第三話 八百長騎手追放ゲーム③

 ナゾナゾ博士から八百長騎手追放ゲームと言う、人狼ゲームの騎手バージョンで遊ぼうと誘われ、数人が集まった。


 人狼サイドである八百長騎手、共犯、そして村人サイドである騎手、遅刻騎手、裁決委員、トラックマン、騎乗依頼仲介者、そして第3陣営のヤクザが居る。


 そして各プレイヤーにはカリスマ、直感、演技、ステルス、ロジック、ラブリーと言うステータスがあり、それぞれのステータスにポイントを振り分けることで、そのステータスに特化したスキルを使用することができる。


 そんな中、俺が選んだのは、他のプレイヤーの嘘を見抜く能力に長けている直感と、危ない時に周囲のプレイヤーに庇って貰える能力に長けているラブリーの2つに特化したステータスにした。


「それでは、八百長騎手追放ゲーム、スタートナゾ? 5分間の議論の後に追放する人をみんなで選ぶナゾ?」


 なぞなぞ博士がゲームの開始を告げると、遂にゲームがスタートした。


 その瞬間『この中に八百長騎手は3人います。あなたの役職は騎手です』と俺のみが見える文字が空中ディスプレイに表示される。


 八百長騎手は3人居るのか。14頭立てのレースで3連複を当てないといけないな。


 3回連続で追放騎手を当てるのは0.02パーセントだ。


 人狼ゲームは発言すればする程みんなの注目を集めて目立ってしまう。目立ち過ぎれば、変に狙われるかもしれない。ここは様子を見つつ、必要な時に発言する方が良さそうだな。


「このゲームって居なくなって欲しい人を選ぶゲームよね? なら、最初に居なくなって欲しい人は周滝音アグネスタキオン一択よ」


「あ、それ私も賛成! みんなも取り敢えずは彼を追放しましょう。誰かを追放しないと判断材料がないし」


 大和鮮赤ダイワスカーレット周滝音アグネスタキオンを追放しないかと告げると、続いて袖無衣装ローブデコルテも賛成に周り、他の者も同意するように促す。


大和鮮赤ダイワスカーレットちゃんに袖無衣装ローブデコルテちゃん、それはあまりにも酷いよ! いくら僕のことが嫌いだからって、最初の犠牲者にしないで! 大気釈迦流エアシャカールも何か言ってよ!」


「普段の行いのせいだろう? 自業自得だ」


大気釈迦流エアシャカールがいつもより冷たい! もしかして八百長騎手サイド!」


「そんな訳がないだろう。取り敢えず誰かを追放しなければいけないのは事実だ。なら、釣られやすいやつを真っ先に選んだ方が時間を無駄にせずに済むと思っただけだ。まぁ、取り敢えずは、追放候補の1番人気は周滝音アグネスタキオンだな。2番人気となる候補者は誰か居るか?」


 大気釈迦流エアシャカールが促すと、クロが恐る恐ると手を上げる。


「メタ発言になってしまうけれど、私は兜城カブトシローが怪しいと思う。ほら、彼って八百長をしたじゃない? だから運命の悪戯とかで、八百長の役職が来ていたりするんじゃないのかな?」


「メタ読みで俺を怪しむのかよ」


「なら、2番人気は兜城カブトシローだな」


「僕は最初の犠牲者になりたくないから、兜城カブトシローに投票するよ」


「お前たち、本気で俺を追放する気か。だが、このまま追放される可能性は消しておきたい。良いぜ、お前たちに教えてやる! カミングアウト! 俺の役職は裁決委員だ! 俺を追放したら、八百長騎手サイドか、騎手サイドか情報を得られなくなるぞ」


 何! 兜城カブトシローは裁決委員か。それなら、無闇に彼を追放するのは情報を減らすことに繋がってしまう。


 裁決委員は、ターンの終了後にプレイヤーを選び、その人物が騎手サイドなのか、八百長騎手サイドなのかを調べることができる。


 彼を追放すると言うことは、得られる情報を減らすことに直結することになってしまう。


 驚いている中、貴婦人ジェンティルドンナ生徒会長の笑い声が耳に入る。


「ふふふ、追放されそうになって、嘘のカミングアウトですか。では、前座ご苦労様です。ここでわたくしもカミングアウトさせていただきますが、わたくしこそが真の裁決委員です。なので、兜城カブトシローは追放して問題はありませんわ」


 兜城カブトシローが裁決委員だと告げた瞬間、貴婦人ジェンティルドンナ生徒会長も同じ役職だと告げた。


 この2人が裁決委員と言うことは、どちらかが共犯であり、どちらかが本物だな。


 そう考えていた瞬間、俺の空中ディスプレイにルドルフさんからのメッセージが届く。彼はオンラインでメンバー募集をしたところ、参加してくれた方だ。アイコンは自作なのか、お世辞にも上手いとは言えない馬の絵が描かれている。


『いやいや、皆さん騙されてはいけません。ワシこそが真の裁決委員です。次のターンでワシが八百長騎手が誰なのかを告げましょう』


 え? ルドルフさんまでが裁決委員だって? そうなると3人の中の役職は共犯1人、八百長騎手1人、真の裁決委員1人と言う構図になる。


 しかし、今のところは俺の嘘を見破るスキルが発動していない。誰が嘘を吐いているのかはまだ分からない状況だな。


「そろそろタイムアップの時間ナゾ? みんな誰を投票するのか決めたかナゾ?」


「くそう! もっと大和鮮赤ダイワスカーレットちゃんと袖無衣装ローブデコルテちゃんと遊びたかった!」


「追放すべき対象として1番人気となっている周滝音アグネスタキオンが悔しそうな表情を見せる。


 彼にとっては不完全燃焼なのだろう。まぁ、俺も最初の犠牲者にはなりたくないからな。何となくその気持ちは分からなくはない。


『ファーン、ファファーン、ファファファーン! ダダダダーン! ファファファファーン! ダダダダーン! ファファファファーン! ダダダ・ダアーン! ダン! ファ・ファ・ファ・ファ・ファ・ファーン! タタタターン、ファ・ファ・ファ・ファ・ファ・ファーン! ファファファファーン!』


 そんなことを思っていると、突然ファンファーレが鳴り始めた。


「議論の時間の終了を告げるファンファーレが鳴ったナゾ? これにて議論は終了ナゾ?」


 え? ファンファーレが議論の終了を告げるの? どっちかと言うと始まりを告げる方じゃない?


 どうでも良いことかもしれないが、ついそんなことを考えてしまった。


 とにかく、誰かに投票しなければいけない。周滝音アグネスタキオンには悪いが、最初の犠牲者になってもらおう。


 追放する人を周滝音アグネスタキオンにして結果を見守る。


 何かの間違いで、俺が追放されるなんてことにはならないよな?


 心の中で思ってちょっとだけ後悔する。


 これってフラグ回収したりしないよね?


 妙に嫌な予感を覚えつつも結果を見守る。すると、それぞれの名前の横に投票された人数が数字として表示された。


「どうやら確定したナゾ? 今回追放することになったのは何と魚華ウオッカナゾ?」


 え? 嘘だろう? どうして彼女が追放されないといけない?


 最初の1ターン目から謎を残す展開となってしまった。どうして彼女が追放されることになったのだ? このゲームが終わる頃には、真実が明かされるのだろうか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る