第三話 魚華登場!
「アタイと勝負しやがれ!」
突然現れた女の子は、こちらに指を向けるなり、勝負を挑んできた。
「ですって。昨日レースをしたばかりなのに、もう次のレースを挑まれるなんてね。まぁ、あの負け馬で有名なハルウララを優勝へと導いたのですもの。当然と言えば当然よね」
女の子が勝負を挑んで来ると、
マジかよ。昨日レースをしたばかりなのに、もう、次のレースを受けないといけないのかよ。
俺はハルウララと霊馬契約を結んでいる。それにより、彼女の逸話の力が発揮し、俺はレースから逃げられない。
挑まれれば拒むことができずにレースに挑み続けなければならない。
しかも今回は、相手の愛馬がどんな名馬なのかも分からない状態だ。前回よりもきついレースになるだろう。
しかも今はクロが居ない。彼女のサポートを受けることはできない。
思考を巡らし、どのように次のレースでハルウララを勝たせるのかの策を思案していると、何故か目の前の女の子は不思議そうに小首を傾げた。
「何を言っているんだ? アタイが勝負したいのはアンタだ。ダイワスカーレットの騎手」
「あ、あたしなの!」
彼女が対戦を申し込んでいたのが自分だと知り、
「ああ、そうだ。アタイの名は
彼女が契約している名馬はウオッカ? なら、勝負を挑む理由も納得だ。
でも、
どうするのか
「はぁー、どうしてあなたとレースをしないといけないのよ? ダイワスカーレットとウオッカが運命的なライバルだった? だからそれがどうしたと言うのよ。それはあんたが勝手に思い込んでいることじゃない。そんな妄想に付き合っているほど、あたしは暇じゃないのよ」
なんて返答するのか、
「そうか。そうか。引き受けてくれないのか。それじゃ仕方がないな…………って、何でだよ!」
「何で勝負を受けないんだよ! アンタ、ダイワスカーレットの騎手何だろう! だったら、アタイが勝負を申し込みたい気持ちだって分かっているはず」
「何も分からないわよ。別にあたしがダイワスカーレットの騎手だからと言って、ウオッカと競う必要性は感じられないもの」
「アンタになくとも、アタイにはあるんだよ! だからレース勝負をしようぜ!」
「嫌よ。何度も言わせないで。あたしは暇じゃないの」
「今日がダメなら、明日は?」
「無理ね」
「明後日は?」
「予定が埋まっているわ」
「なら!1ヶ月後!」
「その日も予定が入るかもしれないから無理ね」
どうにかしてダイワスカーレットと競いたいようだ。
「100年後なら空いているわよ」
「その時はお婆ちゃんになっているじゃないか! それに生きていると言う保証もない! こうなったら、奥の手だ!」
業を煮やしたと思われる
「こうなったら、直接タブレットに申し込みだ!」
声を上げ、タブレットを経由して勝負を申し込んだことを
『レース勝負を拒否されました』
「何でえええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
タブレットから無機質な音声が流れた瞬間、
「何をしてこようが、あたしはあなたのレースを受けないから」
「くそう。こうなったら、何が何でもレースを受けてもらうからな!」
何度も拒否され続けたのにも関わらず、彼女の目には希望の光が残り続けた。
その努力は正直にすごいと思うが、よくめげないな。
そんなことを思っていると、
「ダイワスカーレットの騎手、どうせ真名も名馬と同じ名前なのだろう? アンタが受け入れると言うまで、アタイはアンタたちを通さないからな」
強い意志を感じさせる視線を送りながら、彼女は通行止めをすると言ってきた。
さすがにそれはやばい。このままでは、俺まで巻き込まれて寮に帰ることができない。
どうしたものかと悩んでいると、
「はぁ、さすがにここまでされたら良い迷惑だわ。他の人の邪魔にもなるし、もう折れるしかないわね」
「なら!」
根負けしたと言う事実を知った瞬間、
これで寮までの道が解放された。ようやく部屋に戻って休むことができる。
「隣にいるハルウララの騎手である、奇跡の名馬を倒すことができたら、レースを引き受けてあげるわ」
って、俺かよ!
思わず心の中で叫んでしまった。まさかここで俺にまで火の粉が飛んで来るとは思わなかった。
「言質取ったからな! 今更やっぱりなしなんて言うなよ!」
人差し指を
「奇跡の名馬! アタイと勝負だ!」
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