第9話

 魔術できれいににしてから錬金鍋を収納する。


「毒消し薬って、常備した方がいいもの?」

「ダンジョンによっては毒のあるモンスターも罠もある」


 毒の対処方法は水で洗い流すか、魔術の清潔で毒を落とす。後は自然回復を待つそうで、よっぽど酷いときは神殿に解毒を頼みに行くそうだ。

 ラダバナのような大きな都市なら解毒できる人が常駐しているが、規模の小さい神殿だと対処できないこもある。

 遠方に出かけるなら、常備しておきたい物だそうだ。


「毒消し薬も秘薬ギルドの作った物はポーションと似たような物だ」

「秘薬ギルドってなんなの?」


 ラミンの説明をギルド職員が引き継ぐ。


「あそこの専門は病気に対する薬なんです。ダンジョン由来の薬は苦手なんですが、苦手があるとは認めません」


 秘薬ギルドがなくなればなくなったで困るが、ポーションについては害悪になっている。そして、全ての毒を一種類の毒消し薬で対処するのも秘薬ギルドの得意とするところではない。

 毒ごとに研究し、解毒薬を作るのが秘薬ギルドのやり方であり、なぜかどの毒でも毒状態ではなくなる毒消し薬とは相性が悪かった。


「スキルとレシピがあれば、医学知識がまったくなくても作れて流通させてしまえるのは危険だと、啓蒙活動もしておりまして、素人判断で薬を服用する危険についてはもっともな部分もあります」


 しかし、ダンジョンの中に医学知識を持つ者なんているはずもなく、ダンジョン内ですぐに対処したい冒険者とは相性がよくない。

 ポーション関連では秘薬ギルドに文句の多い冒険者も、病気になれば秘薬ギルドのお世話になる。


「得意な物は得意な相手に任せられればいいのですが、ポーションは巨大市場ですから、収益が他の薬よりいいそうです。秘薬ギルドも儲けないと研究は続けられませんから、あちらのポーションは病薬に対する未来への投資だとでも思って下さい」


 トミオが大きなため息をつく。


「冒険者ギルド職員がよそのギルドを悪く言えないのはわかったが、ケガに対しては信頼性が欠けるギルドだな」

「化膿止めなら効きます」

「それ傷薬の下位互換だから。完全に別物ポーションよりはマシだけど」


 あきれたように告げたリラから、ギルド職員は目をそらした。


「契約書の作成は終わりましたので、冒険者ギルドどしてはエイコさんとお金の話をしたいのですが、連れて行ってよろしいですか?」


 名前を呼ばれたけど、なぜかわからなくてエイコは首を傾げる。


「昨日の買取の差額と、傷薬と毒消し薬の買取についてじゃない?」

「あっ、そんな話したね」


 よくわからない秘薬ギルドの話しされたから、もう難しい話はいらないと思ってしまった。


「薬を扱うのに必要そうな道具欲しいです」

「準備させていただきます」


 これでどこで売っているかわからない物が手に入る。


「そういや、冒険者ギルドに来た理由、あたっだろ? こっちの兄ちゃんたちと会ったのは偶然だからな」

「ダンジョンに行こうと思って」

「昨日絡まれたのが怖かったから。何かいい方法がないかと昨日の職員さんに相談に来たんですが、忙しそうだったので、人が減るのを待っていたんです」


 エイコの代わりにメイが話してくれることは、元の世界でもあった。メイに任せておけばいいと知っている。

 話が長くなりそうなので、ランプの改造案を考えながら、黙って話がまとまるとを待つ。


「……で、いいか? 嬢ちゃん」

「エイコ、聞いてる?」


 聞いていないと答えると怒られるのは、幼少期からの経験で知っている。にっこ、と微笑み首を傾げておく。


「今日はみんなで混合ダンジョンに行くことにしたから」

「わかった」


 フレイムブレイドのメンバーで参加するのは四人だけで、新人冒険者五人に生産職二人を含むため、難易度星四つの所にするそうだ。

 新人を連れて行くには難易度が高いそうだが、徒歩で日帰りのできる場所だから選ばれたらしい。


 なんか、冒険者ギルドとお金の話も済んでいるそうで、悪いようにされていないならいいことにした。


 冒険者ギルドを出て、ダンジョンには食べ物を多めに持って行くようにと言われ、二食分のご飯と飲みのを買って背負い鞄に入れる。

 腕輪の収納は人目のあるところでは使用禁止と言われたから、袖でちゃんと隠して使わない。


 九人で移動し、冒険者カードで出管手続きを取る。冒険者カードだと出入手続きでお金を取られなくなる。

 無料になっているのではなくて、依頼を受けたりダンジョン品を買取ってもらった時に割合でお金を取られているそうで、冒険者ギルドがまとめて払うようになっていた。


 出入で、結果として高く払っているか、安くなっているかは稼ぎによるらしい。


 出入にしか使わない人や、長期間ギルドて依頼を受けない、買取もないとなると、ギルドカードが失効するそうだ。失効してしまうと、再登録にはランクに合わせたお金が必要になるらしい。

 長期療養とか出産なんかの時は手続きを行えば失効までの期間が伸びるので、失効になるのはダンジョンで行方不明になった人が一番多い。


 先頭と最後尾にフレイムブレイドのメンバーがそれぞれ二人おり、間に新人戦闘職三人、生産職二人で列になる。

 ダンジョンの中も同じだ並びて進む予定なので、ダンジョンに着くまで練習がてら同じ並びで進んでいる。


「メイとエイコは武器で攻撃する事よりまずは身を守ることを考えて」


 戦闘中はちゃん付けで呼ぶ余裕はないとのことで、呼び方が変わった。

 フレイムブレイドは普段星六つのダンジョンを稼ぎ場にしているそうで、新人には難易度の高い星四つのダンジョンも難しい場所ではないそうだ。


 スケルトン市場と呼ばれるこのダンジョンは納品依頼が多く出ており、常に混み合っている。一層と二層は新人は脱したが一人前には届いていない冒険者でモンスターを取り合う状態になっているそうで、まず三層まで降りるらしい。


 市場の屋台やテントが障害物のようにならんでいるが、迷うほど複雑な構造はしていない。出てくるモンスターはダンジョン名にもなっていスケルトンのみ。

 三層くらいまでは木の盾に木の棒て武装しており、三層から錆びた剣やナイフで武装してくるのが混じるそうだ。


 徐々にモンスターが強くなるため、人型モンスターや対人戦を学ぶためにやってくる冒険者もいるらしい。


「剣が重い」

「身体歪みそう」


 元々入っていたポーチや腕輪の収納に入れておけば、重さは感じない。しかし、武装していつでも使えるように身につけておけと言われ、腰に下げた。

 戦闘職三人の剣より細いし短いが、金属の塊は重い。腰に重りつけて歩くなんて修行みたいだ。


「武器を下げているだけで、戦いなれしていない人には絡まれなくなるよ」


 木の杖、剣より軽くて使いやすかったと、しみじみと思う。丈夫な木でできた杖は星二個までにした方がいいらしい。星三個以上になると壊れたり、ただの木の杖なら切られるそうだ。


 メイと二人、重いとダンジョンに入る前から挫折しそうになる。汗をかいてきた頃、やっとダンジョンに到着した。


「生産職の二人は体力ないわね。仕方ないから休憩」


 水筒の水を飲み一息つく。朝ごはんは少なかったので、小腹すいており、背負い鞄から塩で焼いた串焼きを取り出す。

 ちょっと、温めたくて火魔術で加熱した。


「器用なことするな。魔術で戦うなら木の杖でもいいが」

「モンスターに向かって魔術を使った事はないよ。当たるもの?」

「当たる人は最初から当たる。ダメな人は練習がいるな」


 やってみないとわからないようだ。


「魔術だけに頼っていたら、接近された時に困るから、少しは剣が使えた方がいいわ」


 串焼きを食べ終わると手と串に清潔を使い、串は鞄に戻す。

 どうにか剣を軽くできないものかと考えていたら、付与魔術が使えそうな気がしてきた。


 留金を外し、両手で鞘ごと剣を横にして身体の前で持つ。

 軽くなれ、軽くなれ、軽くなれ、と思っていたら重力魔術が見えてきた。やれると思ったら、両手から魔力が流れ出し剣の鞘と柄に術式を刻み込み。

 術式が定着すると魔力が流れ出すのが止まり、両手にかかる剣の重さが半分もないほど軽くなっていた。


「嬢ちゃん、何やった?」

「ちょっと重さに耐えられなくて」


 エヘヘと笑っていたら、鑑定のできる男が眉間に手をやり考えこんでいた。


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