第二十三話 優駿牝馬当日
〜
とうとうこの日がやってきた。
牝馬三冠の第二戦、
「それじゃ、
レースへの意気込みを心の中で呟くと、クロが
あたしたちは毎回作戦会議で使っている空き教室に居り、いつものようにこれから
「
『そうだよ!
「ええ、言われなくとも優勝を目指すわ。でも、優勝したいと思うのは、参加する他の騎手たちも同じことよ。最終的には、最後まで諦めなかった者が勝つと思うし、全力で挑ませてもらうわ」
「ゴホン。それでは、そろそろ
クロがタブレットを操作すると、空中ディスプレイが表示され、東京競馬場のコースが映り出される。
「スタート地点は
距離ロスを避けるためには内側を走る必要がある。でも、内側を走れば、外側の馬が壁となって間を掻い潜るのは難しくなるわね。
でも、それができてこそ、樫の女王と言う称号に相応しい牝馬となれる。
上手くコース取りをできるかどうかは、手綱を握るあたしにかかっているわ。
「そして残念なことに、今回の優駿牝馬でも、勝率0パーセントの枠が存在するわ。と言っても、2013年から2024年の10年間でのデータだけど」
勝率0パーセントと言う言葉を聞いた瞬間、心臓の鼓動が早鐘を打った。勝率0パーセントの枠と言うジンクスは強力よ。
「因みにその枠番は何番なの?」
「4枠よ。十年間だけ遡ったデータでは、4枠の馬は良くて2着や3着で終わっているの。しかも2021年に関しては、4枠7番の馬が2着、4枠8番の馬が3着となっていたわ。2023年までは、6枠の馬も10年間の間は勝率0パーセントだったのだけど、2024年にチェルヴィニアが優勝したことで、勝率0パーセントの枠は4枠だけとなったわ」
「そう、4枠が勝ちにくい枠番なのね。でも、それ以前は4枠の馬が優勝しているかもしれないのでしょう?」
「そうね。私も全てを調べる時間はなかったし、競馬予想では大体過去10年間のデータを参考にする人が多いから、私も2013年で切り上げたの」
謎の電波障害により、現代は2024年のデータまでしか閲覧できないようになっている。少しずつ復旧作業が行われており、昨日2024年の菊花賞までのデータが閲覧できるようになった。
もしかしたら2025年の
病も気からと言われるし、引き寄せの法則なんてものもある。4枠だから勝てないなんて思っていたら、本当に負けるかもしれない。
あんまり
このことを考えると、やっぱり引き寄せの法則と言うのは信憑性があるかもしれない。
仮に4枠になったとしても、あんまり深くは考えないでおいた方が良さそうだわ。
そんなことを考えていると、あたしのタブレットに着信が入る。相手は解説担当の虎石だった。彼女からの着信と言うと、枠番の抽選が始まるってことなのでしょう。
応答すると、空中ディスプレイを表示させて
『今回
画面が切り替わり、枠番の表示がされるとランダムで決まっていく。あたしの枠番は7枠13番となった。
ふぅ、どうにか4枠を避けることができたわね。
「7枠か。10年間のデータだと、1着2回、2着2回、3着3回って言う成績なのよね。これはダイワスカーレットを軸にして、5枠の馬を馬連かワイドで勝った方が良いかしら? それとも1枠の馬?」
枠番の抽選結果を見たクロがポツリと言葉を漏らす。
彼女は本当に応援しているのかしら? どうせなら1着固定で馬券を決めて欲しかったわ。
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