第十四話 馬生ゲーム 子馬編①

「ねぇ、帝王♡私だよねぇ、だって、私たち幼馴染なんだから、別に2人で子を作ってもおかしくはないよ♡」


東海帝王トウカイテイオウ、あたしを選びなさいよ♡あたしだって、子どもを作りたい♡」


大和鮮赤ダイワスカーレットには負けられねぇ、奇跡の名馬の相手は、アタイがしてやる。アタイとしてくれたら、後悔させないくらいの思いをさせてやるぜ」


「奇跡の名馬さんはぁ、私としてくれますよねぇ。奇跡の名馬さんとのぉ、子どもならぁ、喜んで作りますぅ」


 突然だが、俺は4人の美少女から子作りを申し込まれている。


「これは、これは、面白い展開になったナゾ? 果たして東海帝王トウカイテイオウは、誰と子作りをするナゾね」


 俺の状況を見て、なぞなぞ博士はニヤついた笑みを浮かべていた。


 くそう。彼女は今の俺の状況に手を出せないようになっている。助けを求めることができないか。


「「「「ねぇ、誰と子どもを作ってくれるの♡」」」」


「私だよね」


「あたしよ」


「アタイだ」


「私ですよぉ」


 4人の美少女たちが、俺との子どもを欲している。


 こんなの悪夢だ。いや、夢だったのならどれほど良かっただろうか。けれど、これは夢ではなく現実に起きている。


 時間を巻き戻すことはできないが、もし過去に戻れるのであれば、2時間前に戻りたい。







「丁度良いところに集まっているナゾ? みんなに話があるナゾ?」


 桜花賞が終わった翌日、俺はクロと大和鮮赤ダイワスカーレットと寮へと戻ろうとしていた。途中で魚花ウオッカ明日屯麻茶无アストンマーチャンそして内巣自然ナイスネイチャとばったりと出会でくわし、計6人グループで廊下を歩いていると、なぞなぞ博士が声をかけてきたのだ。


「なぞなぞ博士じゃないか。何か用か?」


「みんなで最新版の馬生ゲームをしないかナゾ?」


『やるやる! まずは私のターンからだ! 帝王のバーカ、アーホ、童貞、ナイスネイチャ』


 突然俺に対して悪態を吐いてきたハルウララに対し、俺は小首を傾げる。


「お前、急にどうした?」


『だって、罵声ゲームでしょう? だから帝王に悪口を言ったのだよ?』


「いや、罵声ゲームじゃなくって、馬生ゲームな。人生ゲームの馬版のことだよ」


 勘違いをしているハルウララに、本当のことを告げる。


『なんだ。帝王に好き放題悪口を言って良いゲームなのかと思ったよ』


 まったく、こいつは相変わらず、直感で物事を考えやがる。


「ちょっと待てッス! ハルウララの言い方だと、ナイスネイチャが悪口ってことなるじゃないッスか! 納得いかないッス! どうしてナイスネイチャが悪口になるッスか!」


 ハルウララの言葉に納得がいかないようで、内巣自然ナイスネイチャは声を上げた。それもそうだろう。自分の名前が悪口扱いされているのだから。


 しかし、一度彼女からこの悪態を吐かれたことがあるので、俺はハルウララの言いたいことがわかってはいる。だが、彼からしたら、当然侵害だろうな。


『だって、ナイスネイチャは名馬の伝説レジェンドオブアフェイマスホースで、虜にする魅力プレイボーイを使うじゃない。だから牝馬たらし=女たらし、だから女たらしのことをナイスネイチャと呼んだ訳だよ』


 言動の発信源であるハルウララが丁寧に説明をする。しかし、彼女の説明を聞いて、内巣自然ナイスネイチャは顔を赤くした。


「侵害ッス! 確かにナイスネイチャはプレイボーイな一面もあるッスけど、それを悪口として言われたくないッス!」


 両手の拳を握って腕を上げ、怒りを露わにする内巣自然ナイスネイチャに、正直同情してしまう。


「まぁ、ハルウララの言うことは気にするな。別にこいつが言ったからと言って、バズることはないから」


『そんなことはないよ! 私が丁寧に1人ずつお願いすれば、きっとみんな使ってくれるはずだもん! ナイスネイチャ=女たらしと言う意味が浸透して、バズるはず!』


 何を根拠にそんなことが言えるんだよ。


「あのう。話しを元に戻して良いナゾ? 馬生ゲームに参加してくれるメンバーを探しているナゾ? 一緒に遊んでくれないかナゾ?」


 馬生ゲームで遊ぶ誘いを受けたが、さて、どうしようか。別に帰ってからすることはなかったはず。


 俺はクロたちに視線を向ける。


「私は別に良いよ。馬生ゲームで遊ぶのも、久しぶりだし」


「あたしも別に良いわよ。帰ってもとくにすることもないし」


「面白そうだから、アタイはやるぜ!」


「皆さんがぁ、するのならぁ、私も遊びますぅ」


 どうやら、女性陣は参加するみたいだ。当然、俺も参加しよう。


内巣自然ナイスネイチャもするよな!」


「嫌ッス!」


 意外にも、即決で断られてしまった。


「何だ? 何か大事な用事でもあるのか?」


「そんなんじゃないッス。ただ、アナログの人生ゲームで遊んだ時に、なぜか『3』しか出なかったッス。最終的には『お前はいつも3しか出ないから、もうルーレットを回すな』と言われて勝手に3マス進まされたんッスよ! ルーレットを回してドキドキしてこその人生ゲームではないッスか。3マス先の結果がわかってしまうから、つまらないッス!」


 内巣自然ナイスネイチャの言葉を聞いて、つい同情してしまう。ナイスネイチャの3への繋がりが、まさかゲームにまで影響を与えるとはな。


「それなら大丈夫ナゾ? 今回の馬生ゲームは、デジタルナゾ? ランダダムで結果が決まるから、安心して欲しいナゾ?」


「ランダムッスか。確かにそれなら、安心できそうッス。分かったッス。俺もやってみるッス」


「これで役者は揃ったナゾ? では、今から空き教室へと移動するナゾ?」


 なぞなぞ博士が歩き始め、俺たちは彼女に付いて行く。


 空き教室の前に辿り着き、なぞなぞ博士が扉を開けた。すると、俺の視界には、ゲームのタイトル画面が映り出す。


「既にゲームの起動はしてあるナゾ? 早く始めようナゾ?」


 空き教室の中に入った瞬間、俺はゲームの世界に入り込んだような感覚を覚える。


 VR競馬場と同じ仕組みで、教室に入った瞬間、俺たちはゲームの世界に入り込んだんだ。


「それでは、始めるナゾ? プレイヤーの皆さんには、質問に答えてもらうナゾ? 質問に答えると、自動的に馬が決まるナゾ?」


 俺の目の前に空中ディスプレイが現れ、質問内容が表示される。画面に表示されてある質問に答えて行くと、あなたはトウカイテイオーになりましたと表示された。


 どうやら、俺はトウカイテイオーの馬生を疑似体験できるようだ。


 他のみんなはどうなったのだろう?


「俺、トウカイテイオーになった。みんなは?」


 気になり彼女たちに訊ねる。


「あたしは、ダイワスカーレットよ」


「アタイはウオッカだ」


「私はぁ、アストンマーチャンになりましたぁ」


「俺はナイスネイチャッス!」


 どうやら、みんな真名通りの名馬となったみたいだな。と言うことは、クロの真名もここで。


「えー、どうして私はヤマニンジュエリーなの! みんなは真名通りなのに、どうして私だけ違う結果になっているの!」


 どうやら、クロだけは真名通りの名前ではないようだ。


「それでは、体験する馬が決まったところで、早速順番を決めるナゾ? 数字が大きい順で始めるナゾ?」


 目の前にルーレットの空中ディスプレイが現れ、画面にタッチする。すると、俺は最大の10になった。


「最初はトウカイテイオー、そしてダイワスカーレット、ウオッカ、ナイスネイチャ、アストンマーチャン、最後にヤマニンジュエリーの順番となったナゾ? それでは、最初のトウカイテイオーは画面を操作するナゾ。因みに、馬生ゲームはファン数の多い人が優勝するナゾ?」


 画面を操作するように言われ、目の前に空中ディスプレイが表示された。


 画面にあるコマンドは、ルーレット、カード、ステータス、マップの4つがある。


 カードの項目を押すと、何も表示されていない。どうやら、最初のサービスカードのようなものはないみたいだな。それなら、今度はマップの確認をするか。


 マップのコマンドを押すと、画面にマップが表示された。正方形の形を型取り、縦横8マスずつになっている。どうやら、同じところをぐるぐると回る系のマップのようだ。


 マップも確認できたし、ルーレットを回すか。


 ルーレットを押すと、画面が切り替わってルーレット盤が現れる。それをタッチすると、動き始めた。


 さて、最初はどのくらい進むことができるのだろうか。

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