『遊んでいた?』


 兜城カブトシローの言葉で、ようやく画面に映っていた俺たちの存在に気付いたようだ。


『あら、私たらみっともないところをお見せしてしまいましたわ。私、シローちゃんの母です。息子がお世話になっています。こんなバカ息子ですが、どうかお友達で居てください。良かったら今度、家に遊びに来てくださいね』


「か、母ちゃん! 恥ずかしいからやめてくれ! すぐに終わらせて行くから早く部屋から出て行ってくれよ!」


 乱入してきた母親に兜城カブトシローは必死になって懇願している。


 そんな親子のやり取りを聞いていると、議論の時間が終わり、ファンファーレが流れる。


 これはもう一択しかないだろう。母親を待たせる訳にはいかないし、今回は彼に投票をするか。


 兜城カブトシローに投票をした後、誰が追放されるのかの発表がされた。結果は満場一致で兜城カブトシローが追放されることになった。

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