第六話 八百長騎手追放ゲーム⑥

 俺たちはナゾナゾ博士の誘いで八百長騎手追放ゲームと言う、人狼をモチーフにしたゲームで遊ぶことになった。


 役職は人狼と同じである八百長騎手、それに力を貸す共犯、村人と同じ騎手、相手の役職が人狼サイドか村人サイドかを見抜く力を持った裁決委員、追放した者が村人サイドか人狼サイドかを知ることができるトラックマン、白確である遅刻騎手、毎ターン1回だけ誰かを守ることができる騎乗依頼仲介者、そして第三陣営であるヤクザがある。


 ランダムで役職が選ばれる中、俺は村人となった。そして八百長騎手は3人居る。


 プレイヤーにはステータスが設けてあり、そのパラメーターによって特殊能力が使えるスキルが存在する。


 スキルは他人をコントロールしやすくできるカリスマ、相手の嘘を見抜くことのできる直感、自分の発言の裏を見抜かれにくくする演技、自分の発言が相手に聞こえなくさせることができるステルス、論理的な発言によって他のプレイヤーに影響を与えるロジック、自身がピンチの時に助けて貰えやすくなるラブリーと言うステータスがあり、俺は直感とラブリーに特化したステータスにした。


 そしてゲームが始まり、1ターン目は1回も発言していない魚華ウオッカが追放され、夜のターンでは周滝音アグネスタキオンが追放された。


 2ターン目は兜城カブトシローの母親が乱入して来たことで、彼を追放することになった。しかし兜城カブトシローは1ターン目で裁決委員を名乗っている。彼が真の裁決委員だった場合はこれからの推理に支障が出ることになるだろう。


 彼の他にも貴婦人ジェンティルドンナ生徒会長とルドルフさんが裁決委員を名乗っている。ルドルフさんは俺を白出ししてくれているので、どちらかと言うと俺は彼を信じたい。


そして夜のターンとなったがこのターンは誰も追放されることがなかった。きっと騎乗依頼仲介者が守ってくれたのだろう。


 3ターン目は貴婦人ジェンティルドンナ生徒会長とルドルフさんがナゾナゾ博士は八百長騎手であることを告げた。黒出しされた彼女は当然否定するも、大気釈迦流エアシャカールの倫理的は発言によって確定し、俺たちはナゾナゾ博士を追放することになった。


 その後夜のターンとなり、追放した人物がどっちサイドの人間だったのかを知ることができる能力を持つトラックマンの明日屯麻茶无アストンマーチャンが追放されていた。これで追放した人物がどっちサイドの人間なのかが分からなくなった。


 残ったのは俺、クロ、大和鮮赤ダイワスカーレット内巣自然ナイスネイチャ大和主流ダイワメジャー大気釈迦流エアシャカール貴婦人ジェンティルドンナ生徒会長、ルドルフさん、袖無衣装ロープデコルデの計9名だ


「ナゾナゾ博士が追放されましたので、これからわたくしが仕切らせていただきます」


 貴婦人ジェンティルドンナ生徒会長が、追放されたナゾナゾ博士に変わってこの場を仕切るようだ。


「まずは裁決委員の発表からですね。わたくしは大和主流ダイワメジャーを調べました。彼は白です」


『では、次はワシだな。ワシはクロを調べた。彼女は白だ』


 2人のどちらかは嘘、もしくは2人とも嘘をついている。


 俺は嘘を見抜くことができる力を持っているが、今のところは何も発動してくれない。この力は演技のパラメーターが高いプレイヤーに対しては発動し難い。


 だけど、これがあれば俺の中では推理しやすくなるはずだ。今は発動してくれることを祈るしかない。


 そう思っていると、大気釈迦流エアシャカールが口を開く。


「前回黒確のナゾナゾ博士を追放したが、ここで俺から怪しいと思うやつを告げる。それは内巣自然ナイスネイチャだ。ゲームが始まって一言も発言をしていないじゃないか。発言をしなければ注目が集まることはない。そうやって自身への疑いを逸らそうとしているかのよう思える」


 確かに、その可能性もあるな。一応は疑っておいても良いだろう。裁決委員の誰からも調べられていないわけだし。


 思考していると、彼に続けてクロも発言を始めた。


「確かに、何も言わないって言うのは私も変だと思う。私も彼を疑うようにしておこうかな。みんなも彼を疑わない? 現段階では、推理を進めるためにも誰かを疑わないと始まらない訳だし」


「ちょっと待つッス! 何も発言していないからって疑わないで欲しいッス!」


 疑われ始めたことで内巣自然ナイスネイチャは焦ったのか、声を上げ始める。


「疑われた途端に声を上げるとは、ますます怪しいな。みんな内巣自然ナイスネイチャに投票してみないか」


 大気釈迦流エアシャカールの発言後、俺の画面に『投票しろ』の影響を受けています。と表示がされる。


 このスキルの影響を受けた者は、指定した人物を投票しなければならない。


 そして『投票しろ』はカリスマのスキル。前回彼が使用した『論理的に考えて敵だ』はロジックのスキルだと言うことを考えると、大気釈迦流エアシャカールロジックとカリスマに特化したステータスのようだな。


「悪いが、内巣自然ナイスネイチャは八百長騎手ではない。俺はそれを証明することができる」


 内巣自然ナイスネイチャが疑われる中、彼は八百長騎手ではないと大和主流ダイワメジャーが言ってくる。そしてそれを証明することができると言ってきた。


 内巣自然ナイスネイチャは白確であると証明することができると言っていたが、どうやって?


「ほう、面白いな。どうやって証明すると言うのだ?」


 俺の疑問を代弁するかのように、大気釈迦流エアシャカールが訊ねる。


「そんなことは簡単だ。俺と内巣自然ナイスネイチャは遅刻騎手だ。よって八百長騎手なんてことはありえない。俺たちはこれまで無言を貫いていたのは、八百長騎手から狙われにくくするためだ。発言力のあるやつほど影響力があるからな。そのことを考慮して、できるだけ議論中は黙っておこうと夜のターンの間に話し合っていたのだ」


『遅刻をするとは、騎手の風上にも置けませんな。遅刻してごめんなさいとみんなに謝罪してください』


 え?


 俺の画面にルドルフさんの入力した文字が表示される。


 確かに2人は遅刻騎手だけど、それはあくまでも役職の話であって、リアルに遅刻している訳ではないのだけど。


そう思っていると、貴婦人ジェンティルドンナ生徒会長が小さく息を吐く。


「まったく、どうしてゲームの序盤で明かしてくれなかったのですが、わたくしは白確のあなたを調べてしまったではないですか。貴重な情報を得る機会を1ターン無駄にしました。とりあえず謝ってください。生徒会長命令です」


 苦笑いを浮かべる中、貴婦人ジェンティルドンナ生徒会長までが謝るように促す。


 いや、それくらい許してやろうよ。彼だってちゃんと考えた上で黙っていた訳だし。


「でも、内巣自然ナイスネイチャがゲーム開始時間に遅れて遅刻したのも事実よね。まだちゃんと謝ってもらっていないし、この機会に謝ってしまえば?」


 生徒会長を援護射撃するかのように、袖無衣装ロープデコルデまでもが謝罪するように促す。


「兄さんには悪いけれど、ゲームが進行しないから謝ってよ。もう残り時間も少ない」


「くっ、わ、わかった。正直納得いかないが、妹の言う通りでもある。内巣自然ナイスネイチャ、やるぞ」


「どうしてこうなってしまうッス!」


 うん、それは俺もそう思う。どうして2人がリアルに謝らなければならない。


「遅刻してしまい、申し訳ございません」


「遅刻してしまってごめんなさいッス!」


 2人が謝り、その瞬間に議論終了を知らせるファンファーレが鳴り響く。


 今回の議論はあんまり得られるものがなかったな。さて、誰に投票しようか。取り敢えず発言の多い大気釈迦流エアシャカールにしておくか。


 対象が白確だったので、スキルの効果は打ち消されている。


 誰に投票すべきかが分からず、適当に大気釈迦流エアシャカールに投票をする。その結果、誰を追放すべきかで1番人気になったのはルドルフさんだった。


 まぁ、一番ヘイトを集めているだろうし、仕方がないか。でも、俺的には情報源になるから、やめて欲しかったな。


 そう思っていると画面にルドルフさんが『土下座を使いました』と表示される。


『すみませんでした! 心を入れ替えるので、どうか今回だけは追放をしないでください!』


 そのような謝罪文が表示される。


 しかし彼は映像がなくアイコンだけの画面なので、全然心がこもっていない。


 土下座のスキルはステルスのステータスが高いと使用が可能だ。一定の確率で成功すれば追放されずに済む。


 ランダムでの判定の結果、彼は追放を免れる結果となった。


『へへ、すまんな。次からは心を入れ替えて真面目にしてやるから』


 そして夜のターンとなり、それぞれが行動を起こす。そして夜のターンが終わり、昼のターンとなった。なんと、今回八百長騎手から追放された者は誰も居なかった。


 どうやらまだ騎乗依頼仲介者は生き残っているようだ。

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