第十三話 桜花賞の後で
〜
ダイワスカーレットが1着でゴール板を駆け抜けることができたことに対して、驚きつつも安堵していると、そこに茶髪の髪をモテの王道であるクラシカルストレートにしている女の子が、茶褐色の馬に乗ったまま近付いて来た。
「優勝おめでとうございます。さすが、第67代目の桜の女王ですね」
「
「なんのことですか? 私は私の作戦で走っていただけですよ? あなたの勘違いじゃないのですか?」
アストンマーチャンに騎乗している状態だからか、彼女はいつもよりもハキハキとした口調ではぐらかしてくる。
どう言う理由なのか知らないけれど、どうやら悪役を押し通したいみたいね。なら、ここは彼女の意思を尊重して、これ以上は追求しないでおきましょう。
これ以上は首を突っ込まないようにしておこうと思っていると、視線を感じた。そちらに顔を向けると、銀髪のゆるふわロングヘアーの女の子が、赤い瞳で睨んでいた。
「うわー、怖いですね。どうやら私が邪魔をしたことを怒っているみたいです。彼女が怖いので、私は早々に退散しますね」
言葉では怖がっているも、全然そのような表情を見せないまま、
「ダイワスカーレットの騎手」
別にあたしはダイワスカーレットとしか契約していないから、真名がバレてもそこまで気にしないのだけど。
「帰国子女の樫の女王」
相手が遠回しな言い方で呼んだので、こちらも彼女のことを二つ名で呼ぶ。
「今回はまんまとあなた達の策に嵌ったわ。でもいいこと! 今回のローブデコルテは本来の力を発揮できていなかったわ。次の
捨て台詞を吐くと、
ローブデコルテは
もし、
彼女との再戦が少しだけ怖いような、楽しみなような、そんな複雑な気分になった。
ダイワスカーレットに騎乗したまま
『やったー! やったー! ダイワスカーレットの勝利だ! 今日は赤飯だね! 帝王が勝っても、
ハルウララの言葉が耳に入った瞬間、思わず吹き出しそうになる。
何言っているのよ。本当にハルウララは面白いわね。レースの疲れなんて、吹っ飛びそうだわ。
観客達から称賛の言葉を受け、その後
その後、優勝者インタビューを受け、差し障りのない受け答えをして、無事にインタビューを終えた。
こうして、今年のあたしの桜花賞は、優勝と言う形で終わった。
その日の夜、あたしはタブレットを見てダイワスカーレットのステータスなどを確認する。
今回のレースで優勝して経験を得た彼女は、ステータスが上昇していた。
次のレースに向けて、アビリティを見直そうと思い、アビリティを管理する画面を開く。
すると、画面には、絆アビリティと言うものが追加されてあった。
「何これ?」
思わず声が漏れる。
絆アビリティと言うものなど聞いたことがない。授業でもアビリティは
何かのバグかしら? そうじゃないと、授業で学んだことが嘘になるわ。
「でも、なんだか面白そうね。試しに装備させてみようかしら」
絆アビリティの項目を押してみると、アビリティの名前が表示される。
「
どうして必殺技がアビリティ化されているのか不明だけど、これってもう一度アビリティとして必殺技が使えるってことじゃないの!
ワクワクした気持ちで装備画面を操作して、ダイワスカーレットに絆アビリティを装備させようとする。
しかし、エラーが発生して装備することができなかった。
画面には『このアビリティはダイワスカーレットには装備することができません』と表示されている。
「ダイワスカーレットには装備ができない。なら、別の馬には装備ができるってこと?」
つまり譲渡専用のアビリティの可能性がある。
「試しに
悪戯をする子どものように思わずニヤつく。
タブレットを操作して、試しに
しかし、またしてもエラーの文字が現れ、送ることができなかった。
「うーん、こうなってくると、バグで存在していないアビリティがまるで存在しているようになっていると考えた方が良さそうね」
肩透かしを食らったような気分になりつつも、あたしはタブレットの操作を止める。
何はともあれ、桜花賞を優勝することができた訳だし、今日はいい夢が見られそう。
心の中でそんなことを思いながら、あたしは眠りに付いた。
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