第二十五話 優駿牝馬の出走名馬

大和鮮赤ダイワスカーレット視点〜






 解説担当の虎石から、騎乗する名馬の顕現を頼まれたあたしは、ダイワスカーレットをこの場に出現させる。


「ノアノハコブネ、メジロラモーヌ、アドラーブル、スマイルトゥモロー、シルクプリマドンナ、コスモドリーム、エアグルーヴ、ローブデコルテ、シーザリオ、ダンスパートナー、ベガ、イソノルーブル、ダイワスカーレット、ライトカラー、カワカミプリンセス、、ミッキークイーン、トールポピーですか。ダイワスカーレット以外は全て優駿牝馬オークス優勝馬たち。これは激しい走りが期待できそうですね。では、厩務員きゅうむいんの皆さんお願いします」


 虎石が扉に向けて声をかける。すると扉が開かれて厩務員の人たちがやって来ると、ダイワスカーレットを預ける。


『それでは行って来ますわ。わたくしの可憐なる歩きで、皆様を魅了して1番人気を勝ち取ってみせますわ』


「普段通りでお願いね」


 ダイワスカーレットに声をかけて彼女が出て行くのを見守る。


 それにしても、今回のレースはダイワスカーレット以外全てが優駿牝馬オークス優勝馬だなんて。今年度の二冠を達成するにしてはハードルが高く、高レベルな牝馬たちばかりとの走りになるわね。


 ノアノハコブネは、優駿牝馬オークス優勝後は大敗続きでその年の阪神大賞典で競走中止後引退した馬、おそらく、そこまで脅威とはならないと思って良いわ。


 メジロラモーヌは最高6連勝をした実力馬、G Iレースも3回優勝し、クラシック牝馬二冠を取っている。間違いなく優勝争いに入ってくるでしょう。


 アドラーブルは牝馬二冠を達成後、エリザベス女王杯4着となった後に引退している。やや人気薄となっている時に限って好走する馬である以上、油断はしない方が良さそうね。


 スマイルトゥモローは、運良く優駿牝馬オークスを優勝することができた牝馬、優勝後の成績は良くないことから、運で勝ち取ったと推測できる。でも、今回も運を味方に付けることができたら、ワンチャンがありそうで怖い牝馬よね。


 シルクプリマドンナは、早熟だった牝馬、デビューから優駿牝馬オークスまでは全て馬券内の成績だったけれど、それ以降は敗戦続き、でも、彼女の最後の輝きとも言える舞台だからこそ、力を発揮されると厄介なことになりそうだわ。


 コスモドリームは、オーストラリアTまでの10レースは全て馬券内と言う成績を納めている。宝塚記念で大敗後、その次の高松宮杯でも負け、その後引退している。実力は示しているし、優勝争いに入り込んできそうよね。


 エアグルーヴは言うこともないでしょうが優勝候補の一角。19レース中、馬券外だったのはたったの2回しかない。強敵中の強敵よ。


 ローブデコルテは、残念だけど可もなく不可もなしといった微妙な成績、スマイルトゥモローと同じように、運良く優勝したと言ったイメージだけど、騎乗する袖無衣装ローブデコルテが彼女の力を引き出した場合はまた違ったレースをするかもしれない。


 シーザリオは戦歴6戦5勝、2着1回と言う成績を起こしている。詳しくは分からないけれど、アメリカのアメリカンオークスで優勝後に引退した。実力は間違いないわ。彼女も優勝争いに加わって来るでしょうね。


 ダンスパートナーは、G Iレースを12回も経験している。強豪たちとの走りに慣れている以上、メンタル面では強いはず。


 ベガは優駿牝馬オークス優勝後のエリザベス女王杯までは全て馬券内だったけれど、人気投票を勝ち取った名馬たちの集まる有馬記念で、初めての大敗を経験してから負けが続き、そのまま引退してしまった牝馬。全盛期の状態で召喚される以上、弱い馬とは言えない。


 イソノルーブルは、デビューから5連勝の実力がある。でも、エリザベス女王杯で2番人気だったのにも関わらず、16着だったことで限界だと悟ったのか、そのまま引退することになった牝馬。


 ライトカラーは特に目立った成績はない。運は強そうだけど、あまり脅威とは思えないかもしれないわね。


 カワカミプリンセスはデビューから5連勝と言う実力を持っている。けれど、秋華賞後のエリザベス女王杯で大敗してからは走りに切れがなくなり、馬券外になることも多くなった牝馬


 ミッキークイーンは、7戦連続馬券内と言う実績を持つわ。G Iレースでも何度か馬券内に入る力を持っている


 トールポピーはデビュー以来5戦連続馬券内の成績を持つ。これだけ見れば一見強そうだけど、3勝クラスになってから大敗続きで引退していることから、あんまり脅威とは思わなくても良さそうね。


 でも、半数以上の馬はどの馬が優勝してもおかしくはない状態であることには変わらないわ。


 油断はできない。いくらダイワスカーレットが、生前1着か2着しか取ったことがないとび抜けた実力を持っていたとしても、最後まで何が起きるのか分からないのが、霊馬競馬よ。


 一瞬でも気を抜くようなことになれば、足元を掬われて優勝を逃すかもしれないわ。


 前回の桜花賞で優勝したとしても、挑戦者の気持ちで挑むとしましょう。

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