第十五話 馬生ゲーム 子馬編②
なぞなぞ博士が用意した最新版の馬生ゲームを遊ぶことになり、俺はルーレットを回す。
ルーレット盤が回転し、針に数字の9が来たところで止まった。
「お、いきなり9マスも進められるのか」
俺の駒が自動的に9マス進む。画面には超ラッキーと表示され、イベントが始まった。
『トウカイテイオーが牧場内を駆け回っていると、牧場の群れのボスと名乗る馬が現れ、声をかけられた。さてどうしようか』
画面に表示されている文章を黙読すると、選択肢が表示される。
1つは『逃げる』もう1つは『声をかける』と出ていた。
子馬だったら、大人の馬は怖いよな。でも、挨拶もしないなんて礼儀がなっていないし、ここは『声をかける』にするか。
選択肢を決めると、イベントが進んだ。
『『おう、中々礼儀の良い子馬じゃないか。気に入った。俺より強くなったら、次の群れのボス候補にしてやろう』と言われた。トウカイテイオーのパラメーターがアップした』
イベントが終了すると、画面にトウカイテイオーのパラメーターが表示され『根性』と『賢さ』のパラメーターが上がったところでターンが終了した。
「次はあたしね。早速ルーレットを回すわよ」
自動的に駒が動き、5マス先で止まる。
画面にはラッキーマスと表示され、イベントが起きた。
『ダイワスカーレットが干草を食べています。まだまだ食べられますが、どうしますか?』
「なるほどね。選択肢は『食べ続ける』と『腹八分目にしておく』か。なら、腹八分目にしておきましょう。食べ過ぎると、太り過ぎのバッドステータスになるかもしれないし」
『やっぱり何事もやり過ぎは良くないよね。ダイワスカーレットのパラメーターがアップした』
そしてステータス画面に切り替わり、ダイワスカーレットの『賢さ』のパラメーターが上がった。
「次はアタイだな。ルーレットを回すぜ」
「そんな! どうして勢い良く回したのに、1マスしか回らないんだよ!」
「勢いを付けすぎたんじゃないの? 逆にゆっくりしたほうが良かったんじゃない?」
彼女のイベントは、ダイワスカーレットの時と同じイベントが発生してしまった。
「今のアタイはむしゃくしゃしている! こうなったら、やけ食いだ!」
「よっしゃー! これがやけ食いの力だ!」
満足のいく結果に終わったようで、
「さて、次は俺の番ッス。早速ルーレットを回して行くッスよ」
3マス先に駒が進み、イベントが始まる。イベントの内容は落ち込みマスと言うものだった。
『今日は牧場の仲間たちと並走だ。勢い良く走っていると、ナイスネイチャは視界に入った牝馬が気になり、走りに集中することができなかった。その結果、3着で終わる『3カード』を手に入れた』
「は、はは。安定の3着ッスか。そうッスか。あはは」
「それじゃぁ、行きますねぇ。それぇ」
『アストンマーチャンが騎手を乗せる練習をしています。ですが、慣れていないので違和感を覚えました。どうしますか?』
「『騎手役の人を振り落とす』と『我慢する』ですぅ? う〜ん、その違和感が何を示しているかによってぇ、選択肢は変わると思いますがぁ、これはゲームですぅ。あまり深く考えないようにしましょう」
『どうやら、ただ慣れていないだけだったみたいだ。練習を重ねると違和感がなくなった。アストンマーチャンのパラメーターが上がった』と表示され、全てのパラメーターが上昇した。
「やりましたぁ。私、運が良いみたいですぅ」
「それじゃ、最後は私ね。最初はルーレットを回すことしかできないから、ルーレットを回して」
クロがルーレットを回す。針のところに6の数字が止まり、彼女のコマが6マス進んだ。
『ヤマニンジュエリーにトウカイテイオーが近付いてきた。どうしますか?』
「挨拶代わりにグルーミングを『する』か『しない』かね。まぁ、別にグルーミングしても良いんじゃない? トウカイテイオーとヤマニンジュエリーの関係なら」
クロがグルーミングをすると言う項目を押すと、トウカイテイオーとヤマニンジュエリーは違いに毛繕いを始める。
そしてトウカイテイオーとの親愛度のパラメーターが上がった。
人生ゲームみたいに、親愛度なんかもあるのか。なら、引退が終わりって訳でもなさそうだな。もしかして老後みたいに、引退後も何かしらのイベントのようなものが用意されているのかもしれない。
ワンチャン子どもを作ってその子どもの活躍もこのゲームに影響を与えそうだよな。
そんなことを思いつつも、再び俺のターンとなる。俺にはカードなんてものを持っていない。なので、ルーレットを回すだけだ。
ルーレットを回し、出た数字は1となる。自動的に1マス進むとアストンマーチャンと同じマスに止まった。そしてイベントが始まる。
『別の牧場に遊びに来たトウカイテイオーは、アストンマーチャンと出会った。2頭は仲良くなり、一緒になって並走する。トウカイテイオーとアストンマーチャンの全てのパラメーターが上がった』
どうやら同じマスに止まると、その場にいた馬絡みのイベントが起きるみたいだな。
滞りなく俺の番が終わり、次は
「次はどのマスに行くのかしらね」
彼女がルーレットを回すと8になる。8マス進むと俺たちを飛び越えて先に進み、イベントが始まった。
『デビューに向けて訓練をするダイワスカーレット。今日はゲート入りの練習だ。しかしダイワスカーレットはゲート内に入ると、錯乱し始める。どうしますか?』
「選択肢は『諦める』と『無理の無い範囲で続ける』ね。こんなの後者に決まっているわ。ダイワスカーレットは、これくらい実際に乗り越えているもの」
「やっとアタイの番かよ。待ちくたびれちまったぜ。今度はゆっくりと回すからな。そりゃ!」
ゆっくりと言いつつ、普通くらいの速度でルーレットは回転する。出た数字は6だった。
「よっしゃ! 6マスだな! チッ、誰とも同じマスには止まらねぇか」
『デビューに向けて練習を重ねるウオッカ。タニノギムレットの娘と言うことで期待されている。この期待に応えるためにも練習に練習を重ねた。ウオッカの全ステータスがアップ』
「よっしゃ! 練習成功!」
「やっと俺の番ッスね」
「なぁ、さっき手に入れた3のカードってどんな効果なんだ」
先ほど彼が手に入れたカードが気になり、訊ねてみる。
「ああ、これは使用すると、全てのルーレットが3になるッスね。まぁ、ナイスネイチャが持っていても、意味のないカードッスね。あはは」
「なんか、ごめん」
気落ちする彼を見て、つい謝罪の言葉を述べる。
「お願いッス! どうか3以外の数字が出てくれッス!」
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