第10話

「ダンジョン前で考えていても仕方がない。入ろう」

「ラミン、今の付与? 付与だろ?」

「武器付与って、ポーション並みに交渉するべきだ。な、そうだろ?」

「男ども落ち着け。全てはダンジョン攻略を終えてからだ。大丈夫、相手はわかっていないから、逃げられる心配はない」


 なんかフレイムブレイドのメンバー同士でコソコソ話される。けれど、剣を軽くしたと言えばメイが自分のもやってくれと言うから、術式を刻み込んだ。

 少し歩きやすくなったとこで、ついにダンジョンに入る。


 洞窟状のダンジョンの入り口を入った先には青空があった。空は青いのに太陽はない。足元には複数の照明に照らされているかの様な薄い影が幾つもできていた。

 剥き出しの土の大地の広場に四つ魔法陣が光り、その更に奥にはダンジョンガチャボックスが三台置かれていた。


「ここのダンジョンは五層ごとに転移魔法陣があるの。一度攻略したら使えら様になるから、使える人がそばを通ったら光るの」

「四つ光っているから二〇層まで攻略済みってこと?」

「ここのダンジョン二四層までだから、二〇層以上攻略している人はみんな同じね」


 フレイムブレイドは完全攻略済みだそうだ。


 何もない広場から障害物となる物の多い市場にはいる。

 冒険者が多いと言われているだけあって、どこを歩いても常に冒険者の姿があった。モンスターはどれも誰がが戦っている最中で、まったく戦う事なく三層まで進む。


「今日は特に多いみたいね」


 一層や二層に比べたら冒険者が少なくなったが、まだモンスターの取り合い状態が解消されていない。四層に向かう事になった。


 どの層も同じような景色で、階層による一番の違いはスケルトンの装備が良くなっている事。どこに下へ向かう階段かあるかわかっていれば、さくさく進めるらしい。


 四層まで降りると、冒険者の数が減った。いるにはいるが、常に冒険者が視界に入るような事はなくなる。

 そうして、三体のスケルトンに遭遇した。ここにいるスケルトンはあんまり大きくない。エイコやメイより背が低く、小学校低学年くらいの児童の大きさしかなかった。


 一〇層を超えると徐々にスケルトンが大きくなるらしい。二〇層を超える頃には成人男性より大きいそうだ。


 三体のスケルトンはそれぞれ、剣、ナイフ、槍を持っている。フレイムブレイドの前衛にいた二人はスケルトンの腕六本をサクサクと切り捨てた。


「前衛職三人、一人一体がんばれ」

「安全確保ありがとうございます」

「ナイフはともかく、槍は対処できる気がしねぇ」

「ここまで手伝ってもらっているんださっさと終わらせるぞ」


 問題なく倒し、落ちたメダルは一枚だった。メダルはとりあえずトミオが代表で拾っていく。


 次に出たのもスケルトン三体ので、全部腕を切り落とす。


「はい、お二人さんどうぞ」

「試しに魔術使ってみたらどうだ? 当たるかどうかくらいは確認しておいた方がいい」

「はい、やります」


 メイが手を上げて主張する。メイが手を突き出すとなんか出た。一撃で三体のスケルトンは倒される。


「よかった。当たるタイプだわ」

「メイは風か。魔術媒体になる杖があると使いやすいなるぞ」


 エイコが持っている杖は杖の形をした木の棒なので、魔術媒体にはならないそうだ。でも指向性を示すくらいはできるので、ないよりはマシらしい。

 スケルトンが落としたメダルはメイが拾う。


 次に出たスケルトンは四体で盾持ちが増えていた。

 盾持ちの盾をごと蹴り飛ばすと、他のスケルトンの腕を切り捨てる。蹴り付けたスケルトンはそれだけで倒せたようで、消えた。

 力の差があると盾は無意味らしい。


 エイコは火の玉をスケルトンに向けて打ち出す。三体とも一撃で倒すと、銅メダルが落ちていた。


「全員、攻撃力は問題ないな。じゃ、階段の前まで二手に別れようか」

「前衛組はスケルトンの腕を残す本数徐々に増やしていくから、がんばれ」

「メイとエイコは腕なしスケルトンを魔術なしで倒そうか」


 もしかして、優しいのは最初の一回だけなの。

 エイコとメイは顔を見合わせた。


「せっかくの機会だがんばれよ。オレらじゃ戦い方なんて教える余裕はない。何より生産職専用ダンジョンは二人しかはいれないからな」

「魔術だけだと絶対、途中で魔力足りなくなるから。剣で倒せない相手だけとか、ボスモンスターだけとかきめておかないと魔力管理難しいわよ」


 カムカムボールダンジョンなら、頑張らなくても大丈夫。けれど、生産職専用ダンジョンで星一つなのはラダバナの近くには他にないらしい。

 難易度が上がると木の棒では対応できない可能性が高いそうだ。


 今後のことを考えたら大事なことではある。しかし、がんばろうと思い、剣の持ち方を習って剣道の面のように振ったらすっぽ抜けた。

 メイも同じことをやったので、一人じゃない安心感は得られたが、付き添いのラミンとリラは笑って助けてくれない。仕方なく、火の玉、火弾とか言うのでスケルトンは倒した。


「剣がダメだった時に魔術はいい判断よ」


 笑うだけ笑ってから褒められても喜べない。


「この辺りのスケルトンは蹴ってこない。腕がないと噛みつくくらいしか出来ることがないの。さあ、どんどん行きましょう」


 途中、スケルトンを切り付けると手が痛いとぼやくと、ラミンから斬撃が打撃を刃の部分に付与できないかあ提案を受けた。

 できそうだったので、斬撃を付与する。付与してから切り付けても手が痛くならなかったので、メイの剣にも付与した。


 腕なしスケルトンを安定して倒せる様になると、腕を一本残された。次は二本、その次は三本と増えていく。それでも武器を待っている方の手は全部切り落としてくれる。槍持ちはスケルトンは片手を落としても、もう一方の手で武器を持ってたため槍も破壊していた。


 その状態で対処できるようになると、次は武器を奪って両手があるのを一体だけ残す様になる。その次はナイフ持ち一体だけ残す。

 そこまでできる様になった頃、五層へ続く階段の前に着いた。


 エイコたちの方が到着は遅かったらしい。階段の前でお昼休憩になった。


 水筒の水は悪くはないが、他の物が飲みたい。緑茶でも紅茶てもコーヒーでもハーブティーでもいいから、嗜好品が欲しかった。

 果物ジュース売っているのは見たけど、ご飯と値段が同じくらいする。でも、水以外の物を飲みたいから、町に戻ったら買ってみよう。


「そっちはどんな感じ。こっちはもう三人で三体のなら補助はいらない」

「こっちは二人でナイフ持ち一体が安定したところ。一人だとまだ危ない」

「休憩が終わったら五層に連れて行くつもりだが、どうする?」

「いいんじゃない? 五層の転移魔法陣使った方が帰りは楽だしね」


 フレイムブレイドのメンバーだけで話し合いが行われ、五層行きが決まった。


「危なければ魔術使えばいいのよ。連れて帰れる人がいる間に魔力切れ体感しておくのもいい経験になるわ」


 雰囲気だけ優しいお姉さんムーブかますリラは、スパルタだ。昼ごはん前からちょっとあやしいとは思っていたけど、甘くないお姉さんだった。


 お昼ごはんはパンで惣菜を挟んでいる物で、サンドイッチやハンバーガーみたいに切ったパンではなくて、一つのパンを二つ折りにしている。包み紙から出してかぶりつくと、ちょっとすっぱくて甘いとろみのあるソースだった。

 これは初めての味だけど、また買ってもいいな。ごはんが美味しいと午後からもがんばれる気がする。


 食事が終わりかけた頃、モンスターがポップした。


「メイ、エイコ、魔術で狙える?」


 メイの方が反応が早くて、先に魔術を使った。三体とも消えてメダルを残す。


「あっちにも出たから、エイコやれ」


 視界に入っていないところで、もう一組モンスターがポップしていたようだ。指差された方に視界を向け、火弾を放つ。

 食べ終わったらメダルを拾って来なさいと言われた。


 

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