第二話 ウララ仮面参上!
〜ハルウララ視点〜
『ハァ、ハァ、ハァ、ハァ!』
私は全速力で走った。帝王を救うヒーローとなるために。
急いでレース会場内に入り、出場騎手の控え室へと向かう。すると、廊下の前には、十数人の人が待機していた。
その中には、セミロングの黒髪の女の子の姿も居る。
クロちゃんだ! 彼女なら、扉を開けてくれるはず!
『退いて! 退いて! ウララ仮面のお通りだ!』
「え! ハルウララ!」
『クロちゃん! その扉を開けて!』
「分かった! ごめん、そこを退いて!」
私のお願いを聞き入れてくれたクロちゃんは、
「奇跡の名馬さん、そろそろ出場させる馬を出していただかないと困るのですが?」
「ヒャヒャヒャヒャ! 悪足掻きはやめろ! トウカイテイオーをさっさと顕現させな! これ以上は時間の問題だぜ! 俺は早くライデンリーダーと一緒に走りたいんだ!」
扉が開かれた瞬間、トラちゃんと知らない男の声が耳に入ってきた。そして私の視界には、絶望に顔を歪めている
帝王にあんな顔をさせるなんて! 悪者はこのウララ仮面が倒してやる!
『ウララ仮面参上! 帝王のパートナーはこの私だ!』
声を張り上げた瞬間、私は
「ハルウララ、お前、来てくれたのか!」
『ハルウララ? 誰ですか? 私は正義のヒーロー、ウララ仮面! 帝王を悲しませる悪いやつを倒しに来た通りすがりの正義の霊馬だ!』
「良く分からないが、来てくれてありがとう。虎石、俺はハルウララと今回のレースに出走する」
『だから! ハルウララではなく、ウララ仮面って言っているでしょう!』
「えーと、取り敢えずこれで出走する馬が決まりましたね。では、時間がないので霊馬は直ぐに
トラちゃんが入るように促すと、クロちゃんたちが入って来る。そしてクロちゃんは急に私の首に腕を回すと、抱き締めてきた。
「本当に良かった! ハルウララなら、絶対に見捨てないと思っていたけれど、ギリギリになって現れないでよ! 心臓に悪いじゃない!」
涙を流しながら、言葉を漏らすクロちゃん。
そっか。私は帝王だけが困れば良いやと思っていたけれど、クロちゃんや他のみんなも心配させていたんだ。なんだか悪いな。
『クロちゃん! 私はハルウララなんかではなく、ウララ仮面なんだから! 勘違いをしないでよ!』
「何を言っているのよ! サンディオの人気キャラのギティちゃんの絵の入ったマスクは、どこからどう見ても、ハルウララの証じゃない!」
クロちゃんの言葉に、首を傾げる。
あれ? どうしてあのキャラクターを隠しきれていないの? お花で隠していたはずなのに?
疑問に思った私は、部屋の中に設置されてある鏡を見る。すると、マスクには花などが付いていなかった。
そして床に落ちている私のヌイグルミに視線を向ける。人形には、マスク部分に摘んだ花があった。
『ウソ! 顕現した際、お花まで再現できないの! これじゃ、変装した意味がないじゃない!』
驚きを隠せない中、次々と名馬たちが部屋から出て行く。
『ハルウララか。これは良い、シルクロードステークスの借りを返させてもらう?』
驚いていると、黄褐色の毛色で青色のマスクを被った馬が、すれ違いの際に声をかけてきた。
『あなた誰?』
『コパノフウジンだ! 前回のシルクロードステークスで、競り合いの際に2着で敗れただろう!』
『ごめん、私興味の無い馬の名前は覚えられない』
『なんだと! 俺は前回のレースが死ぬほど悔しかったんだぞ! 負け馬に負けてしまったせいで、俺のプライドはズタズタだ! 絶対に今回のレースは勝ってやる!』
「おい、何をしているんだ! 早く歩け! みんながお前の登場を待っているんだから」
負け犬……いや、負け馬の遠吠えを叫びながら、コパノフウジンと名乗った馬は
「ほら、ハルウララも行こう。みんなを安心させないと。それじゃ、帝王行って来るね」
「ああ、頼んだ。俺も時間になったら、そっちに向かう」
クロちゃんが帝王に声をかけると、私は彼女に引っ張られ、
「ああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! ハルウララのやつがいやがる! どうやら駆け付けてくれたみたいだな。アタイが
「本当に心配したのだから! このレースが終わったら、みんなに謝りなさいよ!」
「本当に良かったですぅ。アビリティが購入できないトラブルが起きたのでぇ、どうしようかと気が気でなかったですぅ。でも、安心しましたぁ」
パドックに入るなり、
「みんな心配していたのだからね。確かに、騎手は色々な馬に乗るわ。それは馬からしたら、他の馬に取られたような印象を持つかもしれない。でも、騎手は一頭一頭を大事にしているのよ。そしてレースで勝たせるために、必死に頑張っている。それは霊馬と霊馬騎手の関係になっても変わらないわ。だから、分かって欲しいの。帝王は自分のためにトウカイテイオーに乗るのではなくって、縁が結ばれた馬に勝利をプレゼントするために乗るの」
『うん、クロちゃんに言われると納得するよ。本当に帝王は乙女心が分かっていないよ! 私がどれだけトウカイテイオーに嫉妬しているのかも分かっていないのに、騎手なんだから他の馬に乗るのは当たり前なんて言うんだよ! そんなことを言われたら、流石に温厚で有名なハルウララでも、怒ってしまうもの! プンプン!』
「温厚? どこが? 気分屋で、ワガママで自分勝手な馬なのに?」
本当の性格を言われた私は、胸に何かが突き刺さる思いに駆られる。
『もう! そこは嘘でも「そうだね」って言って欲しかった! クロちゃんの意地悪!』
「あはは、ごめんなさい。でも、ハルウララが元気なようで安心した。これなら、帝王を任せられる。身勝手なお願いだけど、帝王を勝たせてあげて」
『もちろんだよ! 霊馬と霊馬騎手は一蓮托生! 人馬一体となって、今回のレースは絶対に勝ってみせる! 負けて仲直りよりも、勝って仲直りしたいもの!』
「そうだね、一応帝王にも伝えているのだけど、今回もハルウララにコースを説明しておくね」
クロちゃんがニコッと笑みを浮かべながら、私たちは
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