第六話 ローブデコルテ
〜
阪神競馬場のコースを把握したあたしは、次に対戦相手の1頭であるローブデコルテの対策に付いて考えた。
「お祭り娘、あなたの知っているローブデコルテの情報ってあるかしら?」
「そうね、ローブデコルテはアメリカ生まれの馬だよ。父親はコジーン、母親はカラーオブゴールドだね。戦績は17戦3勝で、2着が2回、3着が2回、
ローブデコルテは、唯一ダイワスカーレットが取り逃した
と、考えてしまうのは自惚れかしら? もし、ウォッカが
なぞなぞ博士の言っていた勝負服のなぞなぞではないけれど、本当に未来はどうなるのかわからないわ。ちょっとしたことで人生、いえ、馬生はいくらでも変わってしまう。
「ローブデコルテは、
「もしかしたら、
「そうだね、特定のレースのみに発動と言うよりも、特定のレースに追加効果を発揮する系の技だと思っていた方が良いかもしれないね」
「後は何か知っていることってあるの?」
わたしは他にも情報を得ようと思って彼女に訊ねる。
「うーん、後は彼女の可哀想なエピソードくらいかな?
まぁ、こんなことを考えても仕方がないのでしょうね。
「あ、あと。繁殖牝馬になった後は、ダイワスカーレットの父親であるアグネスタキオンと交配したって記録もあるよ」
「何ですって!」
お祭り娘の言葉に、思わず声を上げてしまう。
まさか、ローブデコルテがアグネスタキオンと交配していたとは知らなかったわ。
つまり、人間で例えたら、離婚した父親の再婚相手が同級生ということになる。
まぁ、競走馬と人間では子孫を作るルールが違うから、自然界で言えばおかしなことではないけれど、何だか複雑だわ。
ダイワスカーレットをローブデコルテと合わせたいような、合わせたくないような。
「まぁ、私が知っている情報はこのくらいだね。多分、今回のレースは今までのレースとは違って、全国の霊馬騎手の中でも選ばれた騎手が出走するレースだから、簡単に勝てるとは思わない方が良いわよ。歴代の桜の女王が出走する可能性も高いから」
「分かっているわよ。油断は決してしないわ。札幌競馬場のメイクデビューで、ハルウララに敗れたのですもの。例えどんな相手でも、全力で勝ちに向かうわ」
あたしは覚悟を決めると、扉へと向かう。
「
「何よ?」
背後から
「そのう。上手く言葉にできないが、頑張ってくれ。きっと
「はい、はい、分かっているわよ。控室で見かけたら、ちゃんと話を聞いてみるわ」
どうしてこんな時に敵となった
なぜかイライラとしてしまい、拳を握る。
あーあ、ダメね。こんな時に嫉妬してしまうなんて。でも、相手がローブデコルテでも、アストンマーチャンでも、歴代の桜の女王だったとしても、絶対に勝ってみせるわ。
あたしは心の中で決意すると、扉を開けて選手控室へと向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます