第八話 勝率0パーセントの枠
勝率が0パーセントだとクロから告げられ、俺は驚きよりも困惑の方が強かった。
「勝率が0パーセント? だって、さっきは7パーセントって言っていたじゃないか?」
7パーセントから0パーセントは大きすぎる。そもそも0と言うのは絶望的数字だ。確定していると捉えることもできる。
「どうして、急に勝率が0パーセントになるんだよ?」
『何かクロちゃんの機嫌を損ねるようなことをしたんじゃないの? 謝ったら7パーセントに戻るかもしれないよ』
「いや、機嫌で勝率を変えられても困るって。そもそも、冗談でクロはこんなことは言わない。根拠があって言っているのだろう?」
ハルウララに返答しつつ、クロに顔を向ける。すると、彼女は無言で頷いた。
「勝率7パーセントって言うのは、船橋で行われる
クロがタブレットを操作して、新たに空中ディスプレイを表示させる。
すると、2024年から2015年までの一覧が表示された。
ひとつずつ確認していくと、3枠の成績はクロが言った通りに1着を取ったことがないと言う結果に終わっていた。
2024年キャッスルトップ7着
2023年シャマル4着、スピディーキック6着
2022年テイエムサウスダン3着、タイムフライヤー9着
2021年カフェファラオ5着
2020年アルクトス4着
2019年モーニン7着
2018年オールブラッシュ2着
2017年モーニン3着
2016年サウンドトゥルー5着
2015年ベストウォーリア2着。
確かに、この年代の10年間で言えば、3枠の馬が1着を取った回数は0回だ。勝率0パーセントの枠だと言えば納得せざるを得ない。
「クロ、もっと遡ってみることはできるか?」
「ちょっと待ってね。今調べてみるよ」
それよりも過去のレース結果を見ていく。だが、結果は絶望的だった。どの年代も3枠の馬が2000年代では優勝しておらず、1997年に、ようやく3枠のバトルランが1着を取っている。しかし、それよりも過去は連続で3枠は優勝していない。
バトルランが優勝したこの時には、すでにかしわ記念はG IではなくG IIIの時のものとなっており、参考にはできない。
少なくとも、G Iクラスとなったかしわ記念での3枠が優勝した回数は0回だ。
3枠の馬は優勝できないと言うジンクスが誕生するのも頷ける。
「ごめんね。不安にさせるようなことを言ってしまって」
申し訳なさそうにクロが謝罪をしてくる。だが、彼女が悪いと言うわけではないので、謝らないで欲しい。
「クロが謝ることはない。それに2025年のかしわ記念なら、もしかしたら3枠が1着を取っているかもしれないじゃないか」
「そうですぅ。奇跡の名馬さんの言う通りですぅ。希望は持った方がいいですよぉ」
彼女を励まそうと言葉をかけると、
「そうね、2人の言う通りよ。早く競馬史に関するテータが復旧してくれると良いのだけど」
3000年代である現代だが、謎の電波障害により、2024年までの歴史が閲覧できないようになっている。
なので、2025年の競馬がどんなものだったのかは知ることができない。復旧工事は行われているようだが、復旧には時間がかかとのことなので、いつ2025年のデータが閲覧できるのかは不明な状況だ。
「とりあえずは2024年の映像を見てみましょうか」
クロがタブレットを操作すると2024年のかしわ記念の映像が表示される。
キャッスルトップは後方2番手からの競馬で、馬群は縦長の展開となっていた。
後半には映像に入ることがほとんどなく、追い上げ力が足りなくって7着で終わった感じだ。
「次に2着だった2015年の映像を見せるわね」
一度空中ディスプレイが消え、再び画面が現れる。そして2015年の映像が始まった。
ゲートが開いた後、ベストウォーリアは2番手に付け、そのまま先頭集団を維持していた。そして後半は先頭を走っていたが、ゴール前でワンダーアキュートに差されて2着に終わっている。
惜しいパターンと大敗パターンを比べると、やはり先行力が大事だと言うことが分かる。
でも、ハルウララは中断に控えて最後の直線で追い抜く差しだ。コースとの相性は悪いと言える。
やっぱり、ハルウララで1着を取るとするならば、先行できるだけのスピードとパワーそしてスタミナが要求されるだろうな。
今回使用するアビリティはこれらをカバーできるものを選ぶ必要がある。
3枠の馬は勝てないと言うジンクスが、コースのギミックとして存在して可能性もある。アビリティ選びは慎重にしていた方が良いだろう。
もう一度アビリティ購入画面を表示させ、俺はハルウララを勝たせることができそうなアビリティを吟味する。
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