第二十六話 皐月賞決着
〜
最終直線に入った。だが、俺は柵側にある水溜りで、トウカイテイオーの速度が落ちることを懸念して外側を走らせた。しかしそんな中でも、ゴールドシップとエアシャカールは柵側を走り、速度を落とすことなく直線を突っ切る。
更に直線に入っても、アルアインやイシノサンデーが
2位だったものが、現在7位まで順位を落としてしまっている。
「序盤のリードを保つ見込みが甘ったナゾ? さすが皐月賞馬が集められた皐月賞だナゾ?
隣を並走しているナゾに騎乗しているなぞなぞ博士が、ポツリと呟くのが聞こえてきた。
ナゾは序盤に必殺技を使用してしまっているため、もう使うことはできない。だが、トウカイテイオーはまだ発動させてはいない。
逆転するチャンスはまだあるはずだ。
先頭を走るエアシャカールが左右に斜行している。その影響で2番手以降は思うように追い抜けない状況だ。
エアシャカールが斜行している範囲で考えれば、大外を走れば追い抜けるかもしれない。それを実現するには、トウカイテイオーも
「トウカイテイオー、お前も
『あー、悪いんだが、それは無理だ』
「え?」
必殺技を使うことができないと即答され、思わず声が漏れてしまった。
「必殺技が使えないってどう言うことだよ!」
『俺の
必殺技を使用するのに条件があると告げられ、俺は絶望の淵に立たされた。
現在の順位を考えると、例え残りのアビリティを使用したとしても、
くそう。こんな時にそんな真実を告げてほしくなかった。
『悪い、俺も伝えそびれた。だが、皇帝の息子として無様な走りをする訳にはいかない。なんとかして5着以内に入ってみせる』
入賞してみせると言うが、それではダメなんだ。1着を取れなければ。
「くそう。トウカイテイオーの必殺技が使えれば、まだ可能性があると言うのに……うん? 必殺技? そうだ!」
どうして忘れていたのだろうか。トウカイテイオーには、もう一つの必殺技があるじゃないか。
使えるかどうかは不明だ。だけど、これに賭けるしかない。
トウカイテイオーをエアシャカールの斜行範囲外にまで移動させ、準備を完了させる。
『200メートルを切った! 先頭はエアシャカールのまま、最後の坂を駆け登る!』
「絆アビリティ!
絆アビリティ名を叫び、トウカイテイオーに鞭を入れる。その瞬間、彼の速度が一気に上がり、考えられない速度で追い上げをみせる。
『先頭はエアシャカール! しかしここで外側からトウカイテイオー! 凄まじい末脚で駆け上がってくる!』
実況担当の中山が、俺が順位を上げたことを告げると、
「やっと追い付いた。これもお前の計算の内か?」
煽るような言葉を投げかけた後、俺はゴールに視線を向ける。
ダイワスカーレットは、生前1着か2着しか取っておらず、生涯連対と言う偉業を成し遂げた。そんな彼女の伝説が必殺技の効果は1番を取る力を発揮するだ。終盤で使用すれば、どんな不利でも覆すことができる。
アプリゲームだったら、絶対に星5の人権持ちとなるだろう。
最後の坂を越えて、平坦なコースに戻った。けれど、油断はできない。このまま一気に叩き込む!
「アビリティ発動! 闘魂注入!」
最後のアビリティを使用し、トウカイテイオーに鞭を入れる。
『先頭はトウカイテイオー! しかし、後続も追い上げてきた! 2番手のエアシャカール、3番手のゴールドシップが距離を詰め、トウカイテイオーはリードを失う! 更に後方からイシノサンデーが上がってきた! 四天王の意地を見せるか! 横一杯に広がり、ここでナゾも追い上げて来る!』
僅かに獲得したリードも殆どない状態となった。やっぱり二冠馬同士の争いとなると、実力は殆ど変わらないのかもしれない。だけど、勝負に負ける訳にはいかない俺のこのレースにかける想いや覚悟は、他のやつらよりも上だ。
「帝王の維持を見せろ! トウカイテイオー!」
『うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!』
『ゴールイン! 大混戦となった皐月賞、勝ったのはトウカイテイオー! 2着以降は写真判定と言う大混戦となりました』
「え? 何? 何が起きたの? トウカイテイオーがダイワスカーレットの技を使った?」
「そんな風に見えたけど?」
ゴール板を駆け抜け、
そう言えば、無我夢中で使ったけれど、絆アビリティって、有効扱いになるのだろうか? もし、イカサマ扱いをされたら、失格となってしまう。
勝ったのに不安でしょうがない気持ちでいると、アナウンスが聞こえた。
『えー、会場にお越しの皆様も、もしかしたら気付いているかと思いますが、トウカイテイオーがダイワスカーレットの必殺技を使用した件ですが、協議を行うことになりました。話し合いの結果では、順位の入れ替わりが起こりますので、少々お待ちください』
競技が行われる。そう言われ、俺の鼓動は早鐘を打った。
もし、失格となってしまっては、俺は負けてしまうことになる。
「
心ここに在らずの状態でいると、
「約束を覚えているだろうな。もし、失格となった場合はお前の負けだ。風紀委員に入ってもらう……と言いたいところだが、お前は全力を出して俺の計算を上回った。今回は完敗だ。風紀委員に入る件は白紙に戻させてもらう」
固唾を飲んで見守ると、再びアナウンスが流れる。
『皆様お待たせしました。協議の結果、有効となりました。よって、今年度の皐月賞優勝馬は、トウカイテイオーに決まりました』
「スゲーぜ! トウカイテイオーがダイワスカーレットの技を使うなんて!」
「いったいどうすれば使えるんだよ! そんなアビリティ売っていなかったよな!」
今回も危ないレースだったが、どうにか皐月賞を優勝することができた。
掲示板には、1着にトウカイテイオーの番号である2の数字が表示されていた。
掲示板の結果
1着2番
>3/4
2着17番
>ハナ
3着18番
>クビ
4着7番
>アタマ
5着3番
払い戻し名 払い戻し金
単勝 560
馬連 2007P
馬単 4874P
三連単 17584P
三連複 2676P
ワイド2−17 453P
2−18 635P
17−18 503P
複勝 2番 448P
17番 520P
18番 304P
(100P購入での計算)
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