第72話
混合ダンジョン星六つ、荒野の星見塔。
歩いて日帰りするにはちょっと遠いが、騎獣で向かう。ダンジョンガチャで、そういうゴーレムがあるらしく、クリフもパトスもアルベルトも持っているそうだ。
エイコは板状ガーゴイルで向かうことにする。
ラダバナの外で待ち合わせをして、駆けていく。エイコはクリフに並走し、聞いていなかったダンジョン情報を教えてもらう。
ダンジョン名に塔とついてるダンジョンは下り階段ではなく、上り階段を探して進む。荒野の星見塔は全五〇層で、五層ごとに転移魔法陣がある。
四〇層あたりから夕暮れのような暗さになり、徐々に暗くなっていって四五層は完全に夜状態になるそうだ。
その辺りから攻略難易度がとっても上がるらしい。夜部分がなければ難易度が下がるそうで、夜や夕方といった環境での戦闘訓練をしたい人にはいいそうだ。
当然、そんな戦闘訓練を好む人は少数派であり、不人気ダンジョンの一つになっている。
騎獣があれば日帰り可能で、人目を避けらるという理由でこのダンジョンが選ばれている。
パトスとアルベルトがダンジョンに同行するのは、アルベルトの実家からの要望だそうで、庇護下に置いた異世界人の能力を調べるためらしい。
ダンジョンを完全攻略する必要はないが、どの程度できるか知れる程度には奥に進まないといけない。
エイコが対処不能になったところで、ダンジョン攻略は終わりらしかった。あまりに早く限界がきたら、適正地点でメダル集めになる。
ダンジョンに到着すると、消費した魔力の回復を兼ねて朝食休憩をとった。
「ダンジョンの中もゴーレムで駆けるから」
「ん?」
「一〇層くらいまではヘーキ、ヘーキ。徘徊ボスとか対処できないのに遭遇したら、戦闘職に任せればいいから」
生産職は弱者だから、戦闘職に頼ればいいとクリフは微笑む。それをパトスは、嫌そうな顔で見ていた。
サンドイッチとスープで、軽めの食事を済ませると、ダンジョンへ向かう。この後、おやつが二回とお昼ご飯を食べる予定なので、一回あたりの食事は少なめになっていた。
クリフに進む方向を示してもらいながらダンジョンを進む。
ガーゴイル板で駆け抜けながら剣を振る技量は、エイコにはない。出てくる魔獣は全部火魔術で処理し、銅メダルを闇手で拾う。
そんなエイコのちょっと後ろをクリフが馬ぽい騎獣ゴーレムでついてきており、戦闘職の二人は魔力温存で自分の足で走っている。この身体能力の高さが、鍛えられた戦闘職の特徴の一つだ。
最短距離で一層を抜け、階段もそのままゴーレムで上っていく。二層に到着したところで、クリフが飴をくれた。鑑定すると、魔力の回復が速くなるとある。
効果はいいもののようだが、味は微妙。うっすらある甘味が苦味を強調していた。
「おやつには向かないんだよね」
必要があれば、効能的に妥協できる。そんな味だった。クリフも一つなめ始める。戦闘職の二人はそこまで魔力を使っていないので、いらないらしい。
飴を舐めている間に、六層へ続く階段を守るフロアボスの所へ到着した。薄くペラペラになった飴が口の中で割れる。飲み下して、熊ぽいモンスターに槍状にし火を打ち込む。
銀メダルを残して消えた。
七層まで移動しておやつ休憩をとる。
「戦い慣れているな」
「そこはフレイムブレイドのおかげだろうね。経験がないからだろうけど、育て方が戦闘職と同じだ」
アルベルトの疑問にクリフが答え、体力の回復を助けるお茶をパトスは静かにに飲んでいる。
おやつのお菓子は効能がない分、真っ当に美味しいクッキーを出してくれた。
お昼ごはんは、一五層のフロアボスを倒してからで、午後のおやつ休憩をは二三層でとる。
午後の休憩を終えて、三〇層を攻略した。そこで転移魔法陣を使い、ガチャボックス前広場に移動した。
「まだ行けるよな?」
「思いのほか優秀だ」
アルベルトとパトスは二〇層までで終わるつまりだったらしい。それでも、クリフに泊りの可能性を口にされていたため、予定の調整はしていたそうだ。
クリフはクリフで、一日で終わらないと判断し、お家のメンバーには泊まりだと告げて来ていたらしい。
話を聞いていないエイコは毎度のことながら、よくわかっていなかった。食事をクリフが作ってくれるなら、後の事はどうだっていい。
パトスは一度ダンジョンを出て魔導具の手紙を飛ばしに行く。戻ってくると、午後二回目のおやつにして、今日中に四〇層まで攻略してしまう事にした。
遅い夕食をとり、見張りは男たちが交代する。エイコも見張りの必要があるなら、ゴーレムにがんばってもらう予定。アオイもやってくれるそうなので、エイコは寝ることを選ぶ。
フレイムブレイドの人は夜の見張りの仕方も教えてくれたが、エイコは向いてない。むいていないせいか、やる気もなかった。
乗り込めるゴーレムの中でエイコは寝る。ゴーレムを倒さないと侵入されない。攻撃を受ければ、エイコも起きれるはず。
ゴーレムは自衛もできるから、こっそり何かされる心配はまずなかった。
「乗り込み型ゴーレムで寝れるのか?」
鑑定結果に、簡易移動住居ゴーレムと出てパトスが混乱している。クリフはそんな幼馴染を笑う。
「ガーゴイルが板になるくらいだ。細かい事は気にするだけムダ」
「ゴーレムってなんだ?」
アルベルトは黙って眉間に皺を作っていた。
夜ごはんを食べると、明日も早いのでエイコはさっさと眠りにつく。眠っている間にアオイがダンジョン攻略しているなんて、エイコは知らなかった。
アオイはフロアボス巡りをして銀メダルを集め、ガチャる。卵型の何かが出てきて、飲みこもうとするのをクリフが邪魔をする。
「鑑定!」
ずっと気になっていた物をパトスに鑑定さすことができ、クリフは首根っこをつかんでいたアオイを解放する。
「スキルの卵。従魔専用アイテム。何のスキルになるかは食べてみないとわからない」
鑑定結果を告げながら、パトスは再び混乱していた。
「従魔専用アイテム、聞いたことがあるが、従魔はガチャできるのか」
従魔専用アイテム。そういう物があると、話としては聞いたことがあったが、実物は見たことがない。そのくらい珍しい物だが、アオイが銀メダルでガチャると全部、従魔専用アイテムとなっていた。
『主がのん気だから、危険察知とか罠解除とか、嘘発見スキル欲しいの』
邪魔しないでね、とアオイは二周目に向かう。
「エイコをダンジョンで泊まらせると、夜な夜なダンジョン攻略するんだよな」
アオイが攻撃してくる心配はないと、クリフも寝る事にする。クリフの見張り順は最後だ。
見張りをしながら、朝食を作る予定にしている。
パトスの順番は二番目だった。上司から見張りを交代し、武器の手入れをしながら時間をつぶす。
人気のないダンジョンだけあって、この場に他の冒険者グループはいない。見張りの必要性に疑問を感じる状況ではあるが、ダンジョンにはいつだって入れた。
悪意を持った誰かに、上司が狙われる可能性は常にある。見張りをなしにするなんて事はできなかった。
王都にいた頃、ダンジョンまでアルベルトを襲いに来た痴女は、暗殺者以上に不気味な存在としてパトスの記憶に残っている。
何の問題もなく武器を手入れする時間がパトスは嫌いじゃない。このまま何もなくと、思っていたら魔法陣が光った。
「はあぁ?」
アオイはダンジョンボス攻略後に出る魔法陣を使って戻ってきている。魔法陣の位置的に間違いなければ、鑑定結果もそうなっていた。
『寝てる人がいるんだ。騒ぐなよ』
銀メダルをガチャして、アオイはまた従魔専用アイテムを飲み込む。それから、三〇層に向かう魔法陣を使用して、ダンジョン攻略に向う。
ゴーレムもおかしいが、従魔もおかしい。なら、その主はと思い、落ち人だから常識が違うのは仕方ないと、パトスは考えるのをやめた。
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