第二十八話 オマケが本編?

大和鮮赤ダイワスカーレット視点〜






 ゲートが開いた瞬間、あたしは直ぐにダイワスカーレットに走る合図を送る。すると、彼女はすんなりと前に出て走ってくれた。


『ゲートが開きました。各馬一斉にスタートしました』


 霊馬競馬となっても、競馬とは前を走っている馬が有利、私はどの馬たちよりも前を走らせるために彼女を全力で走らせる。


先頭ハナはどうやらノアノハコブネが取ったみたいです。そして競り合うようにしてやや後方を走っているのがメジロラモーヌ、そしてその後をダイワスカーレット、この3頭が先頭集団です。


 先頭ハナを取られてしまったか。これは仕方がないわね。外枠である7枠からの発走となると、簡単には先頭を取ることができない。ここは駆け引きをしつつ、様子を見るしかないわ。


 スタートダッシュで先頭ハナを取れなかったので、ここは切り替えることにした。


 無理に先頭を取ろうとスピードを上げてしまっては、最後に彼女がバテてしまう。東京競馬場のゴール前は坂がある。あの坂を速度を落とさずに登るほどの体力は残させておかないと。


『先頭集団は前3頭のまま、1馬身ほど離されてアドラーブルとスマイルトゥモロー、そしてイソノルーブル、その後がシルクマドンナとエアグルーヴ、カワカミプリンセス、さらにシーザリオとローブデコルテ、半馬身程離れてトールポピー、ここでベガが速度を上げて前に来ました。現在エアグルーヴの隣を走っています。それから3馬身離されてミッキークイーン、コスモドリーム、ライトカラーの順番となっています』


 実況者が各馬の隊列を口にする中、あたしはこの後の展開をどうしようかと思考を巡らせる。


 さて、どうしましょうか。東京競馬場の直線は350メートル。長い直線である以上、ハイペースの展開となりやすい傾向にある。けれど1番人気はシーザリオ、彼女の脚質は中段の位置で待機して最後の直線で追い上げを見せる差しの脚質。みんなが彼女をマークしているからか、どちらかと言うとゆったりと走っているように思えるわ。


 こうなってくると、先頭集団が有利となる。


 一応は後方からの追い上げを気にしつつも、タイミングを見計らってあたしたちも先頭を取れるようにしていくべきよね。


 頭の中で作戦を考えつつ、様子を伺う。


 ダイワスカーレットは現役時代で東京競馬場を走ったのは1回だけ。2008年11月2日に行われた天皇賞・秋。その時は1番人気だったウオッカとハナ差で2着。


 初めての東京競馬場でしっかりと成績を出しているから問題はないと思うけれど、今回は歴代の樫の女王の称号を持つ歴代の優勝馬たちが相手となるわ。油断をしていたら、あっという間に追い抜かれてしまうかもしれない。


 そろそろ第1コーナーね。おそらく早い段階で勝負を仕掛けてくる馬がいるとすれば、第2コーナーを曲がって向う正面バックストレッチに入った辺りから、距離を詰めて来るはず。


 第1コーナーに差し掛かり、少しだけダイワスカーレットの速度を緩めてコーナーを曲がらせて行く。


 孤を描くようにして曲がり、短い直線を抜けると再び第2コーナーに入った。そして向う正面バックストレッチに入って行く。


 さて、早い段階で誰が動き出すのかしら? エアグルーヴ? ローブデコルテ? それとも1番人気のシーザリオかしら?







 オマケコーナー


 〜ハルウララ視点〜


「教えてなぞなぞ博士のコーナーだナゾ?」


『アシスタントはこの私! ハルウララだよ!』


「と言っても、ネタを考えていないナゾ? どうしていきなりこのコーナーをやろうと言い出したナゾ?」


『それはね! 最近私の出番が少なくないっているからだよ! だって最近、大気釈迦流エアシャカール袖無衣装ローブデコルテ大和鮮赤ダイワスカーレットばかりが活躍しているんだよ。この前、久しぶりに登場したと思ったら、セリフが一言しかなかったんだよ! このままでは私の影が薄くなってしまうもん! だから今回のストーリーの半分以上を強引に奪ってオマケコーナーにしてやったんだ! 久しぶりになぞなぞ博士も登場できて嬉しいでしょう!』


「まぁ、出たくないと言えば嘘になるナゾ?」


『と、言う訳でさっさと教えてナゾナゾ博士のコーナーを始めるよ!』


「だから、ネタがないと言っているナゾ?」


『それなら大丈夫! この私がネタを用意しているよ。今回は競走馬の交配について教えてよ』


「交配ナゾ? いきなりアダルトな話を振るナゾね」


『うん! だって私、交配したことがないんだよね。ディープインパクトやステイゴールドとのお見合い話も出ていたのだけど、お金がないから交配できなかったの。だからどんな感じなのか気になって』


「分かったナゾ? 私も知っている範囲でなら教えるナゾ?」


 やった! さて、さて、どんなディープな話しが聞けるのかな? ワクワク。


「先ほど、ハルウララはお金がなかったから交配ができなかったと言ったように、牝馬が牡馬と交配をするには種付け料と言われるお金を支払わないといけないナゾ? ハルウララの時はいくらだったナゾ?」


『ディープインパクトの時は900万って言われた』


「900万! まぁ、ディープインパクトの子種となると、それくらいはして当然ナゾね。まずは繁殖時期になると、馬主が交配相手の馬主と交渉して種付料と言われるお金を支払うことになるナゾ? 人間は男がお金を払うのに対して、競走馬の場合は牝馬が牡馬にお金を払うナゾね」


『お金の話はもう良いよ! その後のことが重要なんだから!』


「ハルウララの圧がすごいナゾ?」


 なぞなぞ博士が苦笑いを浮かべながら一度咳払いをした。


「ここからはうろ覚えで正確性には欠けてしまうナゾが、支払いが完了したら、まずは牝馬を発情させる必要があるナゾ? そのために仮の交配相手を用意するナゾ?」


『仮の交配相手?』


「そうナゾ? 仮の交配相手を用意して牝馬を性的興奮状態にさせて発情させた後に、本当の交配相手と対面させてスムーズに交配ができるようにさせるナゾ?」


『なるほど、真逆となってしまうけれど、人間で例えたらアダルト動画を見て興奮した旦那さんがそのまま奥さんと子作りを始める感じか』


 私の言葉になぞなぞ博士は苦笑いを浮かべる。


『それで、その後はどうなるの?』


「発情状態が認められた2頭の馬は、交配する場所へと行き、万が一のことに対処するために控えている飼育員の方たちに見られながら交配するナゾ?」


『まさかの公開プレイ!』


「ブッ!」


 私の言葉にナゾナゾ博士は吹き出してしまった。


「交配時間は30秒から1分30秒程で終わってしまうナゾ?」


『早い! 牡馬って早漏なの! いや、それとも牝馬のあそこが凄すぎるだけか』


「交配時には馬主席なんてのも用意される場合もあって、馬主によってはその様子を撮影する人もいるナゾ?」


『人間で例えるなら、アダルト動画を作成するためにAV女優と男優のエッチな動画を撮影している感じか』


「だから人間で例えてほしくないナゾ? ハルウララ、わざと言っていないかナゾ?」


『そんなことないよ。ただの感想だよ。でも、そうか。そんな感じで交配するのか』


「でも、生物である以上は子どもができない場合もあるナゾ? 受胎する確率は70パーセントと言われていて、もし受胎しなかったとしてもお金は返って来ないナゾ?」


『子どもができなかったら払い損! こんなところにもギャンブルが潜んでいたなんて!』


「しかも有能な遺伝子を引き継いだ馬も有能であると言う確証はない訳で、大金を払って誕生した馬が活躍をしないと言うケースも当然あるナゾ?」


『競馬に関わる以上、ギャンブル性は付き纏うって訳だね』


「これで満足してくれたかナゾ?」


『うん! たくさん喋れて満足したよ! 優駿牝馬オークスが終わったら、また出番が貰えるようにしないとね。それじゃ! 今日はここまで! 教えてナゾナゾ博士のコーナーでした!』


「ばいばいナゾ?」

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