第143話
金メダルは銅貨百枚、銀メダルは銅貨五◯枚換算で、属性ナイフ一本三百枚から交渉を始める。素材持ち込みなら値引きはするが、お金での交渉はお断りした。
「お金が欲しいなら、ギルドのオークションに流してる」
「あー、生産職のレシピ狙いか」
レシピ千枚を要求するファイルを見せたら、笑い出しやがった。
「レベル高っ」
「ダンジョンが混み合ってなければ、難易度高くないよ?」
「レシピの分母が大きいのはスキルレベルが高くないと出ないって」
「戦闘職の武技と一緒。同じスキルならだいたい武技の出る順番同じだから」
「後で出た武技ほど要求が大きい」
戦闘職は持っているスキルの成長を、ダンジョンガチャで出る武技でわかるそうだ。
「戦闘職ズルい。生産職秘匿する人多くて判断つかないよ」
からかわれながら、三パーティが交渉に応じてくれたところで声をかけるのはやめた。
どうやら冒険者としてはBランクくらいの装備がお望みのようで、武器はいくつかあるから防具をそろえたいらしい。
メイの方が注文のメンイになりそうで、エイコは付与するだけでよさそうだった。
仕事の割合に関係なく、メダルは半分にわける。ただし、どちらかがレシピを集め終わったら、集まっていない方に全部渡す。
要求枚数はエイコの方が多いからたぶん先に集まるのはメイ。ただ、メイはここで特定の素材は集めた方がいいようにも思う。
彼らの手持ちのメダルに合わせて注文品を作り、交換する。空いてきた頃にメダルガチャをして、夜活動するべく休んだ。
起きたら要求枚数が少なくて集まったレシピの品を作る。でき上がったのは水中仕様のゴーレムや自動人形。これは、障害物の様に階層によってエリアの半分以上を占めている湖の中も探索しろってことかもしれない。
メイの方も完成しているレシピがあるから、ゴーレムと自動人形用に作ってもらう。
夕刻、コータがやってきた。
ラダバナで、ひなあられやおはぎを季節物として作ったそうで、それらをおやつにしながらお茶にする。
「奴隷、頼まれて購入したから数が増えた」
「トラブルになってないならいいけど、お金足りてる?」
「農産品売れたし、一部はダンジョンに連れて行って稼いでもらっているから」
「奴隷の冒険者だと稼げないんじゃなかった?」
「ギルドの依頼じゃなくてスキル上げとガチャメダルの物資狙いだから、問題ない」
奴隷だとギルドの依頼に制限があったか、ランク上げできないか、なんかデメリットがあったはず。カレンが奴隷の頃、説明を聞いたはずだが、その頃のエイコの記憶はすでに儚くなっていた。
引率で誰か奴隷でない人がいれば、どうとでもなる。コータ以外も協力してくれているらしい。
ラダバナに帰る前になにか良さそうなお土産を買っておこう。
「コータが帰る前にダンジョン攻略手伝ってくれない?」
「いいよ。でもさ、二人で攻略がキツイなら、家出したらダメだろ」
「食事の度にクリフ連れてこなかったのを後悔しているけど、マナミにクラ替えした男だから」
「あー、それはまあ、置いてきても仕方ない」
のんびりとおやつを楽しんでから、三人でダンジョンの攻略に向かう。
「とりあえず、魔導具の作動実験したいから安全確保よろしく。あと、水泳得意?」
「安全確保はいいが、水泳ってダンジョンで泳がすつもりか?」
「水着レシピ入手しました」
「水中ゴーレムも作ったの。あと、水上バイクみたいなのもあるから」
女の子は水に落ちると大変なのです。髪のセットや化粧が大惨事になる。
「着替え場所の安全は確保するから」
「着替えも用意するし、おまけでカレンの水着もプレゼントするよ」
「ラダバナで庭か畑にプール作ってもいいから、ね?」
「コータは白ビキニ派? 黒ビキニ派」
「えっ、その二択なの?」
「カレンの胸部ならビキニでしょ。渡しやすいようにラッシュガードつけてあげる」
ビキニの単語で顔を赤くしたコータが強固に拒否できるはずもなく、水中ゴーレム及びガーゴイルに護衛されながら水上バイクを走らせた。
暗くなってからはダンジョンの攻略だけを考えて進む。
「モンスターが対処できないじゃなくて、人が多すぎて攻略できてないのか」
「ゴーレムで物量押しすると人まで攻撃しそうで」
一応、人を攻撃しないように設定はしてあるが、モンスターと間違えて攻撃されたら反撃はしてしまう。攻撃されても反撃しない設定だと、悪意のある人にやってこられそうで、そんな設定にする気にはならない。
夜の早いうちにダンジョンを散歩して、全ての転移魔法陣を使える状態にした。
湖の中については明るくなってからにして、夜ご飯を食べて寝ることにする。コータ様には内部滞在できるゴーレムを出してテント変わりに使ってもらう。
トイレ風呂完備なので、泳ぐ前後の着替え場所にもなる。
「一人部屋はありがたいが、周囲の目が」
なんかぶつぶつ言っていたが、冒険者としては男女混合はありでもカレンが気にしそうなので、エイコとしてはナシだ。夜間見張りはゴーレムに任せればいいし、冒険者ルールに従う必要もない。
寝て起きて、夜間活動していた冒険者者から防具と交換でメダルをもらう。朝食を食べて、ガチャしていたら絡まれた。
「オレらにも防具作れよ」
「断ったのそっちでしょ。作るの間に合わなくなるから今の注文受けている分が終わって、ダンジョンにいたら応じるわ」
たぶん、それ、お断りだとおもいつつ、メイを見やる。口論だけだと反撃していいのか迷う。でも、五人で一人を取り囲むのは脅しとしてなりたっているし、やってしまっていいだろうか。
悩んでいる間に男の一人が手を振り上げ、メイに振り下ろされる前にコータが間に割り込んだ。
よし、反撃していいな。
エイコの影から魔導自動人形が飛び出し、薬剤を散布して影に撤収する。コータは腕で自分の口を塞ぎつつメイも連れて後ろに下がり、絡んでいた男どもはことごとくその場に倒れた。
「何しやがった!」
疑問系じゃなくて断定なの、ちょっと傷つく。
「えへ」
コータ以外は誤魔化せるか試してみたら、メイに冷たい目で見られていた。
「上手いこと指向性持たせて散布できたから、対象人物意外に被害ないよ」
結果論だけど。
「死ぬ様な薬でもないし」
致死量に達していなければだけども。
「
鑑定結果だとそういう麻痺薬だったが、エイコの鑑定スキルだと人間を鑑定しても麻痺状態としかわからない。麻痺の程度が不明なので、後遺症については断言できなかった。
「死んでいないならいいとしましょう。絡んできたあげく、暴力にうったえるような人だもの。生きているだけで感謝してもらいたいわ」
暴力に対抗して殺人がありなのがダンジョンにおける冒険者ルール。あっさり割り切るあたり、メイも異世界に適応してきたのだろう。
「手を出されたら反撃しておかないといけないのはオレも理解はしている。でもな、もう少し別の対応取れたんじゃないか?」
「だって、作ったら使ってみたいでしょ。街中じゃ使えないし、ダンジョンなら自衛のためならある程度何やってもいいもの」
精神を壊す系ならともかく、麻痺や睡眠系の薬なら上手く使えればその場だけで相手を無効化し、後遺症もない。上手く使うためには使用結果情報の蓄積がいるので、今すぐ街中で使えないのが残念なところだ。
「クリフさんたちがいないとこういう弊害もあるのか」
「あー、パトスがいれば詳しい鑑定結果わかったかもしれないのか」
あの人は人物特化じゃないから、奴隷商の鑑定持ちの方がいいかもしれない。
「コータがいなければ、生産職の女二人なんて襲えばいいって言っていた連中に慈悲はいらないわよ」
メイの冷ややかな発言に、コータの視線も冷たくなった。
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